法人を保証人にする注意事項

法人を保証人とする場合の要点は、保証と法人の行為能力との関係と、保証が利益相反行為に該当するか否かの二点に大別されます。民法四三条には、法人は法令の規定に従い、定款又は寄附行為に因りて定まりたる目的の範囲内に於て権利を有し義務を負う、と規定され、法人の能力は法人の目的の範囲内に限定されるので、法人を保証人とする場合、その保証行為が法人の目的の範囲内に属しているか否かが問題となります。

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営利法人である会社については、目的の範囲とは、定款所定の目的だけでなく、その目的を遂行するに必要な事項を含むものとされ、会社のなす行為は原則としてすべて会社の目的の範囲内に属するものであり、目的の範囲外にあることは、それを主張する者において立証すぺきであると判示されるにに及び、目的の範囲の解釈は、民法四三条の適用そのものが無意味といってよいほど拡大されるにいたったものといわれています。なお会社法においては、民法四四条一項、五四条が準用されているのに対して、同法四三案の準用が明記されていないことから、四三条の適用の有無そのものがまず間題とされていますが、通説、判例はその適用を肯定しています。
これを判例の具体的事例についてみると取引先の救済のために手形の裏書をなし、取引会社の債務のために物上保証をなし、借地契約上の債務につき、連帯保証をなし、資本金300万円の会社が、取引会社のために500万円について連帯保証をなす、こと等は会社の定款にその旨の記載がなくとも有効に行なうことができるとされています。しかしながら、会社社長が個人的縁故に基づき、飲食店に働く女性がその開業資金を金融機関から借入するに際し、会社としてこれを保証する場合等は明白に目的の範囲外であり、無効のものと考えられます。
非営利法人である協同組合、学校法人、社会福祉法人、医療法人、宗教法人等については、営利法人の場合と対比し、目的遂行に必要な行為の範囲につき、学説、判例上もこれを狭く解する傾向にあるので、その保証行為については、定款、寄附行為に記載せられた目的規定との関連において、特に慎重な取扱いが要請されます。
判例についてみると、信用協同組合が、組合員のために保証をなした事案につき目的外の行為とし、信用組合が非組合員のため民事保証をすることは特段の事惰がないかぎり目的に反し無効であるとし、農業協同組合が他人の債務について保証をすることは組合の目的たる事業に含まれないとしています。なお、信用協同組合が、その組合員の手形債務のために手形保証をすることは、事業に附帯する業務として、目的の範囲内に属し有効であるとする判例も存しますが、これは組合員のための手形保証に関する事案であることに注意すべきです。
法人がその役員のために保証をなす行為は、自己取引に該当し、株式会社については取締役会の承認、有限会社については社員総会の承認、合名会社及び合資会社については他の社員の過半数の決議、その他の法人については特別代理人の選任が必要とせられています。
取締役の債務について会社が保証をする場合は、会社の取引は、取締役と直接に行なわれるのではなく取締役の債権者との間で行なわれるので、自己取引には該当せず取締役会の承認は必要でないとする見解もありましたが、昭和四三年一二月二五日の最高裁大法廷判決では、債務引受の事案につき商法二六五条が、取締役個人の利益にして、会社に不利益を及ぼす間接取引にも適用されることを明らかにしました。その後も最高裁は取締役が自己の債務について会社を代表して連帯保証をなした事案につき、あるいは、甲乙両会社の代表取締役が、甲会社の債務につき乙会礼を代表して保証をした事案につき、それぞれ商法二六五条にいう自己取引に該当すると判示しています。
前記大法廷判決は、商法二六五条違反の効果として、取締役と会社との間に直接成立すぺき取引については、取締役に対して、その無効を主張することができますが、取締役が会社を代表して自己のためにした会社以外の第三者との間の取引については、第三者が取締役会の承認を受けていなかったことについて悪意であるときにかぎり、その無効を主張することができる旨を判示しています。
取締役に兼任者がいる会社間において、会社の債務を保証する場合、前記の解釈論から言えば、取締役に兼任者がいる二つの会社において、一方の会社が他方の会社債務を保証する場合においても、取締役会の承認の要否が問題となってきます。
兼任取締役が、保証人となる会社の平取締役であり、保証される会社の代表取締役である場合、保証される会社の取締役は代表権限を有しており、まさしく第三者の為に取引をする場合であるために、保証人となる会社の取締役会の承認を必要とします。
兼任取締役が、双方の会社の代表取締役である場合、保証人となる会社につき、取締役会の承認を必要とする理由は前記と同様です。
兼任取締役が、保証人となる会社の代表取締役であり、保証される会社の平取締役である場合、保証される会社の取締役は代表権限を有していない場合であるために、第三者のためにする取引には該当せず、保証人となる会社の取締役会の承認は必要ではありません。この場合、保証人となる会社の取締役会の承認を要するとする見解もありますが、これは商法二六五条の解釈として広きに失するものと思われます。
兼任取締役が、双方の会社の平取締役である場合、保証人となる会社につき、取締役会の承認は必要ではありません。なおいずれの場合も、保証される会社は当該取引によって利益を受け、会社の利益が損なわれる虞はないために、取締役会の承認は不要ということになります。

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