根保証人の交替

根保証人の交替という場合には、旧保証人は交替までの債務について責任を負い、新保証人は交替以後の債務についてのみ責任を負うという態様と、旧保証人は交替までの債務も含めてすべての債務について責任を免れ、新保証人が交替の前後にかかわりなくすべての債務について責任を負うという二つの態様が考えられますが、交替のでの債務について責任を負う場合には、旧根保証契約の合意解約と新たな根保証契約の締結として単純にとらえることができるために、他に共同根保証人がいる場合であっても法律的に問題が錯綜することはないと考えられるのに対して、交替前までの債務も責任を負う場合には、旧根保証人に対する保証債務の免除とからんで、他の共同根保証人に対して免除の絶対的効力が生じるか、担保保存義務との関係でどのような効果を持つかなどの問題が生じます。

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会社の継続的取引から生じる債務についてその会社の代表取締役などがその地位に基づいて根保証をするのは頻繁に行なわれているようですが、このような場合に、役職の交替に伴って行なわれる根保証人の交替は、交替前までの債務も責任を負う場合の交替であるのが通常です。
例えば保証人であったA取締役が退任し、Bが新たに取締役に就任し、Aに代わって根保証人になることを承諾しているような場合であっても、このことだけから当然にAが保証人でなくなり、その代りにBが保証人になるというわけにはいきません。Aが根保証人たる地位を離れ、Bがこの地位を承継するためには債権者との合意が必要なのです。
連帯債務者の一人に対して債務の免除をすると、その免除の効力は他の連帯債務者にも及びます。効力の及ぶ範囲については判例学説は区々に分かれています。民法四五八条は連帯保証について四三七条を準用すると規定しています。一方で、連帯共同保証であっても、それだけでは複数の連帯保証人間に連帯債務関係を認めず、したがって、連帯保証人の一人に対して保証債務の免除をしても民法四五八・四三七条により他の共同保証人に対して絶対的効力は及ばないとするのが判例ですが、この判例はさらに、複数の連帯保証人が存する場合であっても、この保証人が連帯して保証債務を負担する旨特約した場合、または商法五二条二項に該当する場合でなければ、各保証人間に連帯債務はなく、これに準じる法律関係は生じないと述ぺています。そして、取締役が会社の債務を保証するという場合、会社の継続的取引は、金融取引であっても、売買その他の取引であっても、商行為にあたるために、その保証契約は商法五一一条の保証ということになります。そうすると、前記の例で、債権者が取締役を退任したAに対して保証債務を免除すると、他に、C、D、Eが保証をしていて、免除当時の債務額が1000万円というような場合には、250万円について絶対的効力が生じるために、C、D、Eの保証債務は750万円ということになります。しかし、新たに取締役に就任して保証人となったBに対しては免除の効力が及ばないので、BはAがそれまで負担していた1000万円の保証債務を全額承継するのに、従前からの保証人C、D、EはAの取締役退任、保証債務免除を機会に、保証債務の一部を免れることになりますが、これでは保証人間の公平を欠くことになり、債権者にとっても不利になります。また、取締役たる地位に基づいて保証人となる場合、その地位に就く人間が交替すれば保証人としての地位についても交替が行われ、直ちに公認の者が保証債務を承継するのが常であるために、他の保証人としても、同僚の退任が保証債務の免除により負担軽滅の利益を受けることは期待していないと解してさしつかえありません。また、免除の絶対的効力を肯定すると、他の連帯保証人が免れる保証債務は免除時に存した債務に限られるということになると思われますが、主たる債務は継続的取引の結果として免除にかかわりなく増減を続けるのだから、その間に保証人が数回交替をくりかえしたというような場合には、各連帯保証人の責任の範囲の確定について複雑を極める結果となります。したがって会社の取締役等がその地位に基づいて保証人となった場合に、その退任に伴って、後任の者が保証債務を承継したときには、他に保証人がいても、これらの者に対して免除の絶対的効力は生じないと解されます。しかし、この見解は前記の最高裁判例と抵触するおそれなしとはいえないので、取引実務の現実的な方法としては、保証人交替の際に、あるいは当初の保証契約の際に、他の保証人に交替があってもその責任に変更を生じない旨の同意を得ておくことが必要です。
連帯保証人の一人が弁済をすると、主たる債務者に対して求償権を取得し、その範囲で債権者の有する担保に代位することができるために、他の連帯保証人に対して債権者の有する権利を行使できることになります。しかし、他の連帯保証人の一人に対して保証債務の免除をしていると、これに対しては代位できないわけであるために、民法五○四条により保証責任が軽滅されるのではないかという問題が生じます。もっとも、保証人の交替の場合には、一人に免除をしても他の新しい保証人が加わるために、直ちに担保が滅少したとはいえないのですが、旧保証人には資力が十分にあったのに新保証人には十分な資力がないというような場合には、担保の滅少としてとらえられないわけではないので、混乱を避けるためには、保証人の交替の際に、または事前に、他の保証人から前段と同様に、保証人の交替があってもその責任に影響を及ぽさない旨の同意をとっておくことが必要です。

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