保証債務の相続

保証人が死亡した場合に、その負担していた保証債務が相続人に承継されるか否かについては、当該保証が一時的なものであるか、継続的なものであるかによって、判例、学説共に結論を異にしています。判例およびほとんどの学説では一時的保証債務については一般の債務と同様に相続によって相続人に承継されると解していますが、そのうちにあって、保証における保証人の主たる債務者に対する信頼および保証成立の経緯を強調して保証債務一般につき相続性を否定する立場や、保証を純粋無償契約にしてかつ継続的関係を発生せしめるものと規定して、保証一般につきその相続性を否定する立場とがあります。

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継続的保証については、すでに発生した支分的保証債務は別として、その基本的保証債務はその永続性、広汎性からしてこれに歯止めをすることなく相続性を認めるとすれば、相続人に酷になるところから、その相続性の可否につき争いが生じます。
継続的保証の相続性についての判例の基本的動向としては、その相続性を否定する傾向にあります。身元保証は、保証人と被保証人との間の相互信用関係を基礎とし、保証責任の範囲も著しく広汎であるために、特別な事由のない限り一身専属的義務であると解して、その相続性を否定します。そして、例外的に相続性を認める特殊な事例として、身元本人の実兄が、使用者に対して雇入を懇請した関係上みずから身元保証人となろうとしたが、当時非戸主であったのでこれを避け、戸主であった父が身元保証をした事実および当事これらの事情を使用者、身元保証人ともどもに周知していたことから、実兄の家督相続による身元保証責任の承継を認めたものがあります。
当座貸越、手形割引等の継続的金融取引の保証、この類型に対する判例は、貸付額の限度や取引の存続期間について定めのある取引と定めのない取引に区別されます。
貸付額に限度があるか、または保証期間に制限のある場合、このように保証人の責任の範囲に制限のある場合には、判例は保証債務の相続性を認める立場をとります。
貸付額および保証期間について制限のない場合、このように保証人の責任範囲に制限のない場合には保証人の責任が広汎にわたるおそれがあるため、制限し、保証債務の最高限度を相続開始時における貸付高に制限し、その範囲で保証責任が相続人に承継されるとします。
売買取引またはその他の継続的取引の保証は大判大一四・五・三〇では、保証責任の限度額および保証期間の定めのない事例につき、特別に事由なき限り当事者其の人と終結するものと判示しました。その相続性を否定し、その後も魚類売掛取引の保証や肥糧の売掛取引の保証につき従来の判例の立場を踏襲しました。これらの判例に対し、保証債務は限定額を定めた事例につき、大判昭一○・三・二二はその相続性を肯定しました。
継続保証の相続性に関する判例の一身専属理論に対して、学説は種々の批判を加えていますが、広汎な相続性を否定しようとするその結論に対しては多数の学者は賛同しています。まず、判例の一身専属理論に対し、一身専属義務とは、義務者の人格もしくは身分と切り離しては存在することをえないとか、その人でなければ履行できないとかいうように、義務それ自体の性質ないし内容からその帰属が一身的であるか否かにより判定すべきものであり、その義務がどういう理由で成立したか否かによって決定すべきでないところから、相続性否定の理由を保証契約当事者の意思解釈に求めるものとか、保証人と本人との間の個人的な信頼関係を基礎とするものもありますが、一身専属性を認める根拠は必ずしも前記のような理由に限定する必要はなく、保証責任の範囲が広汎で相続人に酷であることおよび、保証責任を制限することによって、継続的契約の保証を容易にし運用の円滑を確保する目的のために、特に法律政策上、かかる広汎な継続的契約の保証を一身専属的なものと解することもできるので、相続性否定の根拠はこのような理由に求めるべきものと思われます。
抵当権または質権設定契約の当事者は、債権者と債務者または第三者ですが、物上保証人は、通常の保証人と違って、担保権者に対して被担保債権額につき自己所有の当該担保物件の範囲内で責任を負担するにとどまり、債務を負担するものではありません。しかし、債務の弁済がないとその担保物件が競売され所有権を失うことになるために、これを免れるためには物上保証人は自から進んで債務の弁済をしなければならない立場にあります。そこで、継続的保証に相当する根抵当における物上保証人が死亡した場合のその貴任の相続性については、根抵当に対して物上保証人の負担する責任は、一定範囲の不待定の債権についてではありますが、この一定範囲については法は当事者の完全な事由に委ねず、極度額と被担保債権の発生原因につき限定しておりこれらの点からみると物上保証責任の相続性は肯定されるべきものと考えられます。

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