金銭消費貸借の予約

金銭消費貸借の予約は、当事者間で金銭消費貸借の本契約を締結する義務を生じる無方式の諾成契約です。本契約を締結する義務は、当事者の一方が負う片務予約と、双方が負う双務予約とがあり、貸主となるべき者がこれを負うのが一般です。消費貸借を要物契約とした民法が予約を認めたのは、貸主となる者の賃す債務を設定する点に意義があるのであり、実際にも前記の点に予約をする主要な目的があるからです。
民法の定める要物契約としての消費貸借の他に、当事者の合意だけで成立する消費貸借を一種の無名契約として認めるのが多数説です。諾成的金銭消費貸借にあっては、貸そう、借りよう、という当事者の合意だけで金銭消費貸借の本契約が成立し、これによって借主は貸主に対し金銭交付請求権を取得し、貸主は借主に対し賃金返還請求権を取得します。これに対して、消費貸借の予約にあっては、金銭授受の際にあらためて本契約を締結しなければなりません。この点に両者の基本的な差異があります。本契約が利息付消費貸借であるときは、予約も有償契約となるために民法五五六条が準用され予約権利者は予約義務者の承諾を求めることなく、単に消費貸借完結の意思表示をするだけで合意があったこととなります。したがって、予約権利者が完結の意思表示をした後は、金銭交付請求権だけが借主の手に残ることとなり、諾成的消費貸借が成立した場合と異ならないことになります。

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金銭消費貸借の予約がいかなる熊様の貸付において行なわれるかは、当該取引の実態によります。通常の証書貸付の場合、金銭消費貸借契約証書の作成に先立って、金融機関が、借入申込者の借入申込に対し、申込条件どおりの貸付決定をして、借入申込者に通知をした場合は、その段階で金銭消費貸借の予約が成立したものと解されます。貸付金が数回にわたって交付される場合については、分割貸付、限度貸付、極度貸付の三能一様が存しますが、分割賃付の場合に、賃付額は確定しており、ただ借主の事業の性質上金銭が数次に分割して交付されるのであるために、当初分割貸付契約を締結したときに一個の諾成的消費貸借が成立したものとみるべきです。これに対して、限度貸付の場合は、総貸付額の限度を定め、その範囲内で借主の必要に応じ、貸付時期及び貸付額をその都度貸主借主間で協議のうえ貸付けるものであって、貸付額は確定しておらず、しかも通常貸主の都合により限度額の滅額、取引中止、契約解除をすることができる旨の特約がついていて、貸主の融資義務は薄弱であるので、限度貸付契約の成立をもって金銭消費貸借の予約が成立したとすることは困難です。極度貸付とは、金融機関と顧客との間であらかじめ極度額を定め、現在高が極度額を越えないかぎり、顧客の申出に応じて貸し付けるもので、当座貸越がその例ですが、この場合、金融機関は極度額の範囲内で融資義務を負うので、その契約、当座貸越契約は消費貸借の予約と解すべきです。
借主となるべき者が貸主となるべき者に対して有する権利を一括して譲渡することは、借主の信用を重視する消費貸借の性質上、特約のないかぎり許されないとするのが通説です。したがってこれらの権利を一括して差押、仮差押の対象とすることはできません。しかし、利息付消費貸借の予約において予約権利者が完結の意思表示をすればその時点で予約当事者間に本契約の合意があったことになるために、その後は、借主の手に残る金銭交付請求権を譲渡、差押の対象となることになります。
貸主となるべき者は、貸す債務を、借主となるべき者に対する債権で相殺することはできません。この債務は消費貸借契約をすることを内容とするために、両債務は目的を同じくしない事のみならず、消費貸借の予約は借主となるべき者に新たな信用を与えることを目的とするもので、旧債務との相殺を許しては予約の目的を達しないからです。
金銭消費貸借の予約の後に当事者の一方が破産したときは、予約は効力を失います。貸主となるべき者が破産すれば払えないこととなり、借主となるべき者が破産すれば信用契約である消費貸借の基礎が失われるからです。判例では、連帯債務者として借主となるべき数人のうちの一人が破産した場合も、予約は全員について失効するとするとしています。民法の規定を事情変更の原則の具体化とみれば、借主となるべき者の保証人が破産したときはもとより、借主となるべき者の財産状態が著しく悪化したときも、貸主となるべき者は予約を解除できることになります。

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