破産管財人の法的地位

破産宣告があると、それと同時に、裁判所によって破産管財人が選任され宣告によって破産財団を構成する破産者の財産の管理処分権が破産管財人に専属することとなります。そこで破産管財人は、破産財団に属する財産の管理、換価をはじめとして、そのほか、破産財団に関する訴訟の当事者となり、否認権を行使し財団債権の弁済をし、さらに破産債権の確定に干与し、それに対する配当を実施するなど、破産手続上、それを遂行する中心的機関として、広範な職務権限を持っています。しかも、破産管財人は裁判所の監督に服し監査委員または債権者集会の監視のもとにおかれるというものの管財人は、その職務の執行に際し裁判所の一般的指揮命令に服するものでなく、ただ法定義務の範囲内においてその監督権の発動にもとづく指揮命令受け、また重要な管財行為につき監査委員の同意または裁判所の許可を必要とされるだけであって、原則として、裁判所とは独立に、破産者、債権者などの利害関係人の利害とは難れて中立的た立場で独自にその職務権限を行使できめ地位に立ちます。そして管財人は、善良なる管理者の注意をもってその職務を行うことを要し、これを怠ったときには、利害関係人に対し連帯して損害賠償の責めに任じなければならないものとされます。そこで、以上のように、破産管財人は、破産手続を遂行する中心的機関として、裁判所から独立し、中立的な立場で、破産手続の目的を達成するため、破産財団の管理処分権の付与とともに、その管理、換価、配当などにつき広範な職務権限を行使し、それを適切に行うぺき職責を持ちますが、このような破産管財人の破産手続上の地位が法律上いかなる資格にもとづいて認められているものとするのか、破産管財人の法律的地位の問題がまず破産理論のうえでとりあげられます。

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破産管財人の法律的地位をどのようにとらえるかについて従来の見解として、大きく代理説、職務説、財団代表説の三つに分けることができます。
代理説では管財人は、破産者または債権者の代理人として、その破産手続上の職務権限を行使するものとする説です。そのいずれを代理するかによって、破産者代理説と債権者代理説とに分けられ、後者の一つとして債権者団体代表説があげられます。さらに、その両者を折衷するものとして、債権者団体代表および破産者代理説があります。債権者代理説は、破産債権または破産差押権の理論と結びついて古くからドイツにおいて主張されたもので、管財人はただ債権者の利益のためにのみ、その職務権限を行使するものでなく、利害関係人全体の利益保護のために存在するものであることから、現在では過去の学説とされています。そこで、管財人を破産者の法定代理人とする破産者代理説が、ドイツの学説においては、なお有力に主張されます。しかし管財人は破産者に代って破産財団の管理、換価、配当などを行うものでなく、破産者、債権者とは独立の管理機関として、破産者の意思に反してもその職務を行うものであることなどから、ドイツにおいても、それに対する批判があり、日本においては現在の学説でこれを支持するものは少なく、また債権者団体代表および破産代理説についても同様のことがいえます。
職務説では管財人は、裁判所の選任にもとづき、法律上の職務として、破産財団に関する管理処分権能を自己の名において行使する者であるとする説です。これはさらに管財人は、国家の執行機関としてその職務権限を行使するものとする国家機関説と、管財人は、裁判所の選任により、破産手続上、法定権限にもとづいて職務を遂行するものとして、一種の国家事務を委託された私人と解する私法上の職務説とに分けることができます。そこで国家機関説およびその亜種ともいえる国家機関説兼債権者団体、破産債務者代表説はともかくとして、この私法上の職務説は、ドイツの判例の一貫してとるところであり、日本の大審院判例も、この見解をとっているものといえます。
財団代表説では破産財団に目的財産としての法主体性を認め、管財人はその代表者または代理人であるとする説です。これは、日本における現時の最有力説ともいうことができ、ドイツにおいても、これが有力に主張されています。なお以上とは破産財団自体に法人格を認めない点では異なりますが、同一線上にあると考えられるものとして、近時、利害関係人によって構成される権利能力なき社団たる破産団体なるものを認め、この団体の代表者として破産管財人をとらえようとする見解があります。
管理機構人格説では管財人の意義を破産財団の管理機構としての管財人とその担任者としての管財人にわけ、管理機構としての管財人の面からみて、管財人に破産財団の管理処分権の帰属する法主体としての地位を認めようとする説です。最近、破産財団代表説と私法上の職務説を止揚するものとして、強く提唱される見解です。
破産管財人の法律的地位をめぐって、以上のように見解が対立していますが、破産管財人が破産者、債権者などの利害から離れて中立的な機関としてその職務権限を行使する点からみて、代理説はとりえず、また管財人は、裁判所によって選任されその監督に服するものとしても、その行為を権力的に行うものでなく、私法上の管理処分権能に基づきその職務を行うものであることから、職務説のうち、国家の執行機関とみる見解をとることはできません。そこで現在における学説対立の焦点としては、私法上の職務説、財団代表説および管理機構人格説の三つにしぼられます。そこで破産手続における諸関係を統一的に説明しようとする点では、財団代表説を支持するものも多いのですが、ただ単に破産手続上の技術として、破産財団たる観念のもとに破産的清算の対象として管財人の管理処分のもとにおかれるにすぎない破産者の責任財産の集合体に権利主体たる地位を認めることができるのかどうかです。さらに破産における諸関係の説明のために、果して破産財団に権利主体 として法人格を認める必要性があるのかどうか疑問であり、卒直に破産財団を破産者の責任財産の総体としてとらえ、それは、破産手続上、管財人の管理処分のもとにおかれ、破産者の管理処分の制限された破産者の財産であって、それ以上のものでなく、破産者の権利の客体にすぎないものと解するのが妥当です。さらに私法上の職務説と管理機構人格説についてみれば、そのいずれもが、破産財団それ自体にではなく、破産法上認められた管理処分権にもとづき、その財産の管理機関として、管財人に独立の法主体性を認めようとする点で一致しますが、後者がさらに進んで、管理機構としての管財人に法人格まで認めることで前者と大きく異なるものといえます。ここで管理機構人格説が、管財人にその管理処分の帰属する財産の権利義務の主体としての法人格を認めるという趣旨であれば、財産代表説に対すると同じ疑問が提出されます。要は管財人に法主体性が認められるとしても、その管理処分の対象たる財産の権利義務の帰属主体たる地位まで認められるわけでなく、破産管財人は、破産法により、破産者の財産関係の処理のため、破産財産に属する破産者の財産につき管理処分権が与えられた独立の管理機関として、それに破産手続上独立の法主体たる地位が与えられたものとみることで十分ではないかと考えられます。

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