処分行為の部分的否認

否認権行使の結果に関する破産法七七条、七八条の規定の趣旨から考えると、否認権による効果としては、特定の有体物が存するかぎりこれを物権的に全体として財団に復帰せしめるものというべきであり、このように全体としてその効果が生じるとするほうが、とりわけ不動産の場合には、別除権の目的物件も元来共同担保たる基本の性格は失わないでいるとすべきであることと、これを基礎として破産者の総財産の強制配分を行う手続自体の特質によりよくなじんでいるように思われます。しかし破産手続の本質は一般債権者に共同担保財産を平等に配分するという目的と機能に収束されるといえるために、破産手続上の必要に応じる以上に当該処分行為を絶対的に無効であるとする要請はなく、特に否認訴訟では被告に債務者を加える必要がないために、いわゆる相対的無効に徹する理由があります。

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判例では全体的にみると、詐害行為の取消は処分された不動産の価額より抵当債権額を控除した残額についてのみ成立します。したがって抵当債権額の範囲では成立の余地がない、ということと、この問題と数筆の不動産の処分行為が詐害行為となるとされるときに、彼此採択して債権者の担保権を侵害する部分に関してのみ取消権を行使し得べきや否かは必ずしも直結した問題ではないということと、逆に受益者の得た目的物の全部に取消権が及ぶことがなくその一部にのみ及ぶときは、可分的のものであるときは一部につき、そうでない場合は全部につき取り消すべきであるといわれること、回復措置が不能または困難な事情にあるときには取消権者は取り消した限度で価額の賠償を求めることができること、以上のように要約できます。
最判昭和三○・一○・一一では一棟の家屋の贈与の詐害行為を全部的に取消す形で取消権行使を認めましたが、最判昭和三六・七・一九は家屋の価額のうち抵当債権額を超過する部分についてのみ取消権行使を認め、かかる場合取消の目的物が不可分のものと認められるときは債権者は一部取消の限度で価額の賠償を請求するほかはないとしました。両事件の事実関係に差異があるため一律には論じられませんが、後者が上記要約した旧時の判例を根本的に変改したものかについてはなお疑義を残すと評論を受けています。しかし売却される不動産が性質上不可分であるというだけの理由では詐害行為取消の効果を一部に限局するのを否定する根拠とはなし難いとしたと解することができ、否認においてもこの点は同一に論じなければならないと考えられます。もっとも抵当権の不可分性に対する考慮は棄てることができず、大判大正六・六・七のいうように代金のうち抵当債権者に対する弁済に充てられた数量が大部分であるか否かの認定も両じく看過することはでぎないといわなければなりません。否認の効果が一部にしか及ばずしかも数筆のうちの限定をしなければならないとしたら、結局、否認される対象資産の内容と回復後の破産財団の構成および利害ある関係人間の権利関係に従い、相当性の判断によって決せられることになります。

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