譲渡担保の目的物と火災保険

譲渡担保は所有権移転の契約形式による債権担保契約ですが、外部的には所有権が債権者に移転するというのが、かつての判例通説であったために、かかる立場では、債権者が自らを被保険者として目的物件につき火災保険契約を締結することができるのは当然ということになります。そして、設定者は所有権を有しないとされていたために、設定者は保険契約の当事者とはなりえないとする下級審判例もありました。しかし、学説上は、設定者は所有権を移転した以上、被保検利益を有しないために仮に契約しても無効であるとの説と、設定者にもなんらかの物権的利益があることを理由に有効とする説とが対立していました。

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最判昭四二・一一・一六民集二一巻二四三〇貢以来の一連の仮登記担保に関する判例理論のもとで、ことに最判昭五○・七・一七民集二九巻一○八○貢の考え方を譲渡担保の場合に推し及ぼせば、譲渡担保契約の締結のみによっては、今だ目的物の所有権は債権者に移転していないと解すぺきこととなるので、保検契約の当事者はむしろ設定者ということになります。しかし、譲渡拒保権者も自ら被保険者となって保険契約を締結する経済上の利益を否定しえないので、譲渡担保権者を当事者とする保険契約も有効と解してよいと思われます。
譲渡担保契約の締結にあたり、債務者に対し債務者が債権者を被保検者とする火災保険契約を締結することを義務づけている場合があります。このような場合をも含め譲渡担保権者を当事者とする保検契約も前記のような保険実務を前提とすれば、有効と解するのが妥当です。この場合には、発生した保除金請求権は、保険会社との関係では担保権者に帰属することになりますが、設定者との関係では、特約のある場合はともかく、当然には被担保債権に充当することが認められるわけではありません。設定者は、被担保債権と、担保権者が保険料を支払っていた場合にはその費用とを弁済することによって保険金請求権を取得することができ、現実に保険金が担保権者に支払われたときは弁済すべき額との差額を請求することができると解されます。弁済期後は、譲渡担保権者は、被担保債権および諸費用に充当することができますが、差額があれば、非清算の合意の効力が認められる特段の事情のある場合を除き、清算すべきです。
設定者の有するこのような権利は、物上代位の極旨によるものではないために、事前差押の必要のないこと勿論です。
設定者が保検契約を締結した場合には、保険金請求権につき譲渡担保権者が質権を設定している場合が多いようですが、そうでない場合に、物上代位の類推が認められるか否かの問題があります。保険金請求権が目的物の滅失、毀損によって当然に生じるものではなく、別個の有償契約としての保検契約に基づいて生じるものであって担保物の代位物ではないとの見解下級審裁判例もありますが、大審院は早くから担保権の物上代位効が担保物の損害保険金に及ぶことを肯定し、学説も肯定説が通説です。保検金は滅失あるいは毀損した担保物にかわる経済的機能を営むものであるために、これについても担保権の優先権が当然に及ぶとみるべきで、保険実務上もこの取扱が定着しているのであるために、積極に解するのが妥当です。そうすると、譲渡担保についてもこれを担保権として把握する以上、同様に類推適用すべきです。この場合には、民法三○四条一項但書により、保検会社が設定者に保険金を支払う以前に譲渡担保権者は保険金請求権を差し押える必要があります。

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