否認の訴えの性質

日本では通説、判例ともに否認権を実体法上の一種の形成権と解していますが、その否認権は訴訟上行使しなければならないとされるところから、この訴えの性質については、今日なお見解の対立があります。否認の訴えの性質を、否認を宣言する形成判決を求める形成の訴えとする形成訴訟説と、否認の結果生じる権利関係にもとづき受益者や転得者に対してする確認の訴えないし給付の訴えだとする確認、給付訴訟説の両者が基本的な対立関係にあり、中間的な考え方として、形戊の訴えと確認ないし給付の訴えのいずれか、あるいは面者、の選択を認めるものがあります。なお、否認権は形成の訴えによって行使されなければなりませんが、同時にその結果を主張して確認、給付の訴えを併合できるとする説がありますが、これは基本的には形成訴訟説と共通の基盤にたつといえます。

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否認権は形成権とされますが、そのことと、それが裁判上行使されることとが結びつけられたのが、かつての形成訴訟説だといえます。民法上の債権者取消権に関しては、通説、判例は形成訴訟説、ただし確認、給付訴訟の併合を認めるためこの析衷説にあたる立場をとります。ですが債権者取消権と異なり、破産法七六条が訴えのみならず抗弁による否認権の行使を認めたことは、否認権行使の効力が判決の効力としてではなく発生するものであることを前提とするところから、形成訴訟説ないし折衷説とは結びつきにくく、否認による観念的な所有権の破産財団への復帰のみならず、占有、登記さらには換価されている場合の代価等を復帰させるためには給付、確認訴訟との併合が不可欠ですが、形成力が判決の確定によって生じるとされる以上、否認の認容判決確定前にその効果にもとづく給付や確認の判決はでぎないはずであり、面者の併合は認められないとの批判もありました。そこで、否認訴訟では、大審院判例も、その主流は、形成の訴えを不可欠とはせずこの選択 説によっていましたむ。しかし、通説では、これに対しても、抗弁による否認の意思表示ですでに否認の効力を生じていることを認めねばならない以上、それが訴えによって行使される場合も同様でなければおかしいこと、また、当事者間で有効に成立した権利変動を無効とする否認権の行使および効果の発生については慎重、明確でなければならないとしても、相対的無効の効果を生じるにとどまる否認では、形成判決による要はなく、否認権は攻撃防御方法として主張することでたりることを根拠に、確認、給付訴訟説にたちます。下級審判決はおおむねこの通説の立場に従うにいたっています。通説に対しては、形成の訴とするのと確認、給付の訴とするのとでは、否認権行使の効果発生時点の差から生じる種々の具体的帰結の差があること等に着目して、確認、給付の訴えのほか場合によっては形成の訴えを認める実益を肯定する選択説が再び主張されるにいたっています。
確認、給付訴訟説では、攻撃防御方法として行使された否認の結果生じる権利関係を基礎とする確認請求ないし給付請求が訴訟物です。そこで、その訴えの請求の趣旨は、否認された行為の目的たる財産が現有財団中にある場合には、その法定財団に属することの碓認あるいはその権利が相手方に属しないことの確認を求めるものとなります。また、目的たる財産の占有や登記、登録が相手方に移っている場合には、その財産の返還もしくはこれにかわる利得の償還請求や登記、登録を求めるものであることとなります。これに対して、選択説では、形成の訴えを認めるところから、例えば転付命令の否認の場合には、第三債務者に対して否認の効果を明らかにするため、否認の宣言を求めうる点が、確認、給付訴訟説にまさるとします。また、選択説は、営業の一括譲渡行為の否認の場合にも、営業を更生する個々の財産の復帰を求め、あるいはその復帰の個々の確認を求める請求の越旨では適当でないところから、形成訴訟を選択して否認の宣告を求めることで対処しうるとしています。確認、給付訴訟説は、この場合は、当該譲渡行為自体が相対的に無効であることの確認を求めるべきだとします。
確認、給付訴訟説によれば、否認の訴えは、破産管財人が、攻撃防御方法として否認権を行使して、破産者の行為を破産財団と特定の受益者、転得者との関係で相対的に否定し、離脱した財産の財団への回復を求めるものです。そこで、否認の訴えの被告適格者は、否認により直接不利益を受くぺき者、つまり財産回復請求の相手方として具体的に選ばれた破産者の法律行為の相手方または破産法八三条の転得者だけです。そこで、破産者は被告適格をもたず、また債権譲渡行為の否認の場合の債務者のように他の利害関係人がある場合でも、その者は転得者でもなく、被告適格はありません。以上の点では選択説も確認、給付訴訟説と同一結論を認めています。被告適格のある受益者、転得者のいずれを、また多数の転得者がいる場合にそのいずれを被告とするかは管財人が自由に決めます。そうして、これら被告適格者は必要的共同訴訟の関係にはありません。管財人は受益者、転得者の中から被告を選ぴますが、請求の趣旨との関係で被告適格者は限定されてくる面をもっています。例えば甲銀行を被告として、破産者の甲銀行に対する根抵当権設定行為を否認し、抹消登記手続を請求することは、すでに根抵当権が乙に譲渡されてその附記登記のある場合には甲が被告適格を欠く故に許されず、破産法八三条により乙を被告とすべきであるとの判例があります。

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