破産宣告と合憲性

破産宣告の合憲性の問題について最高裁大法廷が真正面から違憲の主張を否定する裁判を下していますが、その内容は、まず破産手続が実体的権利義務の在否確定を目的とする手続ではないことを指摘し、ついで憲法八二条の裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行う、という保障が固有の司法権の作用にのみ限定されているとの、一連の最高裁判例により確立された解釈をここにも適用して、つまりは違憲の問題は生じないと結論づけるのです。この大法廷決定を引き出すことになった特別抗告の具体的事案は、数億円の債権につき主たる債務者が支払えなくなったところ、債権者は、主たる債務者に対してではなく、同様に支払うことのできない連帯保証人に対する破産宣告を申し立て、これが認容されたので連帯保証人は即時抗告を提起したが杭告棄却されたのにさらに特別上告を提起したというものです。なお、第一審決定、抗告審決定ともに口頭弁論を経ておらず、またこの連帯保証人の論ずるところによれば、同人の連帯保障引受の行為は要素の錯誤により無効であるとされています。

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最高裁決定の要点とみられるところを抜書きすると次のようになります。
破産手続は、狭義の民事訴訟手続のように、裁判所が相対立する特定の債権者と債務者との間において当事者の主張する実体的権利義務の在否を確定することを目的とする手続ではなく、特定の債務者が経済的に破綻したためその全弁済能力をもってしても総債権者に対する債務を完済することができなくなった場合に、その債務者の有する全財産を強制的に管理、換価して総債権者に公平な配分をすることを目的とする手続であるところ、破産裁判所がする決定は前述に述べたような目的を有する一連の破産手続の開始を宣告する裁判であるにとどまり、また、その抗告裁判所がする抗告棄却決定はこのような破産宣告決定に対する不服の申立てを排斥する裁判であるにすぎないのであって、それらは、いずれも、裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判とはいえない。
この憲法八二条の規定にいう裁判とは、現行法が裁判所の権限に属しめている一切の事件につき裁判所が裁判という形式をもってするすべての判断作用ないし法律行為を意味するものではなく、そのうち固有の司法権に属するもの、つまり裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の在否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみを指すべきものと解すべきことは、すでに当裁判所の判例において、明らかにされているところです。
上述のとおり最高裁決定の見解は、純然たる訴訟事件論によって、それにあたらない破産事件をあっさり公開の口頭弁論の保障の範囲外としてしまうのですが、こうした考察方法は破産手続で実行されようとしています。債権債務にしか考慮を払わないものであることが明らかです。しかし破産宣告決定は、これを受ける債務者を破産者とするものであり、その結果として破産者は破産財団所属財産の管理処分権を喪失するほか、居住の制眼、引致、監守など一身上の拘束を課せられ、さらに間接の効果として破産法外の私法上、公法上の資格を奪われるということがあります。そうした制約を課する裁判所手続には、それなりの手続追行権の保障があってしかるべきであり、そうした見地に伴って、債権の存在について実質的な争いのあるかぎり口頭弁論ないし口頭心理を経ない破産宣告決定を違憲とみなそうとする見解も唱えられています。
破産宣告決定との関連にかぎらず、最高裁の憲法八二条、三二条についての二分論には疑問があり、破産宣告決定の私権拘束的効果に照らして、相当の手続権保障を認めなければならないとする考え方は正しいのですが、破産宣告事件について検討すると、破産手続に関する裁判として職権調査主義が採用されかつ口頭弁論を経ないでもなしうることが法定されています。さらに敏速性の要請、多数関係人の存在などを顧みても判決手続型の口頭弁論は通切ではなく、常に公開を要求するのは逆に望ましくないことにも留意しなければなりません。
口頭弁論という形式や申立人との対席審理にあるのではなく、むしろ破産宣告の名宛人とされようとしている債務者に反論の機会を十分に保障すぺきだというところにあるので、破産法二○条二項にもとづく職権調査の一方法としての審間手続により、債権者、債務者、証人、鑑定人等の審問を行なうといった審理方式が採用されればそれで破産者の裁判を受ける権利の保障は果されているというぺきです。ただし、そうして下された破産宣告決定に対し破産者から提起された抗告の審理に際しては、ロ頭弁論を必ず開くべきであり、法律上そのことを明記した規定が置かれなげればならないといえます。

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