債務がないのに保証責任

保証債務は主たる債務のために存在し独自の存在目的を有しないので、主たる債務に附従します。したがって、主たる債務が無効である場合や、取消された場合には保証債務も無効となり、主たる債務が弁済、代物弁済、供託その他の事由により主たる債務が消滅することによって保証債務も消滅します。このように通常の保証は附従的保証の性質を有しますが、当事者間で例外的に保証債務の附従性を否定した独立的保証契約を締結することもでき、かかる場合における保証債務には附徒性はありませんが、問題は通常の保証契約をした場合においても、例外的に附従性を否定できる場合、つまり、主たる債務が消滅し不存在となった場合においても保証責任を問われる場合があるか否かです。この点につぎ、民法四四九条は、主たる債務が無能力を理由として取消しうるものである場合に限り、保証人が保証契約締結当時、その取消原因を知ってなした時は主たる債務と同一目的を存する独立の債務を負担するとし、通常の保証契約に基づく保証債務の附従性に対する例外の取扱を規定し、保証人に対し主たる債務の不存在の場合でも保証債務の存在を認めましたが、その適用範囲や、その保証債務の性質、本条の効力につき問題があります。

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本条の適用を受けるのは主たる債務の発生原因たる法律行為の取消が無能力を理由とする場合に限定すべきであり、その理由は、保証人に独立の債務を負担せしめる本条の規定は、保証債務の附従性という本質に反するものであるために、無能力を理由とする取消しの場合以外に拡大し類推道用すぺきでないからです。したがって、主たる債務の発生原因たる法律行為が詐欺または強迫によって取消しされた場合には類推適用されず、また、錯誤による無効の場合にも本条を適用すべきではありません。また、裁判例として、契約証書の偽造であることを知って保証をした者につき前述の理由で主たる債務も成立しない場合において、保証債務も不成立となり、保証人は責任を負わないとして本条の適用を肯定した事例もあります。
本条のうちに、主たる債務の不履行の場合にも同一の目的を有する独立の債務を負担したるものと推定すると規定する部分がありますが、この不履行の意味につき問題があり、これが、債務者の責め帰すべぎ事由による不履行の場合を意味するものとすれば、この場合は主債務は自然的に損害賠償債務に変更され、その保証債務も損害賠償債務の保証債務にかわるために、本条により保証人が独立して債務を負担するとの規定をなす必要はありません。これを債務者の責めに帰すべからざる事由による不履行の場合を意味するものとすれば、この場合は主たる債務者はその義務を免れ、主たる債務が不存在となるために、保証債務もまた消滅するはずであるために、本規定はこの場合にのみ積極的な意義を有します。
後者の場合に保証人は本条に基づいて独立の債務を負担するとの見解もありますが、主たる債務者の責めに帰すべからざる事由による履行不能な場合まで保証人の責任を認めることは妥当ではなく、したがって、本条の債務不履行の場合という要件は無意義なものと解するよりほかはありません。
一種の損害担保契約に基づく債務とする説では、無能力を理由として法律行為を取り消した場合に、そのことを知って保証契約を締結した保証人は、その取消によって債権者が被ることのある損害を担保するという意思に基づく債務を負担したものと解されます。
保証契約に基づく債務とする説では、保証人は主たる債務が存続する間は保証債務を負担しますが、取り消されたときは、遡及的に同一内容の独立債務を負担するに至るものと解されます。
保証人の本条に基づく債務を保証契約に基づく独立の債務と解することは、保証債務の附従性から妥当ではないために、無能力に因りて取消すことを得へき債務を保証したる者という本条の文書にこだわらず、主たる債務消滅と同時に保証債務もその附従性の故に消滅するとし、ここにいう独立の債務は保証契約から発生した通常の保証債務ではなく、むしろ、一種の損害担保契約がなされ、これに基づく独立の債務と解するのが妥当です。もっとも、保証人は保証契約当初に損害担保契約を締結したものとすべきではないために、取消以前においては通常の保証債務を負担するにすぎません。、また、この独立の債務は、その期限、条件、態様において保証契約締結時の状態を維待し、主たる債務と同一内容の債務を負担するものと解すべきです。
本条は推定規定であり、保証人が独立の債務を負担する意思のないことを立証すればその責任を免れることとなります。また、保証人をして債務を負担せしめるには契約締結当時、保証人が主たる債務者に無能力という取消原因の存在することを知っていたことを必要とするために、保証人がその取消原因の存在につき善意であることを立証すれば、本条の責任を免れることができます。仮に、保証人が取消原因の存在につき悪意であったとしても、保証債務のみを負担し、取消後に独立の債務を負担しない旨の合意をした場合には、本条の責任を免れうると解されます。

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