特別利益供与と和議の効力

破産法または和議法による和議手続外で、第三者が特定の債権者のみのため人的保証または物的担保を提供することを約したら、それは和議にいかなる影響を与えるでしょうか。また、その約束が和議認可決定確定後になされた場合はどうなるでしょうか。破産法による和議が強制和議とわれることからして、和議法による和議を時には任意和議ということもあります。しかし任意和議といっても和議の提供に反対する債権者や手続に関係しなかった債権者に対しても一般的拘束力が及びそのかぎりで強制的です。両者の差異は実は前者が破産手続内で破産的清算によらないで破産を終結させる制度に対し、後者は破産宣告とは関係なく破産外で破産を予防する制度という点にあり、面者とも破産的清算の回避と当該企業や事業の維持をその制度の目的とする点では同じです。特に設問に関しては後述のように関係条文はほぼ同一であり、両者を区別する必要はありません。したがって以下では面者を単に和議として表記しますが、それは両者を含めた意味です。

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和議の条件によらないで和議提供者または第三者が特定和議債権者に対して特別の利益を提供した場合にその行為の効力や和議への影響が問題となります。設問では人的保証または物的担保の提供の約束ですが、ここでいう特別利益とは経済的利益になるものであればなんでもよいといわれています。設問のような場合がここでいう特別利益に該当する点については異論はなく、むしろ特別利益の典型例です。そこで特別利益とは何かという記述は省略しますが、この問題について法はいかなる評価を下しているかというと、和議法四九条二項、破産法三○五条はこれら行為を禁じるためにこれら行為を無効としています。さらに和議法五一条三号、破産法三一○条一項三号は和議の決議が不正の方法によって成立するに至ったときは裁判所は破産債権者の申立によりまたは職権をもって和議不認可の決定をすることができる旨規定しています。つまり法はいわゆる特別利益供与について当該行為を無効とするとともに、当該行為によって債権者に決議に賛成させてそれによって和議の決議が成立したような場合は和議不認可事由になるとしているのです。もっとも、多くの場合は秘かに行われることであるために裁判所に知られす認可決定が下されることがあります。この場合は行為自体は依然として無効であり、何びとからも無効の主張はできるという絶対的無効である一方、和議法五一条三号、破産法三一○条一項三号を受けて、和議法六二条、破産法三二九条は和議が不正な方法によって成立した場合はいわゆる譲歩の取消を債権者に認めています。もっともかかる取消権を有する債権者や取消権行使の制限については一項但書、二項が規定しているところであり、譲歩の取消の効果については破産法三三一条が規定しています。以上のことから明らかなようにいわゆる特別利益供与行為は裁判所の和議不認可事由や債権者の譲歩の取消事由になりうるといえます。しかし、設問に対する結論はこれでよいかというとそうではなく、法文上は明確ではありませんが、理論上、全ての特別利益供与行為それ自体が法によって禁止されているわけではないと考えられるからです。具体的にいうと通説、判例によれば法の禁止する特用利益供与行為にはかかる客観的事実のほかに、当該行為を和議に利用するという当事者の主観的意思が必要であるとしているからです。また時間的問題にしても判例、通説によればかかる行為の時期は和議認可決定確定の時までとしているのです。
会社更生法二三一条は破産法三○五条の同趣旨の規定であり、会社更生法二三三条は破産法三一○条、和議法五一条に相当する規定です。したがってここでの問題と同様な問題が会社更生法上存在することに注意しなければなりません。また決議に関して特別利益供与行為が収賄、贈賄にあたる場合は罰用の通用が有り得ます。

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