第三者への金銭の交付と消費貸借

金銭の消費貸借の成立のためには貸主から借入金銭が交付されたのでなければなりません。これが賃主から第三者に交付された場合には、消費貸借は成立しないことになるはずですが、この場合でも、第三者への交付が、借主への交付と経済上同一の利益を借主に与える場合には消費貸借の成立を認めることができます。第三者への交付が借主に対する交付と経済上同一の利益を与えるとは具体的にどういう場合をいうのかというと、借主への交付のかわりに第三者へ交付する場合は借主と第三者との間に何らかの法律関係のあることが前提となります。Bが第三者に債務を負っており、Bの依頼によってAが第三者との債務引受契約に基づいてBの債務を引き受けた場合がその一例です。Aは第三者へ金銭を交付することによってBの債務は消滅し、Aは弁済者の代位によってBに対して求償権を取得しますが、この求償権をもって消費貸借の目的とすることにした場合です。借主は現実には何らの交付を受けませんが、貸主が第三者に交付することによって借主との間の消費貸借が成立します。

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第三者による弁済として、BがCに債務を負っているので、BがAから借金してCCに返済しようとする場合に、BがAから借りた金銭を現実にCに交付するかわりに、直接AからCに交付する場合であっても、これによってBの債務が消滅し、経済上はBがCに交付したことと同一の利益をBに与えたことになるために、消費貸借が成立します。
建築主たるBが、建築資金をA銀行から借り、これを建築業者Cの当座預金口座に振り込んだ場合は、AB間の消費貸借は成立するとした判決例があります。事案は、建築主から請負金額の三分の一の頭金をとるか、あるいは建築主の不動産を担保に供させて請負金額の三分の一の金銭を調達し、さらに建築主に相互銀行と相互掛金契約を結ばせ、その給付金で請負代金の支払を受ける方法で月賦建築を行なっていた建築会社Cが、建築主が給付金を受けるまでの間の下請人に対する工事金の調達のため、一方においてA金庫からつなぎの資金を借り、この貸付限度を超えると、他方で、BにA金庫から借金させ、その金はAからCの口座に振り込ませることにしました。Aは融資の条件として担保として定期預金を要求するので、Bはこの分も借金することとし、230万円を借りました。その後Cが倒産したために、BはA金庫から借増をして建築を完成させましたが、A金庫からCの当座預金口座に振り込ませた部分について消費貸借の成否が問題となりました。Cからの勧誘の時の話では、契約時、上棟時、建設完成時にそれぞれ三分の一ずつ引き出すこととなっていましたが、C破産の時BがA金庫に訪ねたら、工事金の三分の一しか引き出されていないということでしたが、実は全部引き出されていました。そうして裁判所は、契約時、上棟時、建設完成時にそれぞれ三分の一ずつ引き出すとの約束を認定せず、A金庫からCに払戻ずみの工事金につきAB間に消費貸借の成立を認め、債務不存在に基づくAのBに対する抵当権の無効および公正証書の無効を求める控訴は棄却されました。
BのCに対する債務をAが弁済することをBば積極的に賛成ではなかった場合でも、AB間の消費貸借を認めた判決例があります。CがBに対して80万円の債権を持っているので、これの取立てのためにCが考えた手段で、CはA銀行からBへの融資の話をまとめ、Cの名で金額40万円の預金小切手を発行させ、これをC会社事務所でBに提示したがBが現金のほうがよいということで、CがA銀行支店に赴き、小切手の支払を受け、これをBの自分に対する債務の弁済にあてたのです。BがAを相手に消費貸借の無効を理由に担保として質権設定した実用新案権の譲渡請求を訴求したのに、裁判所は本件の事案はBとCとの間の紛争であるとの観点に立ち、AB間の消費貸借の成立につき、仮にBが小切手に手を触れていなくても、これを手に触れるばかりに提示され、かつC会社の社員がBのためにこれを現金化すべく持ち去ることを容認したものとみなくてはならないために、そのとき小切手はAからBの支配に入り、金40万円の授受があったと認めるべきである、とCへの金銭の交付がないとAB間の消費貸借は成立しません。AがCに交付すべき金銭を別途に使用した例として次ぎのような例があります。
不動産所有者Dは一番抵当権を設定してE銀行から4500万円借り、また二番抵当権を設定してA銀行からも借金しています。A銀行は一番抵当権者になることを意図し、Dの不動産を売却しその売得金をもってEの債権の弁済にあて、そうしてEの抵当権を消滅させることとし、Dの了解と委任を得ました。Aは不動産業者Cと協力して売却することにしました。そこで、この不動産に住んでいるBに売るのが得策と考え、D名義のままこの不動産をCに移しました。Bはこれを購入するためAから借金し、これをCに交付することをAに申し入れました。AはCに交付すべき3500万円とDに貸付けるべき1200万円の計4700万円をもってA名義の小切手を発行しこれをCに交付し、CによりE銀行で現金化し、これでDの債務の弁済にあてたまま、AはCに貸金を交付していないという事案です。
弁済が占有改定に媒介されている場合でも消費貸借の成立を肯定できます。つまりAがDに金を貸し、同額をDはBに金を貸し、BがCに対する債務の弁済として代理占有者AからCに金銭を交付させた場合です。判決では、借主たるDおよびBはそれぞれの賃主たるAまたはDより現金の交付を受けたると同一の経済上の利益を受けたるものにして、二個の消費貸借契約は有効に成立したものとしています。

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