転得者に対する否認

否認権の対象となる行為は、本来は破産者とその行為の相手方(受益者)との間のものです。しかし対象となる行為によって取得された財産が第三者に移転されると、その第三者(転得者)に対して否認の効果を主張できないとされれば、否認権の制度はその現実的意義を失います。もちろん受益者に対する否認権の効果が絶対的であれば、破産管財人はその効果を転得者に対しても主張できます。しかし現在の通説によれば、否認権の効果は物権的相対的無効であるとされ、否認の相手方以外の第三者に対して行為の無効を主張することはできません。そこで転得者に対して独自に否認の成否を考える必要が生じます。このように破産管財人の立場から考えれば、転得者に対する否認は、否認の実効性を確保するための制度です。しかし逆に転得者の立場から考えれば、破産者と受益者の間の行為が否認されるべきものであったからといって、無制限に自己の地位が覆されては、取引の安全が害されることになります。その面では、転得者に対する香認は、転得者の正当な利益を保護するという性格を持っています。このような点を考慮しつつ破産法八三条は、転得者と破産者の関係、受益者と転得者との間の行為の性格などに応じて、異なった要件の下に否認を認めています。基本となる要件は、受益者をはじめとして、転得者のすぺての前者について否認の原因のあることです。さらに転得者が転得の当時、その前者に対する否認の原因があることを知っていたことが要求されます。しかし、転得者が破産者の親族または同居者である場合には、否認原因の認識についての立証責任が転換され、転得者の側で善意を立証しなければなりません。さらに、無償行為またはこれと同視すべき有償行為によって転得がなされた場合には、否認原因の認識は全く要求されません。これらの要件からみても、否認の対象となる行為は、あくまで破産者と受益者との間の行為であって、受益者と転得者の行為ではないと考えられます。転得者に対する否認とは、受益者に対する否認を転得者に対して主張することです。

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