和議債権と消滅時効

和議法による和議手続において、和議債権の一部免除、残額につき弁済猶予を内容とする和議が認可され、認可決定が確定した場合、債務者がその後消滅時効を緩用しうるのは、いかなる和議債権に対してでしょうか。和議法による和議において和議が裁判所により認可され、それが確定すると効力が発生します。そこで債権の一部免除、残額弁済猶予というような和議条件であれば、和議債権はすべてその条件にしたがって変更を受けることになります。和議の効力を受ける権利であれば、債権者が和議に賛成したか否か、あるいは和議債権として届出をしたか否かは関係ないのです。今日の破産法、和議法の体系書のほとんどがその趣言賛成として引用している大判昭和一○・七・一○民集一四巻一五号一三三九頁は、和議法第五七条二依り和議の効力に関し準用せられたる破産法三二六条一項に徴すれば、和議の効力は和議債権者の全員の為且其の全員に対し効力を有すべく、苟も和議開始前の原因に基きて生じたる財産上の請求権を有する者即ち和議債権者たる以上、其の債権を届出で和議手続に参加したると否とを問はざるものなりとしてこのことを説いています。和議制度の趣旨から当然のことといわなければなりません。このように従前の債権が和議条件によって変更させられた場合に考えねばならない問題の一つに消滅時効の問題があります。そこで考えねばならない問題は第一に、和議債権の一部免除、残額弁済猶予ということと時効との関係の問題です。第二の問題としては未届債権と時効との関係です。既述のごとく未届債権も和議の影響を受けるのですが、和議法附則二項では、和議手続参加は時効の中断に関しては之を裁判上の請求と看估と規定し、未届の場合は時効の中断にはならない旨規定しています。

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和議認可決定が確定した場合は裁判所書記官は和議条件を債権表に記入します。しかし、和議手続においては和議債権の調査や確定の手続がないため債権表には債務名義としての効力は認められません。したがって時効に関していえば和議債権は判決で確定されたものを除いては、それぞれの同一性を維持することになるため、本来の権利の時効期間に変更を生じることはありません。問題は和議条件において弁済が猶予されている場合です。これは単に支払が猶予されたとみるべきでなく、和議債権の内容に変更を受けて新しい期限が設定されたと解すべきであり、新履行期より新たに時効が進行すると解すべきです。そこで和議債権はこの限りで原則として新期限以前に時効による消滅はありません。
この点についての判例というと、大判大正一五・二・一九民集五巻二号七五九頁は、該手形債務の弁済は和議に因り猶予せられ其の弁済期未だ到来せざることは原裁判所の確定したる所なり。而して和議に因り弁済期延期せられたる場合として、其の延期の期限到来するまでは時効進行せざるものなりとしています。つまり和議によって弁済猶予がなされたときは本来の弁済期も猶予されたものになり、時効は延期された期限の到束するまでは進行しないということです。東京地判昭和五年ワ八六一号法を律評論民訴法五五三頁は和議認可決定ノ確定に依りては和議債権が実体的確定力を有するに至るものに非ず。且和議債権者に於て未だ其の完済ブ受けさる以前に和議が廃止せられ、若しくは取消されるか如きことある場合を慮れば和議債権者が今に於て其の債権に付既判力を得るの利益は存在するものとすと判示しています。
前記昭和一○年の大判はこれら判例を受けて未届出和議債権が履行期の猶予されるぺき和議条件に覊束されるときは猶予された履行期日までは消滅時効の進行を見ない旨判示し、未届債権については時効の進行はあるとする上告理由を拒けています。つまり、判例、通説とも弁済猶予により新期日まで原則として和議債権の時効は進行しないということです。

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