支払承諾

支払承諾とは、銀行法五条にいわゆる、銀行業に附随する業務として、銀行が行なう与信業務の一形態であり、その内容は、銀行が取引先の委託に基づいて取引先のために、債務の保証、手形引受、手形保証等を行なって取引先の債権者に対し債務負担の責めを負い、取引先よりその対価として保証料を徴する銀行、取引先間の契約です。これによって、取引先はわずかの保証料を支払うことにより銀行の信用を利用し得る便宜があり、一方で銀行にとっても直接の資金負担を要しない取引としての利点があります。しかしながら、銀行は取引先が債権者に対する債務を履行しないときには、その支払の責めに任ずることとなるので、支払承諸取引をなすについては、取引先の信用を重視するとともに、支払承諾約定書の条項などにより求債権の保全確保に意を用いています。

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支払承諾には、外国為替取引関係のものとして、信用状の発行、貨物引取保証などがあり、内国貸付取引関係のものとして、通常の支払承諾、各種代理貸付債務保証などがありますが、ここでは通常の支払承諾から協調保証、裏保証のような形態のものを除いた典型的な保証書保証、手形保証、手形引受に対象にして述べます。
銀行、取引先間の支払承諾契約の法律的性質は委任であって、諾成不要式の双務有償契約ですが、その取引は一般に次のようにして行なわれています。まず、取引先が銀行に銀行取引約定書、支払承諾約定書を差し入れたうえ、個別的な支払承諾依頼書、手形保証依頼書等によって具体的に債権者に対する原債務の保証、手形引受、手形保証等を銀行に依頼し、銀行がこれを承諾し、取引先に白地の約束手形、取引先に対し求債権を取得した場合の履行確保のためのものを差し入れさせ、保証料の支払を受けて、取引先に保証書を交付し、または引受ないし保証をした手形を交付し、取引先が銀行の使者として、保証書や引受、保証をした手形を債権者の許に持参するという形で行なわれています。通常の場合は、取引先が原債務を履行するか、その資金を銀行に提供するなどして銀行を免責させますが、もし取引先が原債務の履行を怠るなどした場合には、銀行は、保証人、または債務引受人、債務保証人として原債務の弁済をなし、取引先に対する求債権を取得し、銀行がその求償権の保全回収をはかることとなります。
前述のように、銀行が支払承諾取引の開始にあたって取引先に支払承諾約定書を差し入れさせる主な目的は、銀行の取引先に対する求償権を保全すること、とりわけ、相殺による求償権の確保回取にあり、約定書では一般に、法定相殺のほかに相殺し得る場合を定め、また、事前求償権の要件を緩和し、取引先に原債務の消滅等の場合の通知義務を負担させる一方で、銀行については、保証債務の履行につき事前の通知義務を免除させ、さらに、取引先に原債務の支払資金預託義務を負担させるなどによって相殺手続を確実かつ容易にでぎるようにさせています。
既述のとおり銀行と取引先との間の支払承諾契約の法律的性質は委任であって銀行は受任者の委任事務の処理として、取引先のために、取引先債権者と保証契約を締結し、支払引受、手形保証をなすものです。したがって、銀行が取引先の差入れた支払承諾依頼書の内容を応諾した以上は、それに従った手形保証、保証書の発行などをする必要があります。しかし、銀行は必ずしも取引先の依頼のままに応諾する義務はなく、必要があれば保証金額や保証期間を変更して承諾することもでき、その場合は銀行において取引先の申込を拒絶するとともに新たな申込をなしたものとみなされるので、変更された事項について取引先の承諸を得ることを要します。
支払承諾契約によって、銀行は具体的な支払承諾行為をする義務を負うことになりますが、具体的な支払承諾行為の方式としては、手形引受、手形保証、保証書の発行、契約書の保証署名などの方式があります。しかし、一般に銀行は支払承諾約定書等により必ずしも取引先が依頼した方式に拘束されず、任意の方式で行えるように約定しているので、たとえば、手形引受の依頼を手形保証に、契約書自体への保証署名の依頼を別札保証書の発行に変えることも可能です。しかし、この待約も銀行の恣意を許す越旨ではないために、銀行としては、委任の本旨に従い、取引先の委託の目的を最も合理的に達成し得るような方式によるべきです。
支払承諾取引においては、取引先は保証料を支払うこととなります。その支払時期は特約がなければ委任事務終了後ですが、支払承諾約定書などにより、支払時期は銀行の定めに従うことを特約しており、前払つまり、手形引受時、保証書の発行時を原則とするのが例となっています。間題となるのは、保証料の徴収期間であり、これについても銀行の定めに従うとされているのが一般的ですが、その取扱は各銀行間でまちまちです。銀行は保証書の発行から回取までの間は支払承諾債務を履行しなければならない危倹を負担するものであるために、その期間徴収し得るとするものと、この考え方を修正して、一定の期間、保証書を発行したり、契約書保証をしたりする場合において特約により定める銀行の責任の存続期間、経過後または保証の免責後は銀行は保証等による支払の危険を免れるので、その後の保証料は徴収すべきではないとするものと、保証料の性質を銀行の支払能力使用の対価とみて、銀行が支払承諾債務の履行の危険を負担しているか否かではなく、取引先が銀行の支払能力を使用しているか否かによって徴収期間を決めるべきであるとする考え方があります。
銀行が取引先債権者に対して負担する支払承諾債務が手形保証、確定債務の保証の場合で取引先が原債務の履行をしたとき、または根保証の場合で保証期間後取引先が債務の履行をしたときには、銀行の支払承諾債務が消滅し、銀行の委任事務の処理も終了することとなります。一般に、支払承諾約定書等により、銀行が債権保全のため必要と認める場合において取引先に支払承諾取引を中止し、または解約する旨の通知をなしたときは、取引先は直ちに原債務の弁済、債権者による保証の免除その他銀行の支払承諾債務を免責させ、発行済保証書の回取など必要な手続をとるべき義務を負うことを約しています。しかして、銀行の取引先債権者に対する支払承諾債務は具体的な免責行為があったときに消減することとなります。
支払承諾取引において、銀行が支払承諾債務を履行することによって支払承諾債務が消滅することは当然ですが、そのほか、一般に、銀行、取引先間に、原債務の期限未到来の場合にも銀行は保証債務を履行することができ、また、支払承諾債務の履行の方法、金額については銀行の任意に実行されて差支えない旨の約定が存するのが通例です。後者の特約は取引先債権者を拘束するものでないのはもちろんであって、銀行が取引先債権者の同意を得て、保証債務の分割弁済をしたり、一部弁済しかしなかったとしても、取引先としては銀行に対し、委任義務違反として損害賠償の請求をなし得ない趣旨を規定したものと解すべきです。そのほか、支払承諾約定書では、銀行が取引先 に求償するための要件とされている支払承諾債務の履行に関する事前の通知義務を免除する旨の定め、および取引先の銀行に対する通知義務を拡大する約定が存するのが一般であり、この通知を怠ったために銀行が善意で弁済したときは取引先に対して直ちに求償し得ることとし、またこの通知を怠ったことが判明したときは約定違反として銀行の請求により事前求償ができるようになることとされています。
銀行が支払承諾債務を履行したときは、取引先に対して求償権を取得することとなりますが、銀行としては、支払承諾債務を履行する前でも後日履行する虞があるときは、あらかじめ求償権を行使し得ることとしないと、求償権の確保に十分ではありません。そこで、支払承諾約定書等により、法定の場合のほかさらに、当然に期限の利益を喪失する場合と、銀行の請求によって期限の利益を喪失する場合に分けて、あらかじめ求償をなし得る場合を特約しているのが通例です。

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