私的整理と破産

私的整理とは、経済的破綻に陥った債務者が原則として多数の債権者中の各債権者と個別的な和解を試み、成立した各個の和解案を一体として整理または清算を内容とする法的整理によらない裁判外の和解契約をいいます。総債権者を相手方としてする和解契約は、再建もしくは清算に同意する各債権者の頭数だけの個々の契約か、あるいは総体として一個の契約とするか問題はありますが、前者により、債権者の頭数に等しい個々の契約が、統一体としての債権者全体の一個の和解契約を構成していると解されます。
法的整理つまり破産手続、和議法による和議手続、会社更生手続、商法上の整理と私的整理をそれぞれの長所、短所を比較すれば次のとおりになります。
私的整理は法的整理に比較して次の長所を有しています。つまり簡易性、迅連性、高配当性、密行性、融通性、併用性、協調性をあげることができます。簡易性とは、債権届出から配当まで短時間で終り法的期間の猶予もなく、複雑な機関の設置も予定されず、官報による公告など公開が予定されない閉鎖的手続で密行的であり、何時でも法的手続、しかも破産でも和議でも選択できる意味で融通的であり、再建と清算の二者択一的でなく場合によって両者を併用することもあり得る意味で併用的で、しかも債務者の協力がなくてはできず、かつ債務者の協力が私的整理成功の鍵である意味において協調的です。これに反し任意性、非拘束性、不平等性がその短所としてあげられます。任意性とは、手続に参加するかどうかは債権者の自由意思にかかり、参加しないからといって不利益を受けず、手続きに参加しようとしまいと何らの拘束力がない点で非拘束的であり、個々の債権者間に不平等な取扱も許されるなどを特色とします。

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債権者会議は法的整理の債権者集会に相当する会議体であって、私的整理の手続開始、進行、終了にあたって意思決定する債権者集団の最高機関です。法的整理における債権者集会においては、債権者集団のために設けられた必要的機関であるため、その職務の範囲は法律の規定により定まり、また集会の運営、決譲も法定され、かつ裁判所の指揮のもとに行なわれなければ効力がありませんが、私的整理における債権者会議は、招集から会議体の運営、議決権行使方法、定足数についても何の規定もありません。しかし実務上は一定の規律のもとに運営されていて債権者委員の選任、債権者委員長の互選を通して運営をはかり、決議は多数決をもってきめられるなどの慣行があります。債権者委員とは債権者会議において選任される業務執行機関で、債権者会議の決議を実行に移し、かつ債権調査、債務者財産の処分、再建計画の立案、配当などを行ないます。法律上は債権者会議がその権利行使を債権者委員会に委任し、委任事務の処理として職務を遂行する場合と、債権者会議のために清算もしくは再建を目的とする受託者となる場合があります。
私的整理の法律上の性質を再建もしくは清算に同意する各債権者の頭数に相当する個々の和解契約の連合体と理解すれば、各個債権者と債務者との和解契約の複合を予定せざるを得ず、かつ各個の和解契約は個々独立の契約であることを肯定しなければなりません。さらに個々の債権者の契約と全体のそれとの関係、すなわち債権者会議の決譲を債務者が承認した場合、その決議に反対した債権者、あるいは行方不明の債権者など和解契約成立に至らない債権者と債権者会議の決議との関係をいかに理解するか問題です。当然、多数決の拘束力との関係において、法的手続のように債権者集会の決議に法的拘束力があることの類推を認めない場合においてです。
私的整理を個々の債権者の独立した和解契約とそれを含む統一的な意思を形成する債権者の連合体と解すれば、個々の債権者と債務者との和解契約と全体の債権者と債務者との和解契約は区別して考えられます。したがって不同意の債権者と行方不明の債権者を除いても全体としての和解契約の成立は可能です。つまり全体としての和解契約に反対の債権者の存在を予定してもなおかつ連合体として和解契約は可能であり、その範囲において連合体としての多数債権者の議決に拘束力を認める理論が考えられます。ただ連合体の数は大部分の債権者が参加しなければなりません。大部分とは、債権者および頭数において相当な程度の必要があります。さらに何をもって相当な程度とし私的整理が成立したとしてある程度の拘束力を認めるかは、事案の性質によって異なります。
私的整理における債権者会議の決議に拘束力を認める立場によれば、まず、決議をした債権者会議の構成が相当な程度の債権者の出席のもとに開催され決議されたことが必要です。具体的に相当な程度とは数額的に全債権者の過半数と4分の3以上の債権額を指します。債権者会議において、この数額の確保が得られれば私的整理は成立したものとして、債務免除を有効とし、その余の残額を配当して私的整理を終了させることができます。この場合、免除決議に反対の債権者は、個別的な和解契約の接渉を債務者とする余地もあり、別個な行動をとることも許されます。しかしその行為は私的整理の成立と無関係です。
破産法は破産宣告の実質的要件として、債権の存在と破産原因の疎明を要求していることから、後者について破産申立乱用に関しての疎明資料として債務者審訊が重要です。債務者審訊の過程で私的整理の成立が明らかとなったときは破産宜告をすぺきではありません。この点を裁判所が看過して破産宣告した場合では、法には私的整理の成立が破産手続の開始の障害事由となっていないことは前述のとおりであって、したがって破産宣告前に取りきめられた債務免除あるいは弁済の効力は破産手続遂行上は無影響です。しかしながら私的整理における債権者集会の決議に一定の拘束力を認めなくとも、少なくとも破産手続上尊重することの工夫について、実務上かなりの努力が払われています。つまり私的整理手続中になされた債務の免除あるいは弁済について、破産管財人から私的整理の成立に関与した関係人を当事者として破産裁判所に対し免除あるいは弁済することの許可を求め和解許可の実行として私的整理成立と同一の結果を生じさせる方法がとられています。さらに破産手続上の集団的和解の方法として債務者は破産手続内の強制和議にしたがい和議の提供 をすることができます。強制和議の可決にあたっては、議決権を行使できる債権者の出席破産債権者の過半数にして届出債権額の4分の3以上の同意によって成立します。先に述べた私的整理の相当な程度の数である4分の3は和議手続において意義があります。強制和議手続のなかの4分の3以上の同意によって私的整理の結果は法的拘束力を生じ、かつ認知されたものとなります。強制和議の提供にあたっては、債務者は私的整理の結果である6割免除と残額弁済の計画を再度提出し可決をまつことになります。そうすれば反対意見の一部債権者の破産申立乱用防止に繋がると同時に私的整理の効果を法的整理に高めることができます。

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