破産申立の時効中断

破産手続参加、つまり破産債権の届出については、時効中断の効力が認められていますが、これに先行する破産申立につき、時効中断の効力が認められるか否かは、明文の規定もなく、解釈上争いがあります。破産法上における破産申立の実質は、総債権者の利益のために破産手続の発動をもとめる行為と考えることができますが、対申立人たる破産債権者との関係においては、破産申立が一種の権利主張行為たる実質を有するという意味において破産手続参加と区別する理由がないとして、あるいは、破産申立は債権実行のために債務者の総財産の差押を申請する行為に他ならないとして、破産申立に時効中断の効力を認めるのが通説です。また、判例も債権者のする破産宣告の申立は債権の消滅時効の中断事由たるべき裁判上の請求にあたるとしています。

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前記通説によれば結論として破産申立に時効中断の効力を認めるものの、その理由づけは異なります。通説におけるひとつは、一般的時効中断の本質論つまり明瞭確実な権利主張の型態をとるかぎりにおいて永続した事実関係の尊重をくずすという意味で、破産申立に裁判上の請求としての明確な権利主張性を認め訴え提起と同列に扱い、あるいは破産手続参加と両列に扱う立場です。以上の理論構成に対しては、破産申立人たる破産債権者の債権は、申立の段階で存否の確定を受けるわけではなく、宣告後の届出、調査、確定という一連の手続きを経てはじめてその在否が明確にされるのであって、その意味では、破産手続参加がそれぞれの債権者の債権実現のための段階として時効中断事由とされていることは理解できますが、破産申立自体について時効中断を認める根拠には乏しいといえます。そして破産手続は非訟的要素の強い手続であり、申立があればその取下げは破産宣告の時までしかできないとされ、あるいは、申立債権については証明を要せず疎明をもって足りるということから、その実質は破産手続参加や裁判上の請求と同視できないということもできます。そこで、以上の批判はともかくとしても、前述の理論構成とは異なった、差押申請が時効中断事由とされている点と破産申立による昨効中断を説明しようとする考え方が生じてきますが、差押が時効中断事由とされているのは、差押という公の記録にのこる行為によって開始した手続が取り消されないかぎり、結局は強制執行の実現という事実によってその根拠、目的たる権利の存在について公の記録が存在し、その証拠が成立するにいたるからであり、破産申立も単に債務者の総財産の差押という効力を生じるだけであるから、破産宣告によって開始された一種の強制執行手続によって生じた権利存在の証拠によって差押におけると同様時効中断の効力を生じるとしています。この考え方によれば、時効中断は、破産宣告により確定的になるのではなく、届出、確定によりあるいは訴提起、判決により債権の存在が確定され、配当、弁済という事実により確定的となります。
破産申立を裁判上の請求と解すれば、訴え却下の場合に時効中断の効力は生じないために、破産申立が却下されれば時効中断は確定的とはなりません。破産申立を破産手続参加に準じて取り扱う見解および差押と同視する立場にたっても、同様の結論になると考えられます。
破産申立を裁判上の請求と同視しあるいは破産手続参加に準じて取り扱う見解によれば、破産申立の取下げにより時効中断の効力は確定的とはならず、差押と同視する立場によるも、差押が取り消された時に準じて時効中断の効力はやはり確定的にならないこととなります。
以上のように破産申立があるにしても、ただそれのみでは時効中断が確定的とならないとされる反面、その申立が取り下げられた場合には、いまだ権利の不存在が確定されたわけでもなく、権利者が権利の上に眠っていたわけでもありません。そこで、一旦破産申立をなしたがぎりにおいては、それに時効中断の効力を認めることに対応して破産申立の取下げがあった場合にも実質的考慮を図る余地が考えられます。近時の最高裁判例によれば、破産申立書に記載はないが支払不能を明らかにするために提出した計算書に記載した債権につき、破産の申立が申立の適法要件として申述された債権につき消滅時効の中断事由となるのと同様に、一種の裁判上の請求として、当該権利の消滅時効の進行を中断する効力を有するとした上で、のちに破産申立が取り下げられた場合には、破産手続上権利行使の意思が表示されていたことにより継続してなされていたものと見るべき催告の効力は消滅しないとしています。したがって、破産申立の取下げ後六ヶ月以内に他の時効中断の方法をもって、時効中断を確定的にすることができます。なお、破産申立の却下あるいは破産取消の場合にあっても、同様に解されます。

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