譲渡担保と目的物の処分

譲渡担保は、所有権移転の契約形式による債権担保契約ですが、実質的には設定者が目的物件の所有権を有するものと解されます。しかし、譲渡担保関係の存続中は設定者は担保的拘束を受けているために、担保権者の担保権を害するような処分行為をすることは、一般的には契約違反になります。譲渡担保権者も対抗要件を具備していれば、担保的追及力が認められるとはいえ、動産についての譲渡担保では第三者に即時取得が成立する可能性があるので、譲渡担保契約を締結するにあたっては、設定者に対し、目的物件を第三者に譲渡し、または担保に供しない旨を約させるのが通例です。特約がない場合でも、目的物件の直接占有を第三者に移転する結果となるような設定者の処分行為は、担保物毀滅に準じるものとして、民法一三七条二号の準用による儀務の期限の利益喪失事由にあたるとの見解もあります。

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昭和四二年以降の仮登記担保に関する最高裁判例がでる前には、判例通説では譲渡担保権者が目的物件について所有権を有することを前提としていたので、即時取得の場合以外には第三者が設定者から有効に所有権を取得し、または担保権を取得することはできないと解されていましたが、この判例以降は、譲渡担保についても担保権的構成を一貫させることになったので、譲渡担保の存在を知って譲り受け、または担保を取得した第三者に対する関係では、譲渡担保権の付着した物件の譲受または後順位担保の取得とみることが可能です。ただ、第三取得者の場合には、譲渡担保権によって把握された担保価値を除いた留保価値の取得ではありますが、設定者の地位の承継人としての立場に対比できるので、清算金請求権も取得しますが、後順位担保権者は、譲渡担保権者と直接の清算上の権利義務の開係に立つものではないということになります。
機械器具等動産についての譲渡担保では、債権者は占有改定によってその対抗要件を具備し、かつ通常は譲渡担保設定契約書に確定日付を得ているために、第三者に対し譲渡担保権を対抗することができます。一方で第三者が、設定者が占有する動産をかかる担保権が付着していることにつき善意無過失で買い受けて引渡を得、即時取得する場合も少なくありません。このときには、第三者は譲渡担保権の負担のない所有権を取得することになります。即時取得の要件としての引渡は、占有改定を含まないとするのが判例であるために、占有改定による引渡を受けた場合は、即時取得できません。そこで、譲渡担保権者が、善意の第三者の現われることを防ぐために明認方法、例えば譲渡担保権者名を表示したラペルを貼付するとか、木札を取り付けるなどの方法を講じる例もあるようですが、一般にはかかる明認方法は設定者の信用にかかわることとして設定者に嫌われることや、設定者が第三者に売却する前に、ラペル等を剥がしてしまえば、その効果が期待できないなどの理由で、適当な方法ともいいにくい実情にあります。
商品の集合物の譲渡担保の場合には、譲渡担保権者は、むしろ設定者が善意の第三者に売却することを当然に予想し、新たな商品で補充されることを予定していることが多いと思われます。この場合担保権者はその代金請求権に物上代位するであろうし、あらかじめ、かかる代金請求権の債権譲渡を受けておくことなどが考えられますが、実際上回収手続は面倒になります。第三取得者が即時取得を主張できないときは、設定者に代位して被担保債権を弁済することにより、完全な所有権を得ることができます。第三者が譲渡担保権を取得したときは二番譲渡担保権者となり、質権を取得したときも譲渡担保権に遅れる質権ということになりますが、現実にはほとんど行なわれていないと思われます。
不動産の譲渡担保の場合に公示手段として所有権移転の本登記がなされているときは、第三者が設定者から当該不動産を譲り受け、またはこれに担保権を設定してもその対抗要件を具備することができないために、第三者との関係を検討する必要は余りありません。このような第三取得者も代位弁済することによって完全な所有権を取得することはできると解されます。譲渡担保権者が、公示手段として所有権移転の仮登記を得ているときは、仮登記担保契約に関する法律の類推適用が考慮されてよい場合があります。譲渡担保権者が何らの登記も有していないときは、引渡を対抗要件とすることはできず、第三者に対して譲渡担保権を有することを対抗できないと解されます。

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