株式会社の破産廃止

株式会社の破産が廃止された場合、清算手続がなお必要なのでしょうか。もし、それが必要であるとすれば、誰が清算人として清算手続を追行するのでしょうか。破産廃止には破産債権者全員の、破産手続の遂行を放棄する旨の意思表示を得てなされる同意廃止と、破産財団をもって破産手続の費用を償うに足りないと認めるときになされる費用不足による廃止とがあり、費用不足による廃止には、破産宣告と同時になされる同時廃止と、宣告の後になされる異時廃止とがあります。いずれにせよ、破産の効果を将来に向って消滅させます。このうち同時廃止については法人継続の手続をすることが必要とされているので清算の問題は起こらないといえますが、費用不足による破産廃止の場合は、もし残余財産があるならばそれが僅少であっても、清算手続が必要であるこの点についてはほとんど異論がみられません。

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次に破産廃止後清算手続を実施すべき場合に、誰がその清算人になるかということがあります。会社の破産は解散事由とされています。一般に、会社解散の際の清算手続のために、清算人の選任が必要ですが、破産の場合は、通常破産宣告と同時に破産管財人が選任され、破産財団に属する財産の管埋、換価、配当等の手続は管財人が担当します。したがって、通常の場合、清算人の選任は必要ではありません。商法四一七条一項が、会社の解散の際、取締役が清算人となる旨を規定しながら、破産の場合を除外しているのはこの理由によるといえます。しかし破産廃止の場合には、一応破産宣告がなされているには違いないのですが、異時廃止の場合には、破産管財人の任務は終了することとなり、同時廃止の場合には、そもそも管財人は選任されないため、この清算人の選任は要しないとの前提は失われます。他方、残余財産がある以上、清算手続が必要であることはすでに述べたとおりです。この場合、破産廃止も一応破産宣告がなされているとし、商法四一七条一項によって破産の場合が除外されているからということで、取締役が清算人となるということにならないと解すべきなのか、それともその反対に、商法四一七条の解釈論をふまえても、なお取締役が清算人となると解されうるのでしょうか。一般に、株式会社が破産した場合、従前の取締役は当然に退任することになりますが。もしこの点に対する解答が積極に解せられるならば、破産廃止の場合は、同時廃止であると異時廃止であるとを問わず、破産宣告がなされているわけであるため、取締役は退任し、破産宣告前の取締役が清算人になるということもありえません。
会社取締役間は民法の委任の規定が準用されるところ民法六五三条によれば、委任者の破産によって委任は終了するとされるため、委任者に相当する株式会社が破産すれば、その条文を形式的に適用するかぎり、取締役はその地位を失うことになります。そうすると、破産宣告前の取締役が清算人となるとは解され得ないとの結論が導かれます。現に判例はこのような立場に立ち、株式会社の同時破産廃止決定があった場合、会社の破産により、取締役はその地位を失うとし、商法四一七条一項但書の場合を除き、同案二項に則り、利害関係人の請求によって裁判所が清算人を選任すべきものとしています。これによれば、破産宣告によって従前の取締役は当然終任するとの前提に立つわけであるために、同時廃止たると異時廃止たるとを問わず、破産宣告前の取締役が、破産廃止後の清算手続を担当することはないことになります。実際的見地よりしても、残余財産が僅かであればあるほど、従前の取締役により不公正な清算がなされる危険性もそれだけ高く、また裁判所の監督も事実上十分にゆき届かないのではないかとの危惧もないわけでありません。その意味でこの判例理論も相当に理由があるようにも思われます。しかし本来民法六五三条で委任者の破産を委任の終了事由としているゆえんのものは、委任関係の基盤をなす委任者受任者間の信頼関係が失われたからということではなく、委任者が破産すれば、通常の場合、破産管財人が選任され、その結果、受任者が委任事務を遂行するに由なくなるからです。そうなると、委任者たる株式会社が破産した場合でしかも破産管財人が存しないという場合には、委任関係を終了させる理由はありません。取締役を退任させる理由もないということになります。
多くの説は、この判例とは反対に、株式会社破産を取締役の退任事由とせず、商法四一七条一項における破産も破産管財人によって破産財団の管理がなされる通常の場合の破産というように限定的にとらえ、破産手続きが行われない破産廃止の場合の破産については、原則に戻り、取締役が清算人となるとするのです。このようにして判例と多くの説は対立しますが、条文の形式からすればともかく、商法四一七条一項や民法六五三条の実質的意味に思いを致すならば、理論的にみてこの反対説に十分の理由ありということができます。のみならず実際的にみても、反対説によれば、僅かな残余財産しかないような場合に、裁判所による清算人の選任という面倒な手続を回避しうるわけであるため、簡易、迅速な処理に役立ちます。しかも、他方において、結論に対する反論として予想される、従前の取締役が清算人として不公正な清算手続をするという危惧に対しては、商法四一九条、非訟事件手続法一三六条の二、一三五条の二五などによる裁判所の適正な監督によって、を除去することも可能です。

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