譲渡担保と受戻権

債権担保の目的で権利移転の形式をとる契約の中にも、債務を存続させながら担保のために権利を譲渡する形式と、売買の形式をとって債務を残存させない形式とがあり、前者を譲渡担保、後者を売渡担保と称するというのが、大審院の判例での最終的に示した区別です。そして区別された意味での譲渡担保においては、債務の弁済期を経過しても、担保権の実行等により債権が満足されるまでは、債務は消滅せず、したがって、その間は、債務者は、債務を弁済して担保権を消滅させ、目的物を取り戻すことができるはずですが、以前の判例では、原則としてはこれを肯定するものの、異なる特約を妨げないとし、必ずしも越旨が明確とはいえませんでした。

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仮登記担保について一連の判例が、仮登記担保権者に清算義務があることと、清算までは債務者に取戻権があることを認めるにいたったのに対応して、譲渡担保についても、判例は、同一債権の担保のため、甲不動産につき代物弁済予約形式の仮登記担保、乙不動産につき譲渡担保がそれぞれ設定された事案において、債権者は清算義務を負い、債務者は、債権者が甲不動産につき予約完結権を行使し所有権移転登記を経由した後であっても、換価処分をするまでは、債務を弁済して甲乙両不動産を取り戻すことができると判示し、同昭四七・一一・二四金融法務六七三号二四頁も、流質的特約のない譲渡担保において、弁済期経過後も担保権実行前には、債務者は元利合計金を弁済して担保の目的たる不動産の所有権を回復することができるとするなど、取戻権の存在が明確に肯定されるに至りました。また、その間、最判昭四六・三・二五民集二五巻二号二○八頁は、流担保特約、すなわち、弁済期に債務の弁済のないときは弁済に代えて確定的に目的不動産を債権者の所有に帰せしめる旨の合意のある譲渡担保についても、債権者に清算義務があることを認めましたが、債権者の清算義務と債務者の取戻権とは、いずれも譲渡担保の効果を担保目的に必要な範囲に限定しようとすることから生じるもので、相互に表裏をなし、清算義務のある場合には、清算までは取戻権が認められなければならないはずであり、判例では、このような特約のある場合にも取戻権を認める趣旨に解されます。現在においては、弁済期経過後も清算実行までは債務者が債務を弁済して目的物を取り戻す権利を有することは、疑問のないところであり、これと異なる特約は、担保としての性質に反し、債務者に著しく不利なものとして、無効とされるべきです。
前記の区別による売渡担保においては、再売買の予約または買戻の特約を付して目的物を売買する形式をとり、債務を存続させないので、約定の期間内に予約完結権や買戻権を行使することを要し、期間経過径は債務者が目的物を取り戻す機会は失われることになりそうです。以前の判例には、債権担保のための買戻約款付売買においても、売主は、買戻期間の経過とともに当然に買戻権を喪失するとはいえないとするものもありましたが、特約のない以上買戻期間の経過により所有権を回復する機会を失うとするものもりました。しかし、法形式はこのとおりであっても、債権担保の目的で形式を借りているにすぎないものである以上、その効果も担保の目的に必要な範囲に限定して解択することは可能であり、また、仮登記担保や狭義の譲渡担保との均衡からいっても、これらと同一に解して、債権者による形式の選択を無意味にさせることが望ましく、したがって、債権担保の目的でなされた再売買の予約または買戻特約付の売買においては、民法の買戻に関する規定の適用がなく、狭義の譲渡担保と同様に、買主は清算義務を負い、売主は、約定の期間を経過した後でも、清算前には、予約完結権ないし買戻権の行使をして目的物を取り戻すことができるものと解すべきです。
債務者が以上のような取戻権を行使しうる終期は、仮登記担保に関する前掲最判昭四九・一○・二三に従い、譲渡担保権者による換価処分の時、つまり帰属清算の場合には目的不動産の評価清算により適正評価額に基づく清算金を支払ってその所有権を自己に帰属させる時、処分清算の場合には処分の時と解されます。
債務者が取戻権行使にあたり支払うべき金額は、債務の元金、利息、損害金ならびに契約費用であり、売渡担保形式の契約において、再売買または買戻の代金額が債務の全額を超えて定められていても、その約定は無効と解すべきです。もっとも、債権者が換価処分のためすでに支出した費用があるときは、相当額の範囲内でこれを債還すぺきです。

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