破産申立の審理

破産の申立てがあると、破産裁判所は、申立の適否および破産開始要件の存否について審理します。その際に口頭弁論を開いて審理するか否かは、破産裁判所の裁量にまかされています。破産事件の審理について口頭弁論が任意的なものとされているのは、次の理由によります。口頭弁論は、手続の適正という点ではすぐれていますが、時間と手間がかかる欠点があり、迅速処理を必要とする破産申立事件の審理方式として適当でないからです。一旦口頭弁論を開いた場合でも、途中から書面審理に切り替えることができます。通常は破産申立事件について、口頭弁論が開かれることはなく、口頭審尋により、関係人に陳述する機会を与えます。審尋手続は、非公開です。破産申立事件の審尋では、性質上債権者の審尋よりも債務者の審尋に重点がおかれます。口頭審尋には、裁判所書記官が立ち会い、審尋調書を作成します。もっとも、審尋期日に関係人が単に答弁書その他の準備書面を提出するにすぎなかったり、審尋の結果を後日書面にして提出することになったりした場合まで調書を作成する必要はありません。

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裁判の基礎資料の収集については、職権主義がとられ、破産裁判所は、職権で必要な調査をすることがでできます。この職権調査は、職権による事実の探知と職権証拠調を意味します。したがって、破産裁判所は、関係人の主張しない事実を斟酌でき、争いのない事実にも拘束されません。破産事件では、裁判所は、多数の関係人の利害を公正に調整するため後見的に手続に介入する必要があるからです。
事実の調査の方法として、破産裁判所は、証人尋間、鑑定、検証、調査の嘱託などをすることができます。これらの証拠調をする場合、その方式は、いわゆる自由な証明で足りるとするのが通説および実務の取扱です。自由な証明は、民事訴訟法の定める手続によらない証拠調で、一般に迅速性と柔軟性の要求される非訟手続や決定手続において用いられます。通説および実務の取扱によると、破産裁判所が各証拠調をどこまで民事訴訟法の規定に準してするかは、その裁量によります。関係人が証拠調の申立をする場合にも、必ずしも民事訴訟法の定める方式によることを要せず、破産裁判所も、いちいち申立ての採否の決定をする必要もありません。証拠調に関係人の立会いを認めるかどうかも裁量によります。もっとも、裁判所の判断の基礎を明らかにするため、証人尋問調書等は必ず作成すべきです。ただ、破産原因等に争いのある事件については、関係人の立会いを認め、できるだけ民事訴訟法の定めるところに近い方式で証拠調をするのが適当です。なお、破産裁判所の裁判が口頭弁論を経ずに決定でなされることに対しては、裁判の公開を定める憲法八二条に違反しないかとの問題を生じさせますが、破産宣告決定は、債権者債務者間の実体的権利義務の在否を確定するものではないために、口頭弁論を経ずになされても憲法八二条に違反しないと解されています。
破産申立についての審理の対象は、形式的要件としての破産申立の適法要件と実質的要件としての破産開始要件の存否です。形式的要件は、申立の適式性、申立人の当事者能力、訴訟能力、法定代理権および訴訟代理権、裁判所の管轄権、債務者の破産能力、手続費用の予納などであり、実質的要件は、破産原因の存在、破産障害事由の不存在です。形式的要件を一つでも具備しない場合には、申立を不適法として却下すべきであるために、審理の順序は、形式的要件を審査し、その後実質的要件の客査に及ぶべきです。なお、同一の債務者に対し、数人の債権者から個別に破産申立がなされているときは、合一確定の必要があるために、審理手続を併合して裁判を行ないます。
債権者の申立による破産事件の審理は、おおむね次のとおり行われています。申立債権者が予納金を納めると、破産裁判所は、審尋期日を定めて、債務者と債権者を呼び出します。その際に債権者提出の申立書および書証の副本を債務者に送達し、債務者に主張立証があれば審尋期日までに書面で申出るよう促します。債務者に対する呼出状には、必ず本人が出頭すべき旨を附記し、債務者が期日に出頭すれば、口頭により債務者を審尋して、意見や弁解を述べる機会を与えます。このとき、債務者が破産原因等について争っても、そのまま審尋手続きとして弁解を聞き、債務者に宣誓させて証拠調をすることは通常していません。この債務者審尋の結果と関係人提出の書証から破産開始要件が認められれば、破産宣告決定をします。債務者が出頭しないときは、再度審尋期日を定めて債務者を呼び出します。この二回目の期日にも債務者が出頭しないときは、これに代わる証人調などをして破産宣告をすることになります。債務者審尋が必要であるのに、債務者が正当な理由もなく不出頭を重ねるときは、債務者を引致して審尋します。債務者が病気などで出頭できないときは、臨床審尋を行うこともあります。証拠調を行う場合に審問の方式としては、裁判官による尋問により、交互尋問方式によることは少なく、次に債務者が自ら破産申立をするいわゆる自己破産の場合には、破産裁判所は、できるだけ早い機会に債務者を審尋し、その結果と債務者提出の書証により破産宣告をし、破産財団に属すべき債務者の財産を破産管財人の占有に移します。これによって、倒産の混乱時期における一部債権者による取りつけさわぎから債務者の財産を保全します。
債権者のなかには、破産宣告を得て全債権者の間で債務者の財産の公平な清算をすることを目的とするよりも、債務者に対して自己の債権の弁済を迫る考えで破産申立をする者がいます。破産手続における配当の実施までにはある程度時間がかかるために、破産の申立てをした債権者ができれば債務者と示談して自己の債権の満足をはかろうとすることは、一概に責められません。このような意図は、むしろ破産申立をするすべての債権者に共通するものです。しかし、債権者が破産申立てを債務者に対する威嚇の手段として用いていることが顕著に認められるときは、申立権の濫用として、その申立は却下を免れません。
申立の適否に関する形式的要件のうち、申立書の必要的記載事項や印紙の不備については補正を命じ、応じないと申立書を却下します。また、破産裁判所の命じた手続費用の予納がなければ、申立は棄却されます。債権者からの破産申立の場合は、申立時に債権の存在および破産原因たる事実を疎明しなければ、申立は不適法であるから却下されます。他の適法要件、当事者能力、訴訟能力、法定代理権および訴訟代理権、管轄権、破産能力などの存在については、証明を要します。なお、前記のとおり債権者は破産申立時に債権の存在を疎明しなければなりませんが、破産宣告時にもその申立債権が存在することが必要であって、申立後に弁済等により申立債権者の債権が消滅すると、申立ては却下を免れません。破産宣告時における申立債権の存在についても申立時と同様に疎期で足りるとするのが通説および判例です。これに対して、破産宣告によって受ける債務者の不利益を考慮し、他の適法要件と同じく証明を要するとする見解もありますが、通説およぴ判例の説くように、申立債権者の債権の存在も、破産宣告によっては確定されず、他の債権者の債権と同様宣告後の債権調査手続を経て確定されるのであり、破産原因があるときは多数債権者が存するのが常態であるために、当該申立債権者の債権にこだわる必要はないと思われます。もっとも、申立債権者の債権が債務者に対する債権の大部分を占め、その存否が破産原因の存否を左右するような場合は証明が必要ですが、この場合は、申立債権の存否が単に申立資格の問題にとどまらず証明を要する破産原因の有無に直接結びつくことになるからです。このように、申立債権者の債権の存在について証明が必要である場合に、申立債権の存在が債務者によって争われると、当事者に対し債権の存否を確定する訴訟の提起を求め、その判決確定まで破産申立についての審理を事実上停止する取扱をすることが実務上多くなっています。破産裁判所も、この点について審理をすることができないわけではありませんが、破産裁判所の裁判では、申立債権者の債権は既判力によって確定されないために、前者の取扱のほうが妥当と考えられます。
破産原因たる事実の存在については、破産宣告時その証明を要すると解されています。かつては手続の迅速の要請から疎明で足りるとする説もありましたが、破産宣告の重大性にかんがみ、相当ではありません。この実質的要件の審理の過程では、通常、破産原因の存否に関連する事項にとどまらず、破産宣告後破産財団を組成すべき財産の内容や破産宣告後破産管財人の否認権行使の対象となりうる債務者の行為をも取り調べます。これは、破産宣告後における能率的な事務処理のための資料を得る必要があるからです。

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