債務引受と履行引受

債務引受とは機能的には資力に乏しい現債務者に代わって、確実な資力をもつ第三者に債務の肩代わりをしてもらうことです。債務引受には二つの類型があり、免責的債務引受と併存的債務引受です。前者は、ある債務者が、その債務の同一性を維持しつつ、別の債務者にその債務を移転せしめること、特にそのような債務移転を目的とする契約をいいます。債務の肩代りという言葉がピッタリする類型で、狭義での債務引受とはこの場合をいいます。資力の弱い物から確実な資力をもつ者への肩代りであれば、債権者にとっては債権の回収が確実になります。後者は、第三者つまり引受人が、既存の債務へ加入して新たに債務者となり、もとからの債務者と同一内容の債務をともに負担すること、ないしはそのような負担関係を生ぜしめる契約をいいます。実質的にみると、この場合は引受人が連帯債務者ないし保証人として加わるのと同じ結果になり、人的担保としての機能をより如実に示すことになります。

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履行引受は、弁済の引受、免責の引受などともいわれますが、債務者と引受人との間の契約で、引受人が、債務者の債権者に対する債務について、第三者としての弁済その他によって債務者を免責せしめる義務を債務者に対して負担すること、ないしはそのような内容の契約をいいます。履行引受では、基本的には、債務者と引受人との間の内部的、相対的関係であって、債権者に直接、引受人に対する権利を取得せしめるものではないといわれます。現実的には、債務者、引受人間での第三者のためにする契約として、債権者に権利を付与する内容の契約が行なわれる場合がないわけではありません。学説上、単純な履行引受と第三者のためにする履行引受とを区別する見解もありますが、外部的効果の発生を例外視するのが一般的であるといわれます。いずれにしても、履行引受に関しては二つの点が間題となります。一つは、外部的効果の発生を例外視することであり、もう一つは、第三者のためにする契約との関連です。履行引受の理解について、内部的効果=原則読を生み出している要因として、第一は、単純な履行引受は慈善、謝恩、返礼などにもとづく代弁済約束と結びつき、かつ、履行引受はこのような場合が典型であるとする理解で、この場合には、債権者に引受人に対する権利を与えることを法的に是認するところまではいきません。第二は、いわゆる履行引受の中に、新旧債務者間の契約による債務引受の先行的形態が含まれていることの認識の欠如、第三に、外部的効果を認める枠の狭さからくる債権者の権利取得に対する制限の三つです。履行引受が例外的に外部的効果を生じるときは併存的債務引受となると解されていますが、免責的債務引受については、引受人、債務者間の二面契約を認めなかった順通説の態度が、正に債務者、引受人の間で行なわれる履行引受に外部的効果を原則として付与しなかった点に影響しているといえます。
免責的債務引受が、債権者、引受人、債務者三者によって行なわれる場合は、関係者全員の合意にもとづくので問題はありません。二面契約、特に債権者を除外して行なうことが可能かという問題があります。債権者と引受人との契約による場合は認められています。債務者の変更に対する債権者の保護という点からみて、このような契約を否定する理由はありません。ただ、旧債務者の関与をどの程度まで評価すべきかという点については、免責的債務引受か有効に成立するか為には債務者の意思に反せさるを以て足り債務者の承諾の意思表示を必要とする。とする判例にもみられるように、引受契約の当事者とする必要はありませんが、その意思に反することはできないとされます。この点については、債務考の意思いかんによって債権者、引受人間の内部関係を動かさないようにするほうが正当とする見解や、債務者の意思の問題を、引受契約の有効無効の次元から、債務者に対する引受人の慣還請求への次元へ移せという見解があり検討の対象となっています。引受人と旧債務者の二面契約による場合では、かつてはこの場合を否定する見解が学説上支配的でしたが、今日では、実際の必要からも、新旧債務者間の債務引受を認めなければこの制度の実効ははなはだしく滅殺されます。のみならず、契約上の地位や企業の譲渡において、これに包含される債務の移転を容易に認めるためにはこの理論の是認が必要として、肯定されています。しかし、この場合、新旧両債務者による債務引受の可能性を肯定するとしても、債権者の関与をどの程度評価すべきかという問題が残ります。つまり債務者の変更は、債権の担保力ないし経済的価値を滅殺するおそれがあり、債権者にとっての利害は大きいものであるために、債権者の意思を全く無視するわけにもいきません。債権者の意思的関与の法的構成については各説の対立があることは周知のところです。債権者の承認を条件または停止条件とする説や、有効要件としてとらえる説、無効行為追認説、無権代理追認準用説、無権利益の処分に対する権利者の追完理論など多様です。基本は、債権者の意思関与を必要とする趣旨の理解であり、具体的状況の下でその評価を異にする場合もありますが、免責的債務引受の場合にとっては、債権者の意思は不可欠の要件と解する必要があります。併存的債務引受の当事者は、債権者、引受人のみを当事者とする方法、従来の債務者と引受人のみを当事者とする方法いずれも認められます。前者の場合、旧債務者の意思に反しても有効になされ、後者に関しては、いわゆる履行引受が外部的効果を伴う場合は併存的債務引受となります。

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