超過差押の許否

被差押債権額が請求債権額を上回る場合、債務者にはなんらかの救済手段があるがあるのでしょうか。この場合に債務者は、被差押債権額が請求債権額を上回ることだけを理由として不服申立をすることはできません。有体動産執行の場合には超過差押が禁止され、執行力ある正本による申立債権額および執行費用額の合算額をこえて差押をすることは許されません。しかし金銭債権に対する執行の場合において超過差押が許されるかどうかについては、やや問題があります。超過差押を禁じる民訴法五六四条の規定は、債権およびその他の財産権を含む動産に対する強制執行についての通則中におかれているのですが、その意味で金銭債権執行についても適用があり、執行債権額および執行費用額の合算額をこえて債権を差し押えることは許されないとする見解もありますが、通説は、債権差押の効力は、特に数額を一部に制限しないかぎり、その全額に及ぶと解しています。第三債務者の資力が十分でない場合には、被差押債権が券面額どおりの実価を有するとはかぎらず、また、被差押債権をめぐる債務者と第三債務者との関係は債権者側で朋確には把握できないのが通常であるため、被差押債権について反対債権による相相殺予定や、先給付、同時履行の抗弁が付着していること、あるいは質権が設定されていること等の事情がある可能性もあり、また、他からの仮差押、差押、滞納処分による差押がすでにされていたということも有り得ます。これらのことは、通常差押の効力発生後に第三債務者の陳述によってはじめて明らかとなりうることです。さらに債権差押に優先的効力を認めず平等主義をとる日本の執行法のたてまえ上、他の債権者からの二重差押や配当要求があれば、執行債権者は独占的に満足をうけることもできなくなる他位にあります。これらのことを考慮すれば、理論上は、債権執行において、厳密に超過差押を禁止する根拠はないと考えられます。

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実務上は被差押債権額を執行債権額および執行費用額の合算額にとどめて申請させる取扱いが多くなっています。したがって、目的債権の額が合算額をこえる場合には、その一部に制限して差押をすることとなります。金銭債権に対する執行の場合においては、差押命令と同時に、あるいはその後時間的間隔をおかずに取立命令ないし転付命令を得て満足を得る場合が多く、したがって他の債権者からの二重差押や配当要求によって配当手続を行なわなければならない事例が少ないこと、債権仮差押が先有している場合には、その際の第三債務者の陳述によって仮差押債権の支払いの確実性が明らかとなっていることが多いため、執行債権者としても、被差押債権額を請求債権額に制限しても別段不安は感じず、執行を必要にして十分な範囲内にとどめることにより、執行債務者側の利益も保護される結果となることなどが、この取扱いの根拠であると思われます。したがって、これとは逆に、被差押債権額を請求債権額の範囲内に制限したのでは、執行債権者が十分な満足を得られない危険が予想される場合、例えば第三債務者の資力が十分でないこと、その他の理由によって被差押債権全額の支払いが期待できない場合や、他の債権者からの仮差押、差押等が先行していて執行債権者が独占的に弁済をうけることがでぎないことが予想される場合等には、事情は異なります。このような事情が認められる場合には、請求債権額を上回る差押を認める取扱いもあるとのことです。また、手形債権その他のように、執行の関係上一体として差し押えることを要する債権については、差押の範囲をその一部に制限することができないのは当然です、俸給その他これに類する継続的収入の債権の差押については請求債権額を限度としますが、継続的収入であるから請求債権額を限度としても別段執行儀権者に不利益は生じません。
以上に述べたところからすれば、被差押債権額が請求債権額を上回るからといって、当然に不服の申立てをすることはできないこととなります。債務者側のとりうる救済手段としては、差押額を請求債権額に制限し、超過部分の債務者による取立てを許可すべき旨の中請をする方法があり、かつ、これでたりることになります。この場合配当要求があるときはその債権額も含むものとされ、制限された部分については他の債権者は配当要求ができなくなるため、執行債権者の利益が害されることもありません。差押命令だけが発せられ、まだ取立命令が発せられていない段階でこの申立てができるか否かについては、法文上は明らかではありません。しかし、債権者の利益を保護しつつ、債務者を必要以上の高速から免れさせようとする規定の趣旨からいって、この場合にも申立てを認めるべきであり、こう解すれば、債務者の救済に欠けるところはなくなります。

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