転付命令の効力

転付命令を得た債権者は、被転付債権により満足を得られなかったときは、あらためて強制執行を申し立てることができるでしょうか。執行債権が被転付債権よりも大きいため、転付命令を得ても執行債権に残額がある場合、被転付債権の不成立、不存在や事後に第三債務者の抗弁権の対抗によって消滅した場合、また、転付命令がその要件が欠けているのに発された場合には、あらためて、それぞれの手続を経て強制執行の申立てができますが、第三債務者が無資力であって被転付債権の回収ができなかったとしても、執行債権は転付命令が効力を生じたことによって、弁済されたこととして消滅するため、もはやあらたな強制執行の申立てをすることはできません。

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転付命令が発せられ、第三債務者に送達されると転付命令の効力が発生します転付命今の効力発生時期については、民訴法六○○条二項が民訴法五九八条二項を準用し、同条三項を除外しているところから争いがあり、裁判であるため、民訴法五九八条二項の規定どおり第三債務者と債務者双方への送達を要し、そのいずれか遅い方の送達の時とするものと、転付命令は執行処分であり、差押命令と同様に解すればよく第三債務者への送達時であるとするものとがありますが、後者が正当です。
いずれにしても、転付命令が効力を生じると被転付債権は債権者に当然に移転します。債権者は債務者が有していた債権をあたかも債権譲渡をうけたと同様に、債権の同一性を保持しながら承継的に取得し、それによって、被転付債権の存在するかぎり、その券面額の範囲で執行債権が弁済されたものとみなされて消滅することとなります。また、債務名義はこれによって執行力を失います。この執行債権の消滅の効果は法律上の擬制として確定的に生じるものであるため、当事者間でこれに反する合意をしてもそれは無効になります。また、第三債務者が無資力であって、回収が困難または不能で執行債権額に達しないことがあっても、その危険は債権者が負担することとなり、執行債権弁済の効力を左右しないため同様であって、債権者は同一債務名義にもとづき、さらに債務者に対し強制執行の申立てをすることができません。
執行債権が被転付債権の券面額より多く、一部弁済として転付された時は、執行債権は被転付債権の券面額でのみ消滅するため、残額について、債務者の他の財産に対して強制執行の申立てをすることができることは当然です。被転付債権の全部または一部が当初から不成立、不存在である場合や、債務者に対して有している抗弁権を対抗されて消滅した場合、また、転付命令がその要件がないのに発されている場合には転付命令は無効であるため、被転付債権は債権者に移転せず、したがって、執行債権は消滅しません。
執行債権に残額がある場合、執行債権よりも被転付債権の券面額が大である場合には被転付債権を執行債権と同額にして転付命令を発するのが実務の取扱いであり、このような場合執行債権は全額消滅し、被差押債権に残額がある場合でも差押の効力は当然に消滅します。しかし、執行債権が被転付債権の券面額よりも大である場合には、被転付債権の券面額が執行債権の一部弁済として転付されたことになるため、執行債権は一部しか消滅せず、その残額については、同一債務名義にもとづいて、債務者に対して強制執行することができます。なお、執行債権の消滅については法定充当の規定にしたがって定めることになります。
被転付債権の全部または一部が不成立、不存在である場合、例えば転付命令が送達されるまでの間にすでに弁済されて消滅し、あるいは他に譲渡されていた場合には転付命令は効力を生じず実体上無効です。また、被転付債権は、債権譲渡と同様に債権の同一性を保持しながら債権者に移転するため、第三債務者が債務者に対して、取消権、解除権、相殺権等の抗弁権を有している場合や相続放棄した場合には、債権者は第三債務者からその抗弁権をもって対抗されることとなりますが、この抗弁の結果、事後に被転付債権が消滅した場合は、当初から被転付債権が不存在の場合と同様に転付命令は無効です。
被転付債権が不成立、不存在の場合、債権者は、訴え等の方法によるまでもなく、第三債務者の被転付債権不存在証明書を提出して、転付命令発付の旨を奥書してある債務名義について再度の執行文の付与の手続きを経たうえ強制執行の申立てができるとするのが実務の取扱いです。
もっとも、優先権の目的たる債権についても転付命令を発しうるとの見解に立てば被転付債権が消滅したときでも、優先権の行使によって執行債権は消滅しなかったこととはならないため債権者としては債務者に対し不当利得返還請求権を行使する以外になく、あらためて債務名義を得たうえで強制執行の申立てをすることとなります。
転付命令が、重要な執行開始の要件の欠陥や、執行障害があるのにこれを看過した場合、あるいは、転付命令の前提となる差押が無効である場合、被転付債権に券面額がないか金額が確定していない場合、被転付債権が性質上または法律上譲渡できない債権である場合、被転付債権が金銭債権でない場合、差押が競合し、または他の債権者から配当要求があった場合等転付命令を発するについての本質的要件の欠陥や、債務者その他の関係人の自由に放棄できない種類の利益を保障するための要件の欠陥があるのに誤って発された転付命令は無効です。
転付命令が第三債務者に差達されて効力が生じると、これにより債務者の第三債務者に対する債権は債権者に移転され執行手続は終了してしまうため、仮に転命令が実質的に無効でも、もはや執行方法の異議を申し立てることはできず、利害関係人は、執行手続外で訴えの他の方法により転付命令の無効を主張することとなります。
債権者としては、第三債務者を被告として、被転付債権の給付訴訟を提起し、すでに債務者が訴訟中である場合には当事者参加して訴訟を承継し、判決がある場合には承継執行文を得ることにより被転付債権の請求をなすこととなりますが、その際、第三債務者から転付命令の無効を主張され、第三債務者から債務不存在確認の訴えを提起され、あるいは、債権者が第三債務者から弁済をうけた場合には、債務者から不当利得の返還を求められる場合が多くなります。特殊な場合としては、差押競合があって転付命令の効力について疑問がある場合に第三債務者が債権額全額を供託して裁判所に供託の事情届を出す事例が考えられますが裁判所としては供託額全額について通常の配当手続を実施する扱いであるため、一部ないし全部無効な転付をうけたとする債権者は、配当期日に配当表について異議を述べたうえ配当異議訴訟を提起し転付命令の有効を主張することになります。そして、債権者が訴訟で敗訴した場合には、敗訴判決によってこれを証明したうえ、再度の執行文付与をうけ、あらためて債務者の他の財産に対して強制執行の申立てをすることとなります。なお、転付命令が無効な場合でも、差押が存続している場合には、 その差押を前提として、あらためて取立命令を求めることも可能です。

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