否認権

否認権とは、破産者の手もとから流出した財産を取り戻して、破産財産の増殖をはかる権利ですが、破産法七二条は、この否認権を行使しうる場合を列記しています。そのうちの一つに、破産者か支払の停止又は破産の申立ありたる後に為したる担保の供与、債務の消滅に関する行為其の他破産債権者を害する行為但し之に因りて利益を受けたる者か其の行為の当時支払の停止又は破産の申立ありたることを知るときに限ると定めています。条文は、単に担保の供与、債務の消滅に関する行為といっているだけですが、同じ七二条の四号に、破産者か為したる担保の供与、債務の消滅に関する行為にして破産者の義務に属せす又は其の方法斉は時期か破産者の義務に属せさるものとあるので、この二号にいう担保の供与、債務の消滅に関する行為は、たとえば債務の消滅に関する行為に例をとれば、すでに履行期の到来した債務に対して、その債務の本旨に徒った弁済をする場合を指すと解され、この弁済を略して、本旨弁済とよんでいます。

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支払の停止、破産の申立は、一般に危機時期を示すものと解されています。支払の停止、破産の申立があっただけでは、まだ破産宣告がなされたわけではありませんが、それを目前にひかえた切追した時期を示しています。債務者の資力が豊富な場合、彼がすでに履行期の到来した債務に対して弁済することは、元来が彼の負っている法律上当然の義務であり、また債権者がその弁済を受領することも、法律上認められている権能を享受したまでで他からとやかく批判をうけることからではなりません。しかし、債務者の財産が枯渇し、まさに黄信号が点された段階で、債務者が複数いる債権者からあえて一人の債権者を選び、彼に対して全額の弁済をこころみれば、他の債権者がその債権の全部、または一部について弁済をうけられなくなる事態にたちいたることも明々白々です。このような事態にまで、法律上当然の義務、あるいは権能をふりかざし、一部の債権者に対する弁済を是認することは、債権者間に保持すべき実質的な平等をそこなうことになります。そこで破産法七二条二号は、本旨弁済の場合であってもなおかつ否認しうる途をひらいたのですが、同号では、つづく三号、四号とならんで、支払の停止、破産の申立を否認できる場合の時的基準としているので、これら各号の否認は一括して、危険否認とよばれています。
同じ破産法七二条は、その一号において、破産者か破産債権者を害することを知りて為したる行為但し之に因りて利益を受けたる者か其の行為の当時破産債権者を害すへきを知しらさりしとき此の限りに在らすとして、破産債権者を害する行為も、否認権の対象となしうるとしています。破産者か破産債権者を害することを短りて行為をなしたことを要件としているので、故意否認ともよばれています。問題は、ここにとりあげた本旨弁済もここにいう詐害行為のなかに含まれ、したがって本旨弁済が故意否認の対象となるかです。これが本旨弁済の故意否認とよばれる問題です。判例は、早くからこの問題を肯定的に解し、学説のなかでは一時否定説が支配的でしたが、最近では肯定説も有力になっています。

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否認権/ 不動産売却の否認/ 処分行為の部分的否認/ 救済融資のための担保権設定否認/ 他人の債務保障と無償行為の否認/ 転得者に対する否認/ 手形の買戻の否認/ 不作為の否認/ 否認権行使の時的制約/ 否認の訴えの性質/ 否認権の裁判外の行使/