和議の認可

破産の原因たる事実がある債務者は、破産予防のため、裁判所に和議開始の申立てをすることができ、この場合に和議条件の申出をしなければなりません。破産債務者も、破産執行によって生じる弊害を防止して破産手続を終結させるため、破産裁判所に強制和議の提供をすることができますが、同様に和議条件の申出をしなければなりません。和議条件とは、債務の弁済に関する条件、つまり債務の一部弁済とその余の部分の免除、期限の猶予、分割弁済、あるいはこれらを組合わせた債務弁済の方法、人的、物的担保の提供その他債務者が債権者に対し何らかの義務を負担する条件をいいます。

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和議法にもとづく和議開始の申立とともに提示された和議条件について、裁判所は、職権で調査しまたは整理委員の意見を聞いて、和議条件が債権者の一般の利益に反すると認めるときは、和議開始の申立てを棄却しなければなりません。破産法上の強制和議については、明文の規定がありませんが、和議条件が債権者の一般の利益に反するばかりでなく、債権者の利益に和議条件を変更することができないときは、裁判所は、債権者集会を招集することなく和議提供を棄却できるとする説が有力です。裁判所が和議開始決定をし招集した債権者集会において和議が可決されたときでも、和議の決議が債権者の一般の利益に反すると認めたときは、裁判所は、申立てまたは職権により和議不認可の決定をなすぺきです。和議法五一条、破産法三一○条一項に、決議が債権者の一般の利益に反するときは不認可の決定を為すことを得とありますが、認可、不認可が裁量的であるとする趣旨では ありません。和議の決議が和議債権者の一般の利益に反するときと、和議条件が和議債権者の一般の利益に反するときとは、実質的に同義です。
このように和議が認可されるためには、和議の決議が債権者の一般の利益に反しないことが必要です。そもそも、和議法上の和議も、破産法上の強制和議も、破産執行によって、債権者および債務者が被るべき諸種の不利益を避けさせることを目的とします。破産原因たる事実のある債務者が破産宣告を受けると、債務者に対する経済的信用は失墜し、その所有財産は破産財団として次々に換価処分されて債権者の弁済に供されるため、債務者が事業を継続していくとか、新たに事業を興して経済的に立直ることが困難となり、さらに従業員の失職あるいは関連倒産という社会経済的に好ましくない影響が現われ、また破産は厳格な手続をふまざるをえないために、財産の換価、配当について多くの時間と費用の支出をともない、かつ財産も廉価に買い叩かれがちであるために、債権者に対する配当は時間がかかるうえ少額になりやすくなります。これに対し和議は、財産の管理運営を債務者に委ねその所有財産を換価することなく事業を継続させることにより経済的更生を容易にさせ、失業者の発生や関連倒産を防止し、他面、債権者にとっても、債務者が事業を継続することによって得る利益およぴ財産をも弁済の引当にすることができるため、破産執行の場合よりも有利な弁済を期待できるのです。しかし和議条件の申出が債務者にのみ認められているところから、債務者は、事前に財産を巧みに隠匿したり仮装処分して所有財産が僅かであるように装い、あるいは他の者と組んで仮装債務を計上し、債権者に破産執行による配当をあきらめさせて不利な和議条件に同意させる危険がないわけではありません。また、和議条件を履行する意思、能力に欠けるのに種々策動して和議を成立させ、その管理連営を委ねられた財産をますます滅少させてしまう危検もあります。仮に和議条件を履行する意思があっても、債務者に破産の原因たる事実があるのであるために、和議の申立以前に、あるいは和議の申立をすることによって経済的信用が失われ、和議の認可決定があったからといって容易に経済的信用を回復しうるわけではなく、したがって事業の継続は容易なことではありません。また一般の先取特権その他一般の優先権ある債権、取戻権、別除権、相殺権、財団債権、和議のために生じた債権、和議手続費用は和議認可の効力、影響を受けないためこれらの債権の額および権利行使の動向によっては、和議条件の履践が困難になることも予想されます。さらに、認可された和議条件の実行を担保する法律上の措置がほとんど講じられていません。債権者は和議条件の不履行に対し、譲歩の取消しにより権利の回復をはかりますが、和議の履行が完了した後でなければ回復した権利の実行ができず、和議の取消についても、債権者の過半数でその債権額が総債権額の四分の三以上にあたる者の申立てを必要とするため、事実上、譲歩の取消および和議の取消しは妨害されざるをえないのです。
債務者が破産回避の目的をもって和議の申立てをしたとか、あるいは詐欺破産にあたる事由があるとか、和議決議が不正の方法によって成立したと認定するのが困難であっても、他の諸事情と相俟ってその疑惑が払拭できないときは、債務者に履行の誠意が認められないとする場合が多いと考えられ、このような場合、和議条件の実行も期しがたいのであるため、和議条件、和議の決議は債権者の一般の利益に反するといえます。
和議は、債権者に破産の場合に比し有利な弁済を得させることを目的とします。したがって、和議条件が破産の場合に比し不利益であるときは、和議条件、和議の決議は債権者の一般の利益に反することになります。ここに不利益とは、単に弁済すべき額が破産の場合に比し小である場合のみならず、仮に額面上は大であるとしても、掘置期間が長期にすぎ、あるいは分割弁済期間が余りにも長期で、しかも各期の弁済額が僅少であるため、債権者の受ける弁済利益が結局有名無実に帰する場合もこれにあたります。
破産の原因がない場合であっても、将来の弁済が100パーセント確実であると断言することはできません。まして破産の原因事実を有する債務者が和議条件を履行することは一層困難になります。逆にそのような事情にありながら破産執行による不利益を免れようとする債務者に対し、条件履行の確実性を要求するのも当然です。ことに譲歩の取消や和議の取消の制度が債権者にとって利用しがたい実情にあることを考えれば尚更です。和議条件の履行の見通しについては、債務者の資産と負債の不均衡の程度、破産原因の生じるに至った事情、事業能力、事業の種類による収益性の程度および確実性、経済的信用の獲得の見込み、人的、物的担保の有無、内容および人的担保の信用力、和議手続によらずして行使される債権の額、そのうちの別除権者あるいは相殺権を有する者の動向等一切の事情を総合勘案し、和議案件の履行の確実性を測定することが必要であり、その履行に相当の疑いあるときは、和議条件、和議の決議は債権者の一般の利益に反するといえます。なお付言すると、債務者が和議の決議を得たいばかりに、一見、債権者に利益になるように和議条件を変更する場合があります。しかしその履行の確実性について相当の疑いが存すれば、その和議条件、和議の決議は、結局債権者の一般の利益に反することになります。

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