仮差押金銭の供託

AはCに対する有体動産仮差押の執行を申し立て、これにもとづいて執行官がCの金銭を差押て供託しています。BはCに対する債務名義にもとづき、供託中の金銭について強制執行をしたのですが、どのような方法によるべきなのでしょうか。この場合、Bは執行官に対し有体動産に対する強制執行の申立てをすればよいこととなります。
執行官は、仮差押の執行として金銭を差押たときは、これを供託しなければなりません。本来、仮差押は将来の金銭債権執行を保全するためになされるのであって、差押により債務者の処分権能を奪っておけば十分であるため、それ以上に換価、満足の手続に進むことはできないわけであり有体動産の仮差押の執行については、執行官は差押の状態をそのまま維持しておくことになります。有体動産の差押は、執行官が目的物件を占有して行なうのであり、ことに金銭の差押の場合は、執行官がこれを債務者から取り上げて直接手許に占有する方法をとるべきものであるため、先の仮差押の原則からいえば、執行官は差し押えた金銭をそのまま手許に保管しておくということになります。ただ、金銭の特殊性からいって、これを長い期間執行官の手許に保管させておくことは不測の事故をまねくおそれがないわけではなく、他方金銭の保管を確実にするのに既存の制度である供託の制度を利用することが容易でもあることから、執行官は供託の制度を利用すぺきものと定められたのです。

スポンサーリンク

お金を借りる!

仮差押金銭の供託は、差押物件の保管の一態様として選ばれたものと理解でき、一般に執行官が差押物を債務者から取り上げた場合、その責任において確実にこれを保管しなければならない職責を有することは当然のことであり、例えば専門の保管業者である倉庫業者に保管させることが保管をより確実にする方法であるような場合は倉庫業者と契約して差押物を保管させることももとより可能であり、要は保管を確実にする方法を選ぶべきであるというに尺きますが、仮差押金銭については供託という方法を選ぶべきことが法定されたと解されるのです。
供託の制度は、一般には様々な実体法的効果と結びついて構成されます。例えば弁済供託は債務の消滅という効果と結びつき、保証供託は被供託者に担保権を取得させる等です。しかし、仮差押金銭の供託については、さきにみたとおり、たまたま考えられる方法のなかから執行官の保管の一熊様として供託制度を利用することとされたにすぎないため、執行官と供託機関との間に供託手続法上の法律関係を生じることはともかく、それ以上に進んで債務者あるいは債権者と供託機関との間に、あるいはまた債権者と債務者間に供託によりなんらかの実体上の法律関係を生じるというような構成を考える必然性はもともとありません。あたかも、執行官が倉庫業者に差押物を保管させている場合と同様に考えて、執行官がみずから保管しているのと同様に評価しておけば十分と考えられます。
民訴法七五〇条四項前段の供託の趣旨、性質をこのように解するなら、Bのとるべき方法はおのずと明らかです。供託は執行官の金銭保管の態様であるにすぎないと考える以上、強制執行の方法は執行官が仮差押の執行として手許に有体動産を保管しているのと動揺に考えて、Bとしては執行官に対し有体動産に対する金銭債権の強制執行を申し立てればよく、執行官は、Bの申立てが要件を満たすと認めるときは、供託金を取り戻したうえで差押の手続をしAの仮差押の執行はBの強制執行につき配当要求の効力を有するため、これを前提として満足の手続を進めることとなります。このような見解が実務上の通説でもあります。
供託法上では執行官が供託者、したがって取戻請求権者となり、この供託には被供託者つまり供託金の還付請求権者にあたる者のない特殊な供託であるため、執行官はいつでも供託金の取戻しを請求できると解されます。
以上の見解と異なる考え方として、古くは債権執行説が有力でした。債権執行説は、いかなる債権を執行の対象とするというのか必ずしも明らかではありませんが、およそBのCに対する債務名義で強制執行を申し立てる以上、Cすなわち仮差押債務者が被執行債権の債権者でなければならないこと当然です。しかし、仮差押債務者が供託金につき還付請求権を有するとするのはもとより矛盾であり、仮差押の効力の継続中であることを前提とするかぎり、取戻請求権を認めることもまた矛盾で、説明に窮することは明らかです。さらに、そもそも仮差押金銭の供託により、仮差押債務者の金銭が供託金に対するなんらかの債権に転化するというのであるならば、そもそもAの有体動産執行としての仮差押自体が供託を契機として債権執行に変質して本執行に進まなければならないことになってしまいますが、その不合理であることも多言を要しないでしょう。債権執行説は、供託が執行官の保管の一態様として行なわれる方法にすぎないことを看過し、供託の技術的な法的構造にとらわれたものというほかなく、賛成できません。

お金を借りる!

連帯債務と差押/ 有体動産に対する差押/ 差押物件の入れ替え/ 差押物件の第三者の占有/ 証券に対する差押手続/ 仮差押金銭の供託/ 強制執行での優先と平等/ 工場抵当と差押/ 譲渡担保の権利/ 強制執行での優先権/ 有体動産の競売/ 占有を伴わない担保権の実行/ 借地権に対する強制執行/ 工事完成前の請負代金債権の差押/ 退職金の差押/ 預金債権差押の特定方法の指定/ 差押の許される範囲/ 超過差押の許否/ 転付命令の効力/ 確定判決に基づく弁済/