不作為の否認

否認の一般的要件として、破産宣告前に破産者の財産関係について、破産債権者を害する変動のあること、これにつき受益者のあること、その変動が破産債権者に対する関係で不当性を有すること、があげられます。破産宣告前に破産者の財産関係について、破産債権者を害する変動のあることに関しては、破産者の行為により破産債権者が害されるのが一般的ですが、常に否認の対象が破産者の行為にかぎられるかについて、説がわかれます。つまり破産者の行為にかぎる、破産者の行為にかぎらない、故意否認では破産者の行為にかぎるが、危機否認では破産者の行為にかぎらない、等です。危機否認では破産者の行為にかぎらない説が妥当です。否認の対象となる行為は、法律行為にかぎらず、法律的行為を包含し、公法上のものたると、私法上のものたるとを問わず、また作為、不作為を問わないとされます。しかし、正確には否認されるのは、行為ではなく、法的効果なのであって、行為についていえば、法的効果を結果するような行為は、法律行為にかぎらず、法律的行為も、作為、不作為も含めて全て否認の対象となりうる、といわねばなりません。破産債権者を害するの意味については、破産財団所属財産の滅少、破産債権者間の平等弁済の害せられることがあげられますが、危機否認について前者を含むか否かにつき争いがあります。

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変動が破産債権者に対する関係で不当性を有する事については、行為の不当性を独立の要件として認めるかについて争いがあります。破産者が支払停止後にした儀礼的な贈写等は否認の対象とならず、本旨弁済の故意否認が認められ適正価格での不動産売却の否認が認められることなどは、否認権成否の判断に不当性という実質的評価が含まれることを示すものとして、破産債権者の利益と受益者等の利益との衡量における破産者の行為の評価を認める見解が、近時有力です。
不作為が、一般的に否認の対象たりうることについては殆んど争いがありません。不作為につき故意否認が認められる場合がある点についても争いがありません。つまり破産者が相手方と通謀して散意に債権の消滅時効を完成させたような場合には、否認の対象となるとされます。その根拠は、破産者に詐害の意思があり、その実質において債務の免除と択ぶところがないという点にあります。故意否認であるために、破産者の詐害意思および受益者の害することの認識が必要であり、したがって、破産者と相手方との通謀が必要というわけです。
破産者が単に時効の中断を怠ったにすぎない場合については説がわかれます。通説は、否認の余地なしとし、その根拠を、破産者に詐害の意思なく、消滅時効の完成は時の経過により生じるために不作為と時効の完成との間に因果関係がないこと、あるいは、因果関係のないことのみに求めます。これに対し、不作為も作為と同視すべき効果を生じる場合は否認の対象となり、危機否認においては破産者の行為は必要ないとして、危機否認の対象としては、無意識または過失による場合でも否認できるとする有力な見解があります。
約束手形においては、振出人か主たる債務者で、裏書人が遡求義務者とされます。振出人は、手形の絶対的義務者であるために、適時に支払の呈示をしなくとも、所持人はこれに対する手形上の権利を失うものではなく、満期以後三年の時効にかかるまでに、支払の呈示をなせばよい。しかし、裏書人に対する遡求権を行使するためには、支払呈示期間内に所持人が振出人に対し適法な支払の呈示をなしたが、手形金額の全部または一部の支払が拒絶されたこと、支払拒絶証書作成期間内に支払拒絶証害が作成されたことが必要です。つまり所持人は、支払呈示をしなければ、遡求権を失い、遡求権の喪失が破産債権者を害することは姐らかです。

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否認権/ 不動産売却の否認/ 処分行為の部分的否認/ 救済融資のための担保権設定否認/ 他人の債務保障と無償行為の否認/ 転得者に対する否認/ 手形の買戻の否認/ 不作為の否認/ 否認権行使の時的制約/ 否認の訴えの性質/ 否認権の裁判外の行使/