譲渡担保の目的物と公租公課

譲渡担保は、所有権移転の契約形式による債権担保契約ですが、その実質は担保権の設定であるために、目的物件の所有権は設定者のもとにあると考えるのが論理的です。そして、公祖公課については実質課税の原則がとられているために、本来は設定者が公租公課を負担すべきものといえます。しかし公租公課については、真の所有者を探求することは大量の事務処理という点から考えても困難であり、ことに譲渡担保についてはその所有権の所在をつきとめることは容易てないので、形式的な画一的処理をもって満足するほかはない場合があります。したがって税務処理上の負担者の問題と、譲渡担保権者と設定者との間ではいずれがその費用を負担すべきかという問題とを分けて考えるべき場合もあると思われます。

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所得税基本通達三三・二、法人税基本通達二・二・一では、譲渡担保にかかる資産の収益帰属の特例として、債務者が債務の弁済の担保としてその有する資産を譲渡した場合において、その契約書に、当該担保にかかる資産を当該債務者が従来どおり使用収益すること、通常支払うと認められる当該債務にかかる利子またはこれに相当する使用料を支払うことが定められ、自己の資産として経理しているときは、その譲渡はなかったものとして取り扱う旨が定められています。そして、形式上買戻条件付譲渡、または再売買の予約がなされているものであっても、同様だとしています。したがって、このような要件を備えた場合には、設定者の資産として処理されることになります。
地方税法三四三条一項は、固定資産税は固定資産の所有者に課するとしたうえ、同条二項はこの所有者とは土地または家屋について登記簿等に所有者として登記されている者をいうとされているために、譲渡担保権者が所有権移転登記を得ていれば、その登記原因が譲渡担保となっていても、譲渡担保権者に課せられることになります。そして都市計画税も同法七○二条二項によって同様に扱われます。これは課税処理上の問題であって、護渡担保権者と設定者との間では、かかる費用は設定者負担とみるべきものであるために、設定者の行なう受戻または担保権者の行なう担保権の実行に際しては、譲渡担保に伴う管理費用として清算されるべきです。
譲渡担保が設定された場合、担保権者が当該不動産の所有権を取得したものとして同人に不動産取得税を課すぺきか否かについて、かつて地方税法に規定がなかったため解釈上争われていました。最判昭四八・一一・一六民集二七巻一三三三頁では、地方税法七三条の二第一項にいう不動産の取得とは、不動産の取得者が実質的に完全な内容の所有権を取得するか否かには関係なく、所有権移転の形式による不動産の取得すべての場合を含むと解し、譲渡担保による不動産の取得について不動産取得税を課しうることを肯定しました。
機械器具等の動産についても、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者は、地法税法三四三条三項によって所有者とされているために、譲渡担保権者がこの登録を得ているときは同人に課せられることになります。しかし、動産の譲渡担保の場合に行なわれる対抗要件は占有改定であるために、不動産の場合と異なりこの登録は行なわれないのが普通であり、形式的、画一的取扱のためとはいえ、不動産の場合とは同一視できない相違点があります。この場合には実質課税の原則からいっても、管理費用負担者という点からも、設定者に課税されるぺきであるとの見解があります。

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