主債務の時効消滅

保証債務は、主債務とは別個の債務ですが、主債務に附従する性質をもつために、主債務が消滅すれば、保証債務は理由のいかんを問わず消滅するものとされています。このような保証債務の附従性は、保証債務に本質的なものであり、保証が連帯保証である場合にも異なりません。主債務について時効が完成した場合の保証人の責任も附従性をめぐる問題の一環です。主債務につき時効が完成したときは、保証人は、保証債務については時効が完成していなくても、主債務の時効完成の事実を訴訟上主張して保証責任を免れることができるということになりますが、さらに、保証債務自体にも時効が完成し、その後に保証人が時効の利益を放棄するなどの行為があった場合に、なお主債務の時効を援用できるかという意思解釈上または信義則適用上の派生的問題も生じます。

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保証人が時効を援用する方法としては、
(1)主債務者の時効援用権を援用する場合
(2)自ら当事者として援用する場合
(3)保証債務自体の時効を援用する場合
などがあります。ここでで間題となるのは(1)(2)ですが、(3)は保証債務の時効がさきに完成した場合などに実益があります。
保証人は、主債務者がその時効を援用すると否とにかかわらず、自ら前記(1)(2)のいずれかの方法により主債務の時効を援用することにより保証債務の消滅を主張して保証責任を免れることができます。(1)(2)のいずれの方法によるかを区別する実益はあまりありませんが、主債務者自身が援用権を失っている場合には(1)によりえません。しかし、援用権の喪失の効果は保証人に及ばないために、(2)によりうることに異論がありません。保証人が保証債務について時効の利益を放棄していた場合では。判例では、このようなことがあっても主債務の時効消滅を主張する意思がなかったものとはいえないとし、また、主債務者が時効利益を放棄しないかぎりこれを援用できるとしていますが、学説は分かれており、当然に主債務の時効利益放棄の意思を含むといえないとして、判例に賛成するもの、判旨に反対のもの、場合を分けて、主債務者もまた時効利益を放棄した場合には保証人が改めて援用することはできませんが、主債務者が時効を援用した場合には保証人の援用を許すべく、ただ保証人が主債務の時効援用の利益を放棄する意思を認めるに足りる特別の事情があれば、援用することができないと解するものがあります。最高裁では、主債務者たる会社の代表取締役で、個人として連帯保証人となった者が、主債務と保証債務の時効完成後に両債務を承認したところ、その後連帯保証債務の履行を請求されたため保証人として主債務の時効を援用した事案において、このような場合に保証人が主債務の時効を援用することは信義則に反して許されない、と判示しました。信義別を介して保証人による主債務の時効援用権を否定したものとして参考にされるべきです。主債務の時効完成前に、保証債務と保証人の償権者に対する債権とが相殺状態になっていた場合に、債権者が保証人の履行請求に対し相殺を主張したときは、保証人は主債務の時効を援用して自働債権たる保証債務の消滅を主張できるかでは、民法五○八条の解釈に関しますが、判例では、保証人との間で相殺適状を生ずると、債権者は保証人に対してはもちろん主債務者に対しても債権の行使を怠ることがあるために同条を適用すぺきだとして相殺を肯定しています。しかし、学説のほとんどは、保証債務が消滅するのは保証の附従性によるもので、保証債務自体が、時効となった結果ではないことなどを理由として民法五○八条を通用することに反対し、保証人の時効援用を認めています。
保証債務には附従性があり、主債務との間に、その存続についても密接な牽連関係があることは前述のとおりです。主債務の時効完成の場合に限られたことではありませんが、このような関係にある主債務者と保証人とが訴訟上どのように取り扱われるかについては、主債務と保証債務とは別個の債務であるために、債権者が主債務者と保証人とを同時に訴えて共同被告とした場合でも、被告相互の関係には訴訟上の牽連性がなく、通常の共同訴訟です。したがって、例えば、その訴訟で主債務者が消滅時効を援用したにもかかわらず、保証人が援用しなかった場合には、実体上は保証人の債務が消減したことになり、訴訟上は保証人たる被告のためには斟酌されず、主債務者に対する請求が棄却されますが、保証人に対する請求は認容される結果を生じます。これが通説、判例の考え方であり、弁論主義の適用の結果としてやむをえないこととされます。そこで、一部の学説には、これを不合理として、共同訴訟人相互間に補助参加の理由が認あられる場合には、格別の申出がなくとも補助参加関係を認めて他の共同訴訟人にも主張があったとして取扱おうとするもの、共同訴訟人の一人がある主張をした場合に、他の共同訴訟人がこれと接触する行為をしていないときは、その主張が他の共同訴訟人に利益なものであるかぎり、その者にも主張の効果が及ぶと解するものがあります。主債務者と保証人との関係はこれらの見解の適例ですが、前説では最高裁により否定されており、後説を是認する最高裁判例はありません。

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