仮登記担保権実行保全

仮登記担保権の実行を保全するには、どのような方法が考えられるのでしょうか。仮登記担保権は、一種の担保権であり、その効力として目的不動産の換価権と優先弁済権を持つと解すべきです。したがって、仮登記担保権の実行とは、この換価権と優先弁済権の行使を指します。その実行方法としては、仮登記担保権者がみずから換価権を行使して、目的不動産を自己に帰属させ、あるいは第三者に処分して、被担保債権の優先的満足をはかる一方、清算を要する場合には、設定者ないしは第三取得者に清算金を支払うという方法と、他の担保物権者による任意競売手続または所有者の一般債権者による強制執行手続に参加して、優先弁済をうける方法とがあります。債権の担保を目的とする代物弁済予約契約ないしは停上条件付代物弁済契約とその仮登記により、仮登記担保権が設定され、停止条件の成就ないしは予約完結の意思表示が有効になされることにより、目的不動産を換価する権能が現実化し、仮登記担保権者がこの換価権を行使することによって、その効果として目的不動産の所有権の移転、本登記請求権、目的物の引渡請求権などが発生すると解されます。所有権の移転等の効果が、代物弁済契約自体から直接生じるのではなく、仮登記担保権の一権能である換価権の行使によって発生するものとされる点で、債権担保の目的をもたない本来の代物弁済予約ないしは停止条件付代物弁済契約とは、同一に扱えないものです。いかなる行為があれば、換価権の行使があったといえるかは、判例、学説ともに、必ずしも明らかではありませんが、少なくとも本登記の請求がなされることが必要であると考えられます。

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設定者が、目的不動産を第三者に譲渡し、あるいは担保物権、用益物権、賃借権などを設定するおそれのある場合、仮登記担保権の実行行為開始後は、本登記請求権を被保全権利として、設定者に対する処分禁止の仮処分をなすことができ、この仮処分の登記によって第三者に対してこの仮処分をもって対抗できます。担保権者が実行行為に着手した以上、設定者は、目的不動産の処分を禁じられても仕方のない地位にあるとみるべきです。仮登記担保権設定後に、第三者が設定者から列挙したような権利を取得し、その旨の登記を得ても、仮登記担保権者が優充し、これらの者に対し、不動産登記法一○五条、一四六条による本登記承諾請求権を有し、本登記がなされれば、これらの者の登記は職権で抹消されますが、本登記をするは、これらの者から本登記についての承諸を得なければならず、任意に承諾書を交付しないときは、承諾請求訴訟を提起し、あるいは既存の訴訟へ承継入として引き込まねばなりません。そのような手間を省くために、設定者に対して処分禁止の仮処分をしておく必要性があります。
これに反して、仮登記担保権の実行行為着手前には、同様な理由にもとづいて設定者に対して処分禁止の仮処分をなしえません。設定者は、目的不動産の価値と被担保債権額との差額を自由に処分でき、また担保権が実行されるまでは、目的不動産を使用する権利を有するはずであり、もし担保権の実行前に処分禁止の仮処分がなされれば、設定者の権利が害されるからです。実行行為前にもこの仮処分を認める見解がありますが、仮登記担保権を担保権の一種とみる立場からは疑問です。抵当権の場合には、設定者に対するこの種の仮処分は原則として許されないというのが通説です。担保不動産に賃借権がつけられることによって、担保不動産の換価額が低減することは、私的実行の場合にも生じる事態ですが、それに対する対策は抵当権の場合のそれと同様でよいと思われます。なお抵当権等にもとづく任意競売にあっては、抵当権設定後、第三者が目的不動産を取得しても、競落人への所有権の移転登記が嘱託されまた後順位の担保物権や用益権の設定があっても、競落人が引き受ける担保物権を除き、その登記は当然に抹消されますが、仮登記担保権の実行にあっては、これらの登記上利害関係を有する第三者から本登記についての承諾を得ないと、本登記ができず、任意に承諾書が交付されないときは、本登記承諾請求訴訟をしなければならない点が問題です。しかし、その程度の不利益は仮登記担保権者において甘受すべきものと考えるべきです。
仮登記担保設定後、設定者から権利の譲渡ないし設定をうけた第三者がある場合、その者がさらに第三者に権利の譲渡、設定をなすおそれがあるという理由で、その者に対する処分禁止の仮処分をなしうるかについては、設定者に対する処分禁止の仮処分についての理論がそのままあてはまります。つまり仮登記担保権の実行行為着手前は、原則としてこの仮処分は許されませんが、実行行為着手後は、当事者を恒定するために、その者に対する本登記承諾請求権を被保全権利として、処分禁止の仮処分が認められると解されます。
設定者が、目的不動産の占有を第三者に移転し、引渡請求権の実現が困難になるおそれがあるときは、仮登記担保権の実行行為者手後は、引渡請求権を被保全権利として、設定者に対し執行官保管、占有移転禁止の仮処分をなしえます。担保権者はこの仮処分によって、引渡請求訴訟の当事者を恒定でき、またこの仮処分に違反して占有を取得した第三者があるときは、設定者に対する勝訴判決に承継執行文をうけ、この第三者に対して引渡しの執行をなしえます。同様の理由にもとづく場合でも、仮登記担保権の実行行為着手前は、原則としてこの仮処分に認められないと解されます。仮登記担保権は、抵当権と同様、目的不動産の交換価値を把握するのみであり、設定者は、担保権の実行があるまでは、その使用、取益の権利をもち、その方法として賃貸したり処分したりすることを妨げられないからです。抵当権については、この仮処分は原則として認められないというのが通説ですが、仮登記担保権については、実行行為前でもこの仮処分が認められるとする見解が多くなっています。任意競売にあっては、競落人に対抗できる権利にもとづかないで、不動産を占有する第三者に対しては不動産引渡命令という簡易な手続で引渡しの債務名義を取得する方法がありますが、仮登記担保権の私的実行では、そのような便法はなく、任意の引渡しがなされないかぎり、引渡請求訴訟をしなければなりません。しかし、それもやむをえないと考えるべきです。なお、特約をもって処分を禁止しているときは、その趣旨に従い処分禁止や占有移転禁止の仮処分をなしうると解されます。
もっとも、担保の目的である建物を取りこわそうとしたり、土地を壊滅しようとするなど、その交換価値を違法に滅損させようとし、あるいは、仮登記担保権の効力の及ぶ付加物や従物を分離、搬出しようとする者があるときは、仮登記担保権にもとづく妨害排徐または妨害予防請求権を被保全権利とする仮の地位を定める仮処分として、執行官の保管に付す仮処分その他目的物の現状を保持するために必要な仮処分を求められます。
第三者が目的不動産を占有している場合、仮登記担保権者は、実行行為後は、その第三者が不法占有者であるときは直ちに、また本登記を得れば仮登記担保権者に対抗できない占有者に対しては、本登記を条件として、目的不動産の引渡請求権を有するため、この権利を被保全権利として、保全の必要があれば、占有移転禁止の仮処分を求められます。

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