破産制度

倒産の処理は債務者と債権者との話し合いによって私的に行なわれることが多いのですが、公正は保ちがたく、実効も少ないために、公権力による処理手続の用意をする必要があります。そうした手続を提供する日本の現行の法制度には、次の種類が認められます。
破産はその一つであって、支払不能その他法定の原因があるとき申立によって裁判所が破産の宣告をし、清算の衝にあたる破産管財人を選任します。破産宣告によって債務者は財産に対する一切の管理処分権を失い、破産管財人がこれを掌握するとともに、債権者らは個別的な取立を禁止されます。管財人が破産者の財産として占有する財産のうちに第三者の物が混在するときは第三者はこれを取り戻すことができます。その反面、宣告前の処分によって破産者の財産から流出した物があるときは一定の要件のもとに破産管財人がこれを取り戻すことができます。破産の宣告によって担保権者が優先弁済をうけ、債務を負担する債権者が相殺を求める権利は害されません。財団管理の費用や換価に必要な費用などは随時財団から支払われます。その他の一般債権が財団の換価金から債権額に応じた按分弁済を受けるのであって、非金銭債権も金額をもって評価して金銭による満足を得、履行期未到来の債権も弁済期に達したものとみなされます。配当を完了して裁判所が終結決定をすれば手続きは終了しますが、手続終了後は破産宣告後に債務者が取得した財産はその自由財産で破産手続の影響をうけず、免責を申立てて認められた場合には、破産配当で完済できなかった債務についてさえ原則として責を免れます。破産の宣告をうけた者は、他の法令上、後見人や弁護士になる資格を否定され、合名会社の退社を強制されるなど、公私の失権をうけることがありますが、破産法自体は破産者懲戒の規定を置いておらず、逆に復権の制度を設けて、失権からの申立てによる回復の要件を定めています。

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和議法によれば、破産の原因があるとき、債務者は和議条件の申出を含む和議開始の申立てをすることができます。申立てを相当と認めるときは裁判所が和議手続開始の決定をし、和議管財人を選任します。破産と異なって債務者は財産の管理処分権を失わず、したがって和議管財人も管理処分権を取得しませんが、債務者が通常の範囲に属しない行為をするには管財人の同意が必要であり、通常の範囲に属する行為も管財人が異議を述べれば許されません。債権者らは個別的な取立を禁じられ、債権者集会が和議を可決し、裁判所が認可すると、権利関係が和議の条件のとおりに変更されたことになります。債権者集会の可決は出席者の過半数、債権額4分の3の多数で成立します。和議の条件が履行されない場合について、譲歩の取消や和議全体の取消は可能ですが、強制執行の途は開かれていません。債権者集会が和議を否決し、または裁判所が和議を認可しないときは、破産に移行するのであって、この制度は、破産外の和議または破産予防の和議とよばれています。和議法とは別に破産法が破産法上の和議を定めますが、これは破産手続中に破産者が条件を定めて和議の提供をすることを認めたものです。和議が成立して認可されれば破産手続はもはや必要がなくなりますが、財団債権の弁済などが残される仕事もあるために、現務の結了を待って破産終結決定が行なわれます。その他の点では、和議成立の要件、和議の効力など、破産外の和議と同じですが、破産を期待する債権者に多数決による和議が強いられる意味で、破産法上の和議は強制和議とよばれます。
昭和27年に創定された会社更生法によれば、事業の継続に著しい支障をきたすことなしには弁済期にある債務を弁済することができなくなった株式会社は、支払不能を待つまでもなく、更生手続開始の申立ができます。破産原因の生じる虞が認められるときは法定範囲の債権者や株主にも申立が許されます。更生の見込がないといえず申立が不当でないときは裁判所が更生手続開始の決定をし、更生管財人を選任します。これによって会社の取締役が取締役たる地位を失うことはありませんが、事業の経営および財産の管理処分は更生管財人の専権になります。取戻権、否認権、相殺権など財産管理面の建前は破産とほぼ同様ですが、別除権というものはありません。更生管財人の特殊な任務は更生計画案の策定にあり、この計画案をもって債権者、担保権者、株主の権利の変更をも提議できます。その他に営業譲渡、出資、賃貸、経営委任、定款変更、取締役変更、資本滅少、新株発行、合併、新会社設立等々をも定めることができ、債権者や会社が計画案を出すこともあります。利害関係人は担保権者、優先債権者、普通債権者、劣後債権者、優先株主、普通株主に分かれ、更生計画案の可決は組ごとに分けられた関係人集会で行なわれ、また各組は計画上掲記の順に前者が後者よりも有利に扱わなければならないものとされています。集会の議決要件は組ごとに異なりますが、集会が可決し裁判所が認可すると更生計画が発効し、関係人の権利関係は更生計画の内容どおりのものとなり、会社は他の一切の責めから免れることになります。
会社整理とは商法上には、会社の整理といって、株式会社の整理計画を裁判所が後見、監督する手続が設けられています。これは破産原因の生じる虞があれば開始できますが、整理案を多数決で関係者全員に強制することは許されず、会社の内部組織の変更は商法の通常規定の範囲内にかぎられます。
商法上の特別清算は、解散した株式会社が倒産状態にあって通常清算を適当としないとき清算人を特別清算人として協定案を作成する裁判上の手続で、協定案は債権者集会の法定多数で可決でき、裁判所の認可によって効力を生じれば権利関係は変更されますが、解散を前提とするために債権者の満足を調整するもので会社の更生をはかるのではありません。特別清算人の権限や債権者、担保権者の地位は破産管財人、破産債権者、破産法上の別除権者に準じられ、協定の見込がない場合や協定実行の見込がない場合は、裁判所の職権で破産宣告がされ、破産手続に移行します。
これらの概観から知られるように、倒産法制は二つの類型に大別されます。一方は、全プラス財差、全マイナス財産を洗い出し、不足する前者をもって公平に後者を充足する仕方を工夫するという類型で、清算型の倒産処理手続といわれます。他方は、マイナス財産の譲歩を求めプラス財産を基礎として倒産者の再起をはかる類型で、再建型の倒産処理手続といわれます。破産と特別清算とは清算型に属し、和議を基本とし会社整理を含みつつ会社更生を頂点にもつ再建型に対立します。破産でも自然人は自由財産と免責によって再起できますが、これは可能な弁済は尺くされたためであり、法人の場合は破産が解散原因だから再起の余地はありません。よって和議が死滅を防止するわけで、和議が破産原因の存在を前提とするに対し、破産原因の生じる虞があれば足りるとして時期を繰り上げて実効の増加をねらい、その代わりに多数決の強制を遠慮したのが会社整理、その遠慮をもかなぐり捨て、和議や会社整理が志す会社の再建の域をこえて、会社の存続を否定しても企業の再建をはかろうとするのが会社更生です。同じ清算型の両種の間では、協定成否の見込が得失を左右することになりますが、破産が一般的制度であるに対して、特別清算は株式会社についてのみ認められる特殊の制度です。その特別清算が協定以外の点では破産に準じるものであるほか、再建型の手続も清算を想定して始めて実行されるために、破産が清算的倒産処理手続の基幹であり、かつ再建型を含めた全倒産処理手続の基底です。

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