破産と貸倒金の処理

貸倒金処理は、もともと企業間の取引に潜在的に存する債権回収の不確実性と企業会計の一般原則である真実性、保守性、損益対応の原則等からの会計的分野ですが、これを商法、税法等がその法の指向する目的にしたがい、それぞれ法律的規整を加えています。貸倒金処理にかかわる会計上の処理は、大別して、貸倒引当金、債権償却特別勘定、貸倒損失の三つとなります。これついての法的規制は、商法三三条の会計慣行の尊重、同三四条の取立不能見込額控除、同二八七条の二の特定損失の引当金計上等の趣旨と、法人税法二二条、五二条等の外、基本通達第九章第一節に具体的に定められています。
債権償却特別勘定は、相手方に対する債権が、いまだ確定的に貸倒損失としての処理をするにはいたりませんが、一定の事由により、一定の金額を債権償却特別勘定として、当該決算において貸倒損失と認めるもので、貸倒引当金と確定的な貸倒損失との中間的な処理であるといえます。

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貸倒損失は、現実に発生した不良債権を、どのような事実をもって確定的な損失としての計上を認めるか、ということで会計的分野と法律、特に法人税法分野の接点の問題です。
A企業が当期利益税引前3000万円であるとして、売掛金債権のうち5000万円が回収見込みがないのに、その額を資産計上すれば、その利益は真実のものとはいいがたく、反対に、回収見込みがあるのに5000万円を損金処理する場合は、利益計上にいたらないことになります。
商法の取引安全、債権者、株主保護の立場からは、いずれも一種の粉飾に類し、税法の面からは、課税の不公平と税収 財源に影響します。したがって、貸倒損失処理も、その企業の会計処理上の自主的判断が建て前ではありますが、一定の基準を設定されているわけです。貸倒金としての認定について、法人税課税上紛議を少なくするため、前記法人税基本通達で、債権償却特別勘定の認定基準と同様に、詳細な基準を定めています。
裁判例としても、貸倒損金計上を認め得る基準は、公正妥当な会計処理の基準にしたがい、債権者が債権回収のための真剣な努力を払ったにもかかわらず客観的にみて回収見込みのないことを要し、単に償務者の所在不明、事業閉鎖、刑の執行等の外的事実のみでは、直ちに貸倒れと認めることはできないとし、一般例として会社更生法の更生計画の認可決定、会社整理計画の決定、債権者集会の協議決定等により切捨てられた債権額や、債務者の資産状況、支払能力等からみて回収不能が明らかになった場合等としています。
また、債務者に事業閉鎖、行方不明等の客観的事実が生じていなくても、営業状況等を綜合考慮したとき、事実上回収不能と認められる場合も貸倒れに含むとして若干緩和したような判例もあります。
会計上の処理を行ったときも、債務者との関係でその債権の請求権は、特別に債権放棄や免除等を行わないかぎり、消滅等に影響はありません。反対に、法律上の債権放棄等により債権が消滅したとしても常に貸倒損失処埋が認められるとはかぎりません。それは、その債権放棄が贈与等と認められる余地もあるからです。裁判所においても債務者との間に特殊関係があり、債務者の他の債権者は債権放棄しておらず、かつ、引続き債務者は他の借入金の返済を行っていること、回収の努力を怠っていること等から、債権放棄を贈与として寄付金に算入した税務官庁の処理を認めた例があります。

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