仮登記担保権設定者の破産

破産又は会社更生手続が開始された際に、破産者や更生会社がその所有に属しない財産を占有する場合、財産は破産財団や会社財産に属しないものとしてこれを取戻すことができることは当然のことです。この権利は取戻権と呼ばれます。仮登記担保の設定は、代物弁済や売買の予約又はその停止条件付契約の規定を借用してなされるため、担保的構成を重視しない従来の解釈によれば、破産、会社更生手続開始前に債務者が履行を怠って停止条件が成就し、または予約完結権が行使されていると、それによって本契約が成立し、目的物件の所有権は仮登記権利者である債権者に帰属するものとされたために、債権者が本登記を済ませていればもちろん、本登記の要件を備えていれば、手続開始後でも管財人に対し本登記を請求して取戻をすることができたのです。ところが、一連の最高裁判決に続く昭和四九年一○月二三日の大法廷判決によって、債権担保のために締結された前記の契約上の権利は一種の担保権であって、担保権者である仮登記権利者は、その権利の実行に際し、担保設定者である債務者その他目的物件の所有者との間で清算金の支払義務を負担すること、清算金の支払をするまでは仮登記担保関係は消滅せず、したがって仮登記権利者は予約完結権を行使し、または停止条件が成就したというだけでは確定的に物件の所有権を取得するものではないことを明らかにした大法廷判決が説くような担保権であるとすると、このような場合にも従来の解釈論を維持することはできません。

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仮登記担保権者は、更生手続が開始されると、開始決定の時点までに更生会社との間で債務を清算して確定的に所有権を取得していないかぎり、被担保債権額のうち目的物件の値額の限度で更生担保権者の地位を取得し、従って取戻権を有しないというのが、大方の見解です。このような解釈は、同じく所有権移転形式の判例法上の担保権である譲渡担保について、最高裁昭和四一年四月二八日第一小法廷判決がとった見解によっても、実務上は、裏付けられます。この判決は、機械器具を譲渡担保にとったところ、設定者について更生手続が開始した事案について、譲渡担保権者に対する所有権の移転は確定的なものではなく、更生会社との間に債権債務関係が存続していたことになるために、このような場合には、譲渡担保権者は、更生担保権者に準じてその権利の届出をし、更生手続によってのみ権利行使をなすべきもので、目的物件に対する所有権を主張して、その引渡を求めることは許されないと述べて、取戻権を否定したのです。この法律関係は、仮登記担保権にもそのままあてはまるというぺきです。したがって、仮登記担保権者は、更生手続が開始された後は、その有する仮登記に基づく本登記をすることにより担保権の実行をすることは許されません。また、更生手続開始時に本登記承諾請求訴訟が係属しているときは訴訟手続の中断を生じることになり、さらに、その時点ですでに本登記を経由していても、清算がなされていないかぎり所有権は確定的に移転していないために、なお更生担保権者としての処遇を受けることになります。清算をしていれば、本登記を経由していなくても取戻権が認められ、仮登記担保権者は更生管財人に対し、本登記の請求をすることができると解すべきです。なお、仮登記担保で、更生手続開始時に予約完結の意思表示がなされなかったもの、停止案件が成就しないものも、仮登記担保の設定時から担保権として成立しているから、その後は、会社更生法一二三条の類推適用により更生担保権となるものと解されます。仮登記担保権者も届出により手続に参加しますが、届出をせず、更生計画に記載されないと、更生計画認可決定の発効により担保権が消滅するために、注意を要します。
破産手続が開始した場合にも、仮登記担保権者は清算未了であるかぎり、取戻権を有せず、別除権者となるにとどまると解されます。
別除権者は、更生担保権者と異なり、破産手続きによらないで権利を行使できるために、従来とそれ程大きな差異はありません。仮登記担保権者は、破産管財人を被告として、または受継させて本登記請求訴訟を追行することができます。仮登記担保権者が清算金を交付しないまま本登記手続を経由しているときは、破産管財人はその支払を求めることができます。また、仮登記担保権者が担保権の実行をしない場合は、破産管財人は、目的不動産の提示を求めてこれを評価し、被担保債権を弁済して受戻すことができ、裁判所に対し実行をなすべき期間を定めてもらい、期間内に実行しなければ、破産管財人がみずから民事訴訟法による競売申立をして目的物を換価し、清算をすることができます。

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