破産の取消し

破産原因その他の破産の要件が具備すると認めるときは、裁判所は、決定をもって破産を宣告します。この破産決定に対しては利害関係人は即時抗告をなすことができます。この抗告審は事実審です。したがって抗告裁判所は、その審理終結時を標準として破産原因や破産能力その他破産宣告の要件を判断すべきことになります。破産宣告後に破産原因が消滅すれば、抗告裁判所は、決定をもって原破産決定を取り消さなければなりません。問題は、破産宣告後、破産を申立てた債権者の債権が消滅した場合です。申立人が債権を有することは申立人としての適格であるために、申立人の債権は、破産宣告の裁判をなす当時に存在することを要します。したがって第一審の破産申立却下決定に対する抗告審で、申立人の債権の存在が認められる場合には、抗告裁判所は、破産宣告をしなければなりません。これに対し申立人の債権が破産宣告決定の確定後に消滅したとしても、これは破産宣告の効力には影響を及ぼしません。したがって破産宣告がなされたのち抗告審の裁判前に、弁済等によって申立人の債権が消滅した場合、またはこれにより破産原因が解消した場合、すでに開始された破産手続はどうなるかという問題に関することになります。

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この点に関しては二つの学説が対立しています。第一は、訴訟における原告適格は訴訟要件として上訴審においても具備することを要するという民事訴訟法の原則を適用して、申立人の債権が消滅すれば破産宣告後といえども申立人の申立権は消滅することになるために、抗告裁判所は、第一審の破産宣告を取り消して破産申立を却下すべきであると説く見解、他は、破産は宣告時からその効力を生じ、直ちに総債権者のために一般的執行である破産手続が進行するため、申立人の債権の消滅によって破産原因が解消したと認められる場合のほかは、抗告裁判所は、破産宣告をを取り消すべきではないと説く見解がそれです。後説でも、抗告審の裁判までに破産債権の届出をする者が全くないかまたは債権届出の全部が取り下げられたような場合には、破産宣告を取り消すべきであるとしています。この後説が現在の通説です。
この点に関する判例には一貫性がみられません。つまり旧法下のものではありますが、債権者の申立によってなされた破産宣告を維持するには破産裁判の確定にいたるまで申立債権者の債権が現存することを要するとし、これは学説によっても支持されていました。しかし現行破産法一一二条の解釈としても、破産申立人の債権が消滅すれば申立の適格を失うため、すでになされた破産宣告決定を廃棄し、破産申立却下に対する抗告権者は申立人だけであって届出債権者には抗告権なしとした判例、また債務者は支払不能ではないとして破産決定を取り消し、破産申立を棄却した決定に対し届出債権者が抗告した事件で、破産申立を棄却した決定には破産申立人だけが抗告権をもつとした判例がありました。その後大審院は従来の見解を変更して、次のように判示しました。
破産裁判所に債権を届出でたる者は当該破産手続に依りて配当を受け得べき地位を取得したるものなるを以て、破産宣告にして廃棄せらるるときは、自然斯る地位を喪失するに至り、其の裁判に付利害関係を有すること明白なるを以て、破産法一一二条に所謂其の裁判に付利害関係を有する者としてこの抗告を為し得るものなること勿論なり。というのです。 また破産手続の進行中調停が成立し、その結果申立人の債権が消減した場合につき、傍論としてではありますが、破産申立は却下すべきであるとした判例がありますが、これは破産宣告がなされない間の事案である点に注意すべきです。その後、債権者が破産の申立をする場合には破産決定確定時まで申立債権の存在が必要であるとして、破産決定に対する抗告棄却後に債務者が申立債権者に弁済した後にした再抗告を認めて破産申立を却下した判例があります。この判旨は、前掲昭和3年10月13日の大審院決定とは抵触しますが、本件では、他の債権者の債権届出がすべて取り下げられているので、理由としてはともかく結論としては肯定しうる因みにこの種の再抗告は現在では認められません。これを要するに、この間題に関する判例の立場は、理論的には必ずしも明確な一貫性をもったものとはいえません。
これを要するに、問題は、破産申立の適法要件としての申立債権者の債権の存在を破産手続上どのように位置づけるかです。民事訴訟法上の原則からすれば、抗告審は事実審であるために、一般には、その審理終結時を標準として、破産原因や破産能力その他の破産宣告の要件が判断されることになります。したがって抗告審の審理終結時に申立人の債権が弁済、免除等によって消滅していれば、申立の適格を欠くことになり、一部の学説、判例の説くように、原破産決定を取り消して破産申立を却下すぺきことになります。しかし破産は宣告の時から効力を生じ直ちに総債権者のために一般的執行たる破産手続が進行し、またそれゆえに破産手続に関する裁判については広く利害関係人に即時抗告権が認められる点を考えると、この原用をそのまま適用することは許されないものと解され、この点通説、判例の説くところが正当であるというぺきです。もっとも申立人の債権の消滅により破産原因が解消したと認められる場合には、抗告裁判所は、第一審の破産決定を取り消して破産申立を却下すべきです。
破産取消決定は告知によって確定し、直ちにその効力を生じることになりますが、これによって破産決定は遡ってその効力を失うことになります。その結果、破産宣告の際選任された破産管財人も遡ってその地位を喪うことになります。
前述したように、破産の取消により、破産管財人もその地位を失うことになりますが、その在任中管財人のなした破産財団に関する行為は、破産の取消しにもかかわらず、その効力を保持するものと解すべきです。これは取消の遡及効からすれば例外ですが、取引の安全を保護し第三者に不測の損害を生ぜしめないため通説、判例の一致して認める結果です。したがって破産の取消により破産者の法律行為は復活しますが、それが管財人の行為と接触する場合には、その時期の前後にかかわらず、管財人の行為の方が優先するものと解すべきです。

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