別除権に対する弁済

別除権は、破産手続によらないで行使できる権利であり、別除権の目的物が換価された場合、これによって得られる金銭は、配当手続きによらず、まず別除権者に対する支払にあてられ、余剰が出た場合にかぎって、一般の破産債権者に対する配当にあてられます。破産管財人は、監査委員の同意または裁判所の許可を得て別除権を承認し、または相当の対価を支払って別除権の目的物を受け戻すことができます。別除権を行使するかどうかは別除権者の自由ですが、別除権者がいつまでもその熊度を決定しないで放置した場合は、破産執行の遂行に支障をきたすこととなるので、破産管財人は、民事訴訟法によって別除権の目的物である財産を換価することができ、別除権者はその手続を拒むことができません。破産管財人が、別除権の目的物である財産をみずから民事訴訟法によって換価した場合、破産管財人は、別除権者の受けるべき金額が既に確定していれば、換価によって得られた金銭の中から別除権者にこれを支払い、残額があれば、一般の破産債権者に対する配当にあてるためこれを破産財団に組み入れることになりますが、別除権者の受けるべき金額が未確定の場合には、換価によって得られた金銭を別個に寄託しなければなりません。この寄託金は、別除権の本来の目的物に代位するものであるため、別除権者は、この寄託金について別除権を保有することとなります。

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例えば、流質権のように、別除権者が法律に定めた方法によらないで別除権の目的物を処分する権利を有するときは、破産管財人の申立てによって、裁判所が別除権者の処分期間を指定し、別除権者が、その期間内に処分をしないときは、別除権の目的物を処分する権利を失いその結果、破産管財人が別除権の目的物を換価するに至ります。
前述のとおり、別除権の目的物の換価についても、破産法は、競売手続によることを原則としていますが、実際は、破産管財人と別除権者との話合いによって任意売却の方法をとる例が多く、任意売却の方法によれば、別除権者の債権を弁済してなお余剰がでる見込があるのに、別除権者があくまでも競売手続を強行しようとするときは、破産管財人において、有利な売却先をみつけたうえで、別除権者に対する債務を弁済し、別徐権の目的物を受け戻してみずからこれを換価することもできます。しかし、多くの場合、別除権者としても、競売手続による換価金以上の支払を受けられれば、あえて別除権を行使するまでもないことであるため、実務上は、別除権者が破産管財人との話合いによる任意売却の方法に同意し、両者相協力して有利な売却をすすめ、その結果、競売手続による換価見込額以上の金銭が得られた場合は、権利の一部を放棄して、売得金の一部を、一般の破産債権者に対する配当にあてるため、破産財団に組み入れることを承諾するという運用がなされており、このような実務の運用は、破産管財人の努力に負うところが多い。
破産管財人が破産財団に属する債権を取り立てる場合に、その債権の債務者が、法律行為の無効、取消等破産者に対して主張しえた抗弁をもって破産管財人に対抗しうるかどうかは非常に難しい問題です。この問題については、破産管財人の法律上の地位をどのようにみるかによって結論が異なってきます。
破産管財人の管理処分権の対象となる破産財団は、破産宣告当時における破産者の現有財産のみでそれ以上のものではないと考えれば、破産者の有していた債権に抗弁が付着していた場合には、その抗弁が付着したままの状態で破産財団が構成され、それが破産管財人の管理下におかれるにすぎないということになるので、破産者の債務者は、破産者に対して主張しえた抗弁をもって破産管財人にも対抗しうるということになります。ところが、通謀虚偽表示の抗弁に関する大判昭和八・一二・一九は、破産財団に属する債権を行使する破産管財人は、債権者たる破産者に対しても又その債務者に対しても第三者の地位にあり、したがって民法九四条二項の適用を受けるとして、約束手形の受取人が破産宣告を受けた場合に、振出人は、破産管財人に対し、手形の振出が受取人と通謀した虚偽の意思表示であることを主張できない。旨判示し、同じく最判昭和三七・一二・一三は、破産者がその相手方と相通じてなした虚偽の意思表示による代物弁済契約は無効であるが、破産管財人はその当事者とは異なる第三者であり、かつ善意の第三者とみるべき者でもあるため、その無効は、これをもって破産管財人に対抗できないご旨判示しています。
破産管財人を、破産者とその債務者との関係において、破産者と同一の地位を承継した者とみるか、あるいは当事者とは全く別の善意の第三者とみるがの問題であって、見解の別れるところですが、破産債権者の中に一人でも善意の者がいるときには、債務者は、通謀虚偽表示による無効、詐欺による取消の主張等をもって破産管財人に対抗できないと考えるのが多数説です。

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