破産確定訴訟の抗弁

破産債権の調査に際して異議を述べ、その確定訴訟の被告となった者はどのような抗弁を主張することができるでしょうか。例えば他の破産債権者がその被告である場合に、破産者の有する取消権、解除権や破産管財人の有する否認権を行使することはどうなるでしょうか。異議者たる被告は、原告の請求を排斥し異議を貫徹するためにあらゆる必要な防御方法を提出できるとされています。これは調査手続で提出していたか否かにかかわりなく、債権確定訴訟で提出できます。異議の理由を調査期日で述べたとしても、これには拘束されません。したがって、破産債権に関する原告の主張を排斥するのに適する実体法上の事由で抗弁となりうるものは、どのようなものでも主張できるはずです。抗弁には事実抗弁と権利抗弁の二種類があります。前者は、抗弁の基礎となる事実を主張すれば足りるものであり、これについてはこの原則がそのまま該当し問題はありません。ところが後者は、私法上の形成権もしくは抗弁権の行使を伴う点に特色があり、抗弁の基礎となる事実の主張のほかその行使の事実の主張もしくは訴訟上での行使がなされなければなりません。この場合、権利者によって行使された事実を主張するときは、この事実抗弁の場合と同様に考えてかまいません。しかし、訴訟上その行使をするときは、行使者はその権利を有していなければならず、無権利者はその行使をすることはできません。したがって、権利抗弁の行使の場面においては、その行使者たる被告に、そのような権利行使をする実体法上の権限があるかどうかが確かめられなければなりません。この点で前述の原則は修正されます。

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破産財団の管理処分の権限は破産管財人に専属し破産者が有する権利のうち、破産財団に属するものは破産管財人がそれを一切行使できるため、当然意思表示の取消、契約の解除をもなす権限を有し、破産管財人はこれらを抗弁として行使できることになります。さらに破産管財人は否認権を有するため、否認の抗弁を行使できることも問題ありません。また債権の消滅により直接に利益を受けるものは、時効の当事者としてこれを援用できることについては異論がありませんが、破産債権の消滅により直接の利益を受けるものは、破産財団にほかなりません。したがって破産管財人は、消滅時効の援用をなしうることも当然です。破産管財人が、破産財団所属債権を自働債権とし、破産債権を受働債権として、相殺ができるかどうかについては説がわかれています。肯定説は、相殺を有効とし、ただ相手が十分資力を有するのに取立をなさず相殺した場合は、善管注意義務違反の責任を追及されるだけであるとします。この説に立てばもちろん、否定説によっても、それは相手が無資力というような特別の事情があるときは相殺を有効とするため、そのような場合には、破産管財人は相殺の抗弁を提出できます。保証人が破産宣告を受けたときは、債権者は破産債権者としてその権利を行使することができます。しかしこの場合、破産管財人といえども催告、検索の抗弁を主張することはできません。主たる債務者が弁済資力を有すると否とを問わず、またその債務の弁済期が到来したと否とを問わず、債権者はその債権の全額につき権利行使ができるのであり、保証債務の補充性は失われているからです。
異議者が破産債権者の場合。破産債権者は破産管財人のように破産財団に関する管理処分権を有しません。したがって、破産債権者が破産者の有する権利を行使しうるかどうかの判断は、債権者代位権にもとづきそれが可能かどうかということにかかってきます。債権者代位権によれば、債務者の有する形成権をも行使しうることは通説の認めるところであり、破産債権者が異議を述ぺた場合の債権確定訴訟によく似た配当異議訴訟においては、債権者は、債務者のあらゆる抗弁を提出することができ、またその前提として、債権者代位権にもとづき相殺権、取消権等を行使することができるとされています。破産の場合には、債務者の有する権利のうち破産財団に属するものは、すべて破産管財人の手に移り債務者のもとには何も残らないので、配当異議訴訟のようなことがいえるかどうかは疑問です。会社更生法における債権確定訴訟の場合につき、これをはっきり否定する説があります。この説によれば、各債権者の権利は更生手続上の手段により保全されるのであり、また会社の財産上の権利はすべて管財人の管理に服しているため、個別債権者が債権者代位権を行使することはできないとされます。破産債権確定訴訟のケースではありませんが、破産債権者は破産者に代位して相殺することはできないとした判例があります。
消滅時効の援用については債権者の代位行使を認める説があります。この説によると、代位権は民法四二三条によるのでなく、破産債権者の異議権に内在する破産法上特有のものであるとし、之を要するに異議の原因たるや各債権者所属の個人的理由に墓くに非ずして債務者所属の債務消滅原因を主張するものに外ならないのであるから、時効の援用にせよ弁済、相殺、免除等と均しく債務消滅原因として債務者が之を主張し得る限り各債権者が代位して之を異議の理由として主張し得るのであると説いています。判例には、時効の援用につき、これを認めるものと否定するものとがあります。両者ともに、援用権を行使できる時効の当事者とは時効により直接利益を受けるもののみをいい、他の債権者の債権の時効消滅により自己の債権の配当額の増加を生じさせる場合には、間接の利益を受けるにすぎないから当事者ではなくみずから独立して援用権の行使はできないとしながら、前者は、配当額を増加させることも債権の保全行為にあたるとして民法四二三条による代位行使を認め、後者は、破産管財人が援用しないかぎり代位行使もできないとしています。
以上のとおり消滅時効の援用に関してだけは、これを認める学説、判例も存在します。しかし、これらが時効の援用以外の権利抗弁すべてにまで、債権者の代位行使を認めているものと解することは困難です。時効の援用の法的性質については訴訟法説と実体法説とが対立しますが、前者によれば、時効期間の経過により確定的に権利の得喪を生じ、援用は訴訟における攻撃防御方法にすぎないとされ、これは古くからの判例および学説のとる立場でした。この見解に立てば、時効の援用は、権利抗弁の権利の行使と異なり、すでに存在する事実を主張するにとどまるものであって事実抗弁と同様に考えられるため、破産財団の管理処分権が管財人に専属しているとしても、破産者が時効の当事者といえるかぎり時効援用の権限は破産もまたそれを有するものというべきです。破産者に権限があるのならその債権者にもその代位行便を認めることは可能であり、したがって時効の援用についてはこれを否定する説があらわれても不思議ではありません。つまり、これら代位行使を認める学説、判例も、消滅時効の援用の場合は、破産者がその権利を有するから認めたものと解しうるのであって、そもそも破産者の有しない取消権、解除権のような権利についてまで認める趣旨ではありません。したがってこれらの学説、判例をもって、権利抗弁の代位行使を否定する根拠とはなしえません。なお会社更生の場合に消滅時効の援用は、これを権利抗弁と解するとしても、いかなる意味においても更生手続にとって不利益となることはありえないため、更生債権者、更生担保権者も、これを抗弁として提出できると解されるとする説があり、時効の援用だけを他の権利抗弁と区別する見解もあります。以上のことから結論としては、取消権、解除権のような権利抗弁については、破産債権者はその代位行使をなしえないと解されます。

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