賃借人の保証

賃借保証は継続的金融取引、継続的売買取引の保証と同様、一種の継続的保証です。賃借保証には保証人が主債務者たる賃借人とは独立した債務を負担するいわゆる独立的賃借保証と、主債務者たる賃借人の負担する償務を履行すべき責任を負担する附従的賃借保証の形態があります。独立的賃借保証は契約文言上賃借人につき、如何様の事故出来侯とも一切引受とされ、保証責任の対象範囲が極めて広汎かつ無限的であって、前代の地請、店請のいわば遣物とされており、今日でその種の賃借保証は極めて少ないので、附徒的賃借保証に限定して検討します。

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附徒的賃借保証の保証責任は賃借人が当該賃借契約に基づいて負担する債務の範囲に限定されます。したがって、賃借人の負担する債務であっても、それが当該賃貸借関係に基づかないものであるときは、保証人はそれにつき特約のない限り責任はありません。他方、賃借保証人は賃貸借上の債務について一切責任を負うべきであるかどうかについては、保証契約において特別に限定していないかぎり、賃貸借上の一切の債務について責任を負う趣旨に解するのが妥当です。
保証人が賃料について履行の責任を負うことは異論がありません。保証契約後に賃料が賃貸人と賃借人との間の意または滅額請求権の行使により滅額されたときは保証人の保証債務もまた当然にその範囲に減額されます。問題は賃料が保証契約後増額されたときに賃借保証に影響をおよぼすか否かですが、こような場合は保証人の同意のない限り保証債務には影響を及ぽさないと解すべきです。なぜならば、賃貸人と賃借人間における新たな法律行為によって第三者(保証人)の責任を加重することはできないからです。ただし、借地法第二条または借家法第七条による賃料増額請求権の適法な行使による賃料の増額のとき、将来の賃料を培額することがある旨の特約付の賃貸借契約を保証し、特約に基づく賃料の増額が相当の限度を超えずかつ保証人において予想しうべき程度のものであるとき、賃料増額の慣習が存する場合において、慣習に基づき後日増額された賃料が相当の限度を超えずかつ保証人の予想しうべき程度のものであるとき、著しい事情の変更のため従来どおりの賃料を維待することが条理に反するため相当額に増額されたとき等の場合には、保証人において保証締結の際、事情による賃料増額のありうることを予期しうるものであるために、その増額賃料についても保証人は責任を負うと解すべきです。
賃借人は契約上の義務として賃借物の保管義務を負うことは契約の性質上自明の理ですが、賃借人が保管義務を履行しない場合には保証人は原則として自ら保管すべき義務があると解すべぎです。なぜならば、保管義務は通例の場合においては専属的債務ではなく、保証人は一般に能う限り主債務本来の内容を実現すべき義務を負うからです。したがって賃借人がやむをえない事由のため保管をなさなかった場合に賃借人が損害賠償責任を免れることがあっても保証人が自ら保管すべき義務を怠った場合にはこれの不履行による損害賠償責任は免れえないと解すべきです。また、保証人は賃借人が保管義務の不履行によって損害賠償義務を負った場合には損害賠償義務につき履行の責を負います。しかし、主債務が同一性を失わずに変更した場合には保証債務もまたこれに応じて変更するからです。
賃借人は一般の場合において賃借物につき使用収益すべき義務を負うものではありませんが、例外的に賃借物の性質上保管をなすことが必然的に使用を伴う場合、および特約または慣習によって賃借人が使用取益義務を負う場合には、保証人も前述の賃借物の保管義務と同様の責を負うと解すべきです。
賃貸人の承諾による転貸借の場合においても、賃借人は転借人が故意または過失により日的物を滅失毀損したときは賃貸人に対し損害賠慣の責めを負いますが、保証人は転貸につき同意を与えていないかぎり、その責めを負うものではないと解すべきです。なぜならば、賃貸人と賃借人との間の新たな法律行為によって、保証人の責任を加重することはできないからです。
かつては賃借物の返還義務が契約上の義務か否かについて議論がありましたが、今日では義務が賃貸借契約上の義務であることについては異論がなく、保証人は原則として賃借物返還義務についても責任を負うことになります。
継続的保証における保証責任はその永続性ゆえ、その責任存続に関し合理的限界を画するため何らかの特別事情の発生、または著しい事情の変更を成立要件とする特別解約権と、これらを成立要件とせず、だだ保証契約成立後相当期間の経過後随時に解約をなす任意的解約権が判例法上ほぼ確立されていますが、賃借保証に関して判例の主流は任意的解約権を認めていません。これは一般の信用保証と異なり、その賃借保証の債務の額がほぼ一定したものが累積してゆくだけで、保証人の予期しない数額のものを生じるということはないという趣旨によるものです。他方、特別解約権について判例は保証期間の定めがなく、かつ保証契約締結後相当の期間が経過し、賃借人が賃料の支払を怠っているのにこれを保証人に通知せず、将来支払う見込もないのに賃貸借を解除せずに放置して、一時に多額の賃料を請求することは信義に反し、かつ保証契約の趣旨に反するとして保証人に解約権を認めています。
継続的保証の相続に関しこれを否定するのが判例の立場ですが、賃借保証について判例は相続を認めています。これは、身元保証ほど保証人と賃借人の間に人的信頼関係がなく、また信用保証ほど予期しない数額に増大することはないという趣旨です。判例では、賃借人自身につき相続が開始した後も保証人は引続き賃借人の相続人のため保証責任を負うべきものとしています。

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