土地の一部を処分禁止仮処分

一筆の土地の一部だけの贈与をうけた者は、その部分についての所有権移転登記請求権を保全するために土地の処分禁止の仮処分を求めることができるのでしょうか。一筆の土地の一部を贈与、売買等により譲りうけたが、その部分について所有権移転登記手続を終えないうちに、譲渡人より二重譲渡されるおそれがあるような場合には、譲受人はその部分についての所有権移転登記請求権を保全するために、譲渡人を債務者として一筆の土地の一部について処分禁止の仮処分が認められます。一筆の土地の一部については、分筆登記前であってもその部分が具体的に特定し、外形上他から区分できるものであるかぎり処分できることは、今日一般に認められています。一筆の土地の一部を譲りうけた者の所有権移転登記請求権を被保全権利とする処分禁止の仮処分は、その譲りうけた部分についてのみ許され、これを含む一筆の土地の全部についてすることは、仮処分の目的を達するに必要かつ十分な範囲程度をこえるものであるから許されません。仮処分の対象範囲は、保全すべき権利の対象範囲に限定されるのが原則であるため、それ以外の範囲に仮処分の効力を及ぼすことは、それが権利保全のために必要不可欠とされる場合でないかぎり、許されないからです。もっとも一筆の土地の一部について、譲渡人が分筆登記手続をとらないかぎり、譲受人に分筆登記手続をとる方法がないとすれば、一筆の土地の一部の所有権移転登記請求権を保全するために、土地の全部について処分禁上の仮処分を認めざるをえません。しかし譲受人は後述のとおり、譲渡人に代位して分筆登記手続をなす方法が認められているために、一筆の土地全部について処分禁止の仮処分を認める必要がないのです。

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一筆の土地の一部の処分禁止の仮処分申請をなすにあたって、その部分を具体的に特定し、対象範囲を明確にする必要があります。その特定は、物件目録の記載と地積測量図とでなされます。物件目録には一筆の土地の地番、地目、地積を記載したうえ、土地のうち別紙図面○線内の部分○平方メートルという形式で記載する画図面は、仮処分を求めている一筆の土地の一部が他と区別しうる程度のものでたりるのですが、後述のとおり、土地分筆の代位登記をするときは、一定の地積測量図が必要とされているため、この図面をあらかじめ作成し、その写しを添付するのが確実です。仮処分決定正本は、土地分筆の代位登記申請において登記原因証書となるのですが、決定正本添付図面と代位登記申請添付図面とが一致しないと、代位登記申請は受埋されないからです。したがって仮処分申請には、不動産登記法施行細則所定の地債測量図の写しを添付しておくことが必要です。
処分禁止仮処分の執行は、仮処分命令の登記簿への記入を嘱託することによってなされますが一筆の土地の全部について処分禁止の登記嘱託ができないため、仮処分命令を得た不動産の一部の表示と、登記簿上の不動産の表示とを一致させて処分禁止の登記を可能にしておくことが必要です。そのためには、嘱託登記前に当該不動産のうち仮処分にかかる部分について分筆登記をして、この部分を登記簿上も一個独立の不動産としておくことが必要です。ただし、この分筆登記は、登記簿上の表題部に記載された所有権の登記名義人だけがなしうるものであって、仮処分債権者が直接なすことはできないため、同債権者としては表題部に表示された所有権の登記名義人に代位して分筆登記申請をしなければなりません。
債権者は債権者代位権の要件を満たしているかぎり、仮処分申請前でも、分筆の代位登記を申請することができます。したがって、債権者が代位登記の申請をなす場合、その申請書には代位原因を記載し、かつ、代位原因を証する書面を添付する必要があります。代位原因として、一筆の土地の一部の贈与の場合には、○月○日付贈与による所有権移転登記請求権保全と記載し、かつ、代位原因証書として、贈与により不動産の該当部分について所有権を取得した旨の贈与証書を添付する必要があります。つまり不動産の当該部分が特定して表示されていることと、債権者が代位権を有することとを、証明するものであることが必要です。
ところが、分筆登記に必要な代位原因証書を欠くときには、このような登記申請が困難となってきます。そこでこのような場合には、仮処分命令を得たのちに、仮処分命令正本を代位原因証書として、債務者に代位して、分筆登記を申請することになります。
仮処分命令の執行は、仮処分裁判所が登記嘱託書をもって、このように分筆登記されて独立の不動産となった一部の土地についてその土地を管轄する法務局の登記官に対し仮処分命令を登記簿に記入すべきことを嘱託し、登記簿記入により執行がなされます。
登記嘱託書には、仮処分決定正本のほか嘱託書に表示された目的不動産を特定するために図面が添付されます。この図面は、嘱託登記の目的不動産を特定しうる程度のものでたりるはずですが、実務上は嘱託登記を円滑、確実にするため、前記代位登記添付図面と同様、不動産登記法施行細則所定の地積測量図を添付すべきものとされています。したがって仮処分債権者は、図面を用意し目録提出時までに裁判所へ提出しておくことが必要です。登記嘱託書は、仮処分裁判所がみずから送付する場合と、仮処分債権者が同裁判所の使者として持参する場合とがあります。

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