債務名義に対する異議

終局判決や執行力ある債務名義の在する破産債権については、誰が誰を相手どって、どのような訴訟を提起しなければならないのでしょうか。すでに破産債権者と破産者との間に訴訟が係属しているときはどのような措置を講じるべきなのでしょうか。調査手続において、終局判決や執行力ある債務名義の存する破産債権に対して異議が述べられたときは、異議者が破産管財人であると破産債権者であるとを問わず、すべて異議者側に起訴責任があり、しかも異議者がその異議を貫徹するためにとりうる方法は、破産者がすることのできる訴訟手続にかぎられます。無名義債権と逆に異議者に起訴責任を負わせたのは、終局判決という既判力ないし少なくとも権利の存在についての高度の推定力を有する裁判の存在や、すでに執行力ある債務名義を有しもともと破産者に即時に執行できたはずである破産債権者の優越的地位を尊重する趣旨からです。したがって異議の対象が、優先権の存否とか破産債権としての適格性とかのように、終局判決ないし債務名義と無関係の場合には、無名義債権の確定の方法によらなければなりません。

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有名義債権に対する異議を貫徹する方法は、破産管財人が否認権を行使するときは、破産者がすることのできる訴訟手続にかぎられず、一般に否認権行使の方法として許されている手段によることができます。そこで破産管財人が調査期日前にすでに、否認の請求の申立または否認の訴えの提起をしていれば、それをそのまま維持すればよく、そうでない場合はあらたに提起すればよいことになります。すでに破産債権者と破産者との間に、訴訟が係属している場合でも、破産管財人はこれを受継しなければならないことはなく、あらたに否認の請求もしくは訴えによることができます。破産債権者は、自分で否認権の行使をすることはできませんが、破産管財人が否認権の行使として異議ある破産債権の不存在確認を求めているときは、これに共同訴訟参加することができると解されます。
終局判決であれば、確定、未確定を問わず、また給付、確認、形成の種類を問いません。しかし破産債権の存在を、判決主文中で肯定するものでなければならず、たんに判決理由中でそれを認めているだけでは足りません。終局判決については、執行文の付与は必要ではありません。確定した支払命令、仲裁判断のように、確定判決と同一の効力を有する債務名義も終局判決と同様に考えられます。確定した外国判決に執行判決がともなっている場合は執行力ある債務名義となりますが、それがなくても、終局判決にはあたらないとしながらこれに準ずるものとして破産法二四八条一項を準用した判例があります。
執行力のある債務名義は、ただちに強制執行をなしうる文書、つまり債務名義の執行力ある正本をさし、それゆえ執行文を要する場合には、それが付与されることを必要とします。執行力ある債務名義の例としては、仮執行宣言付支払命令や公正証書などがその典型的なものですが、このうち仮執行宣言付支払命令については、執行文を必要としません。認諾調書、和解調書やその他の裁判上の和解と同一の効力を有する債務名義については、既判力を認め、終局判決と同様に執行文の付与を不必要とする説と、既判力を否定し、公正証書と同様に執行文の付与を必要とする説とが対立しています。
終局判決もしくは執行力ある債務名義が、破産宣告時までに成立していることを要するか、あるいはその後に成立したものでもよいかについては、宣告前説と宣告後説とが対立していますが、後者が通説になっています。
破産者がするこどのできる訴訟手続は、破産宣告がなければ破産者がすることのできる手続をいい、一般的に終局判決または執行力ある債務名義に対し民事訴訟法により許された攻撃方法を指します。例えば確定判決に対する更正の申立、再審の訴え、仮執行宣言付支払命令に対する異議、執行文付与に対する異議または訴え、執行力ある債務名義一般に対しては請求異議の訴え、未確定終局判決に対する上訴等です。給付判決や公正証書に対しては、請求異議の訴えを提起するべきか、債務不存在確認の訴えを提起すぺきか。前者が通説です。和解調書や調停調書等については、これらに既判力を認める立場に立てば、確定判決の場合と同じく、更正の申立、再審の訴えの方法も許されることになります。
前述した破産者がすることのできる訴訟手続には、当然受継が前提となるものがあります。例えば未確定終局判決に対する上訴の場合には、異議者は訴訟を受継したうえで、上級審での手続を続行し、あるいは上訴を申し立てることになります。その未確定終局判決が手形判決であれば、受継をして、異議審の手続きを続行し、あるいは手形判決に対する異議を申し立てます。また仮執行宣言付支払命令の場合にも、破産宣告により中断した督促手続を受継したうえ、民事訴訟法四四○条の異議を申立てます。これに述べた場合と異なり、受継が前提となるものではありませんが、例えば確定判決に対する再審訴訟や請求具議訴訟等がすでに係属していて、破産宣告により中断している場合があります。これらの場合には、やはり異議者はその受継により、異議を貫徹しなければなりません。この場合は、請求の趣旨を確認の訴えに変更する必要があります。なお異議者が訴訟の受継をしない場合、異議を述べられた破産債権者のほうから、受継の申立てをすることができます。

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