破産手続の準則

破産法は、その第二編第一章において破産手続に関する通則を定めていますが、全般的な規定を設けるという方式を採らず、管轄、共助、申立等の方式、審理の方式、送達・公告、手続の中止、登記・登録の嘱託、主務官庁に対する通知、即時抗告につき特別の規定を設けたほかは、民訴法を準用することとしています。
破産手続は、特定の時点における破産債務者の総財産を金銭化して総債権者に平等に分配することを主たる目的とする手続であるために、清算手続的な性格を有します。この点を強調して、破産手続の本質は非訟事件であるとする説があります。しかし、破産申立につき申立債権者と債務者とを対立させて申立人の主張する債権の有無および破産要件の在否等につき審理、裁判をする手続は訴訟事件に類似し、国家権力に基づき破産者の総財産を強制的に換価して配当する手続は包括的な強制執行手続であるということができます。つまり破産の法体系は、民事訴訟や非訟事件手続とは別個独立の法体系であり、破産法の定める個々の手続には、その目的や構造に従い、訴訟的なもの、執行手続的なものおよび非訟事件的なものが、各色彩の強弱を織りまぜて混在しているとみるべきです。破産法一○八条が民訴法を準用するものとしたのは、立法技術上の便宜に出たものにすぎず、この立法形式のゆえに破産手続の本質が民事訴訟であるということはできません。

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破産手続上の破産債権の調査、確定、破産財団の管理、換価および配当については、破産法が特別の規定を設けているから、民訴法第五編ノ三の諸規定および民事執行法は、準用されるものが少なく、財産保全処今についても、それが全債権者のための包括的執行を保全するためのものであり、個別執行の保全を目的とする民訴法上の仮差押、仮処分と性質を異にするために、民訴法上の仮差押、仮処分に関する規定は、これを準用する余地がありません。なお、破産法上の保全処分において保証を立てさせることができるか否かに次見解がわかれていますが、積極説に従うときは、民訴法七四一条三項、四項等の規定が準用されることになります。したがって、民訴法の規定のうち破産手続に準用される主なものは、民訴法の総則および訴訟手続に関する諸規定ですが、これらの規定の全部が準用されるわけではありません。まず、破産手続中には判決手続は存在しないため、民訴法中判決手続に固有の規定は、準用の余地がありません。次に破産手続中の決定手続はすぺて任意的口頭弁論および職権主義により審理、裁判されるために、民訴法中の必要的口頭弁論および弁論主義に固有の規定、例えば請求の認諾、体止、自自、擬制自白等の規定は、破産手続に準用されません。
破産手続のうちでも破産申立に対する裁判の手続は、比較的訴訟手続に近似するために、この手続につき民訴法中の忌避の規定を準用すべきことについては、異論がありません。これに対して、破産宣告後の破産手続は、訴訟的色彩が乏しく、非訟性が強いため、非訟事件手続法五条が除斥についてのみ規定し忌避につき規定していないこと等を根拠として、この手続について忌避は認められないとする説があります。しかし、手続の公正を担保する意味で、非訟事件手続にも民訴法の忌避の規定を準用すべきであり、したがって、破産手続全般について、忌避申立を許すべきです。
破産法は、破産管財人の代理人債権者集会における破産債権者の代理人、債権調査期日における破産者及び破産債権者の代理人、強制和議のための債権者集会における和議提供者の代理人につき、特別の規定を設け、いずれの場合も代理人の資格につき制限をしていません。よって訴訟代理人は弁護士たることを要する旨の民訴法七九条一項本文の規定は、各特別規定の定める代理については、準用されません。
判例は、訴訟参加に関する民訴法の規定は破産宣告手続に準用されないとしています。通説では、補助参加につき、判例に反対しています。しかし、民訴法七○条、七八条の規定は破産事件に準用されえないと解すべきであるために、判例は正当であると考えられます。
破産手続の審理は職権主義によるために、原則として中断、受継、中止を認める必要はなく、中止事由が生じたときには、破産裁判所は正当な承継人に対し手続きの承継を促すぺきです。ただし即時抗告については、その申立期間が不変機関であるために、民訴法の中断、受継の規定が準用されると解されています。調停の申立による訴訟手続中止の規定は、破産手続きには準用されません。
民訴法二三六条一項は判決の確定に至るまでは訴えを取り下げうる旨規定しますが、破産法一条等の解釈上、破産申立人は破産宣告後はその確定前でも申立を取り下げることができないとするのが判例・通説です。ただし法律上破産申立義務を負う者は、破産宣告前においても、そのなした破産申立を取り下げえないと解されています。相手方の同意を要する旨の民訴法二三六条二項の規定は、破産手続には準用されません。
民訴法中の抗告に関する規定は、破産法の規定と矛盾しない範囲において破産手続上の即時抗告に準用されます。即時抗告につき執行停止の効力を認めた民訴法四一八条一項の規定は、破産宣告に対する即時抗告については準用されませんが、その他の裁判に対する即時抗告については準用されます。
抗告期間につき、民訴法四一五条は裁判の告知の日から一週間と定め、破産法一一二条は、裁判の公告がなされたときは公告の日から二週間と定めます。ところが、破産宣告、破産廃止等の決定については送達と公告の双方を必要としています。そこで、これらの決定に対する抗告期間は送達後一週間であるか、公告後二週間であるかにつき、解釈上争いがあります。この問題は、不服申立の期間の問題にとどまらず、免責申立て期間にも影響があるので、近年重要性を増してきました。当事者の利益保護に重点を置くときは、少なくとも公告後二週間の経過よりも送達後一週間の経過がおくれる場合には、送達後一週間説を採るべきです。
債権表の記載につき、例えば届出債権につき異議がないにもかかわらず異議ありと記載されたような過誤が存する場合に、これを訂正する方法として、更正決定によるべしとする説があります。しかし、和解調書等と異なり、債権表の作成については裁判官は関与しないのであるから、利害関係人は民訴法五四四条の準用により訂正を求めうると解すべきです。

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