破産債権届皆無の場合

破産宣告があると同時に債権届出期間が定められ、それが公示され、かつ知れた債権者には送達によって通知されます。破産者の債権者は、これに応じて裁判所に債権の届出をすることによって破産手続に参加し、破産配当を受けることになるのです。破産手続は、破産者の財産を換価し、その換価金をもって債権者に配当して清算することを目的とするものであるため、配当すべき債権が存在しない場合には、一旦破産宣告があっても破産手続を続行すべきではないことになります。したがって債権屈出期間内に届け出た債権者が一人もいない場合には破産手続を続行する必要はありません。むしろ続行は不可能というべきです。この場合、破産裁判所は早急に破産手続を解止すべき義務があるというべきですが、それをどのような手続によるべきかについては明文の規定がなく、学説、裁判例ともわかれて分かれています。

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債権届出期間が破産決定の確定前に満了した場合に、届出債権が皆無であるときは、破産廃止をすべきか破産の取消をすべきかが議論されていますが、破産決定が確定している場合については、破産の取消ということはありえません。確定後の場合について、破産裁判所がいかなる措置をとるべきかついては、およそ次のような立場が考えられます。
(1)届出期間内に債権の届出が全くなくともその後の届出を待って続行すべきであって、直ちに破産手続を終結すぺきではないとするもの。
(2)破産法三五三条もしくは三四七条を類推適用して破産廃止決定をすべきであるとするもの。
(3)破産法二八二条に準じて職権で破産終結決定をすぺきであるとするもの。
このうち(1)は、債権届出期間がいわゆる除斥期間ではなく、期間後の届出も認められていることを根拠とするものです。しかし、それではいつまで待つのか不明確であり、待っても結局届出がない場合にどうするかということになります。また破産宣告が破産者に与える公私の様々な資格喪失や制限による不利益も無視できません。したがって原則として、債権届出期間内に届出が皆無であることによって、それ以上破産手続を続行すぺきではない状態になったとみてさしつかえないというべきです。現在(1)のような見解をとる学説は見当りません。そこで結局破産裁判所としては早急に破産手続を終了させるべきだということになりますが、それを(2)によるべきか、(3)によるべきかということになります。
破産廃止決定がなされるには、破産財団が不足する場合と、届出債権者の同意がある場合とがありますが、このうち前者にあたる場合は、債権届出期間内に債権の届出があったか否かにかかわらず、職権で破産廃止が決定できると解されるので、ある程度破産財団が存在するにもかかわらず、債権届出の期間内に届出が皆無であった場合の裁判所の処埋にかかわるものといえます。
債権届出期間に債権の屈出が全然なかった場合、破産廃止決定をすべきだとする見解は、債権者による同意があった場合に準じて、破産者は破産廃止の申立をすることができ、その旨の申立があった場合、破産裁判所は直ちに破産廃止決定をすべきだとする点では一致していますが、破産者がその中立をしない場合については考えが分かれています。三四七条の債権者の同意による破産廃止を類推適用して職権によっても破産裁判所は破産廃止決定をすることができるとする見解もありますが、同条は、復権や法人継続の意見を持つ破産者の自発的申立を前提とする規定であるため、破産者の申立のない場合にまで類推できるかどうかは問題があります。これに対し、三五三条の破産財団不足による破産廃止の規定を類推適用し破産管財人の申立または職権により破産廃止決定をしようとする見解があり、この考え方は、三五三条の趣旨は破差財団がきわめて貧弱で破産手続の費用が不足であることが明らかであるため、破産手続の続行不可能な場合の措置を定めたものであるところ、債権届出期間に届出債権が皆無である場合も、その後の破産手続の続行が不可能である点で、財団不足の場合と異なるところはないからであるとしています。しかし、届出債権が皆無の場合と財団不足の場合とでは全く事情が異なり、これを同一視していいのかどうかは、はなはだ疑問があります。なお、どの条文によるということではなく事の性質上破産終結決定できないので破産廃止によるべきだと解する立場もあります。
破産法二八二条に準じて職権で破産終結決定をすぺきであるとする考え方は、破産者が三四七条に準じて破産廃止の申立をし、それに応じて破産裁判所が破産廃止の決定をすることは認めますが、その申立がなかった場合に関しては、配当による破産の終結決定に関する二八二条について、破産手続を続行すべき余地がなくなった場合の規定であると解し、この点でこの規定を届出債権者皆無の場合に準用できるとしています。基本的には、この見解が妥当です。しかし、法は期間経過後の届出にも一定の制限をつけてはいますが、その効力を認めているのであるため期間内に届出が皆無であったことのみにより、常に直ちに破産者の申立権が生じ、あるいは裁判所に職権による破産終結決定をすべき義務が生じるとするのは問題が残り、他に債権届出の見込がないことをも要件とすべきです。
届出債権を債権確定前に取り下げられることには争いがありませんが、確定後も取り下げられるがどうかについては見解がわかれています。消極説は、債権確定後の債権表の記載は確定判決と同一の効力を生じるので民事訴訟法二三六条一項の終局判決確定の場合に準じて、届出債権の取下は認められないとしますが、積極説は、債権者がその権利を行うことを欲しないで取り下げたのに、これを無効として破産財団より配当するのは妥当でなく、その取下により破産財団から弁済を受ける権利を放棄したものと認めることは他の居出債権者の利益となるから取下を妨げる理由は見あたらないとしています。この場合の取下の意義を将来に向って破産手続に参加しない趣旨の意思表示とみれば、積極説によってさしつかえないというべきところ、償権者の全員が居出債権を取り下げた場合には、結果として届出債権者が皆無の場合と同じことになるので、やはり前記議論が妥当とることになります。

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