破産申立の取下

破産の開始は申立てによることを原則とし、申立権者も広く認められていますが、一方で法人の理事または清算人のようにあるいは相続財産における相続財産管理人、遺言執行者、限定承認もしくは財産分離のある場合の相続人のように、すぐれて公益的見地から破産の申立義務を負担せしめている場合があります。このような破産申立義務負担者から、その履行として破産を申し立てた場合には、これを取り下げることはできませんが、破産申立てが権利としてなされる一般の場合には、被申立て人の同意を要することなく、自由に取り下げることができると解されます。
民事訴訟における訴えの場合は、原則として判決の確定にいたるまで、その全部または一部を取り下げることができるので、この原則からいえば、破産申立ても破産宣告の確定するまでは取り下げることができるとの解釈も可能であり、そうした見解もあります。これに対し、判例では、破産の宣告は破産債権者一般の利益のため、団体的関係を成立させるのだから、破産申立人の任意にこれを除却させえないとし、したがって、破産宣告の裁判があれば取り下げえないとの見解を示しています。

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多数の見解も破産宣告は、総債権者の利益のためにその効力を生じるものであるとして、前記判例の結論と同じく破産宣告後の取下を認めない立場をとっています。破産制度の趣旨を考慮すれば、破産申立を取り下げる時期は、多数説のように破産宣告前にかぎり許されると解するのが妥当です。なお、破産法一○八条は、破産手続の性質に反しない範囲で、民事訴訟法の規定が準用されると解すべきです。
破産宣告後の破産の申立の取下は認めえないのですが、その理由として手続上の問題があります。もし、仮りに破産宣告の確定にいたるまでの間、破産申立ての取下を認めることになると、破産決定に対する即時抗告の申立は破産手続を停止しないために、破産手続はそのまま進行します。つまり破産執行は破産宣告を前提として、以後債権者の金銭的満足を究極の目的としながら、そこにいたる各種の手続、破産財団の占有、管理、換価の手続、破産債権の届出および確定の手続、債権者集会の決議の手続を発展的に順次経てゆく執行手続です。また、破産の同時廃止の場合を除いては当然後の手続を予定しており、破産宣告と何時にあるいは、直ちにまた遅滞なく各種の処分や処置が行われるのです。このような手続進行の途中で破産申立が取り下げられ、その取下の効果として、すべて覆えされることになれば、手続の安定性を害することはもちろん、多くの法律的障害を招来することになります。この点から見ても、破産宣告後の取下は許されないと解すべきです。
申立の取下により、当初から申立がなかったものとみなされるために、申立てによって、破産債権について生じた時効中断の効力も生じなかったことになります。一旦破産申立を取り下げても、再度申立ができることはもちろんです。申立の際に、破産財団所属の財差に対してなされた物的保全処分の効力については若干問題があります。破産申立の存在が保全処分の前提であるために、取下の遡及効によって保全処分もまた当然失効するかとも考えられますが、いわゆる破産保全処分は、特定の債権者の利益のためのみにされるものではなく、総債権者の利益を考慮してなされるものであるために、申立の取下によって当然に失効すると解すべきではありません。したがって、破産保全処分の取消についても、申立て債権者の申立によってなされるべきではなく、職権によって取り消すべきです。
このように解すれば、破産財団の散逸防止という保全目的にも沿うことができるというべきです。

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