破産財団の換価

破産管財人は何時どのような方法で破産財団に属する財産を換価するのでしょうか。監査委員の同意または破産裁判所の許可を要するのは、現実にはどのような場合なのか。あるいは別除権の目的である財産を破産管財人自ら換価した場合には、別除権への答弁はどのようにして行なわれるのでしょうか。そして破産管財人が破産財団に属する債権を取り立てる場合には、その債権の債務者はどのような抗弁を主張することができるのでしょうか。破産手続は、金銭配当を目的とする手続であるために、破産財団に属する財産はすべて金銭化されなければなりません。破産財団に属する財産を金銭化する手続を破産財団の換価手続といいます。破産財団を換価するための処分権は破産管財人に専属するので、換価はすぺて破産管財人によって行われます。

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破産財団の換価の時期については、破産法上二つの原則的制限が定められています。
一般の債権調査終了前、破産宣告と同時に債権調査の期日が裁判所によって指定されますが、この債権調査の期日が終るまで破産財団の換価は許さないとするのが破産法上の第一の原則的制限です。これは、破産債権の範囲が確定するまでは、その配当にあてることを目的とする換価の範囲も不明であるとの理由にもとづく制限です。しかし、遅滞なく換価しなければ、破産財団に損害を生じるおそれがある場合には、一般の債権調査期日終了前であっても、必要に応じて、監査委員の同意、監査委員を置かないときは裁判所の許可を得て換価できるとの例外規定があります。実際には、換価予想額が破産債権の予想額をはるかに下回る事例が多いという前提のもとに、早期の換価が破産財団にとって有利な結果をもたらす事例が多いこと、早期の換価が早期の配当につながること、つまり一日でも早く一銭でも多くとの理由から一般の債権調査期日の終了を待たないで換価しているのが実情です。
換価の時期に関する第二の原則的制限は、強制和議の提供があった場合の制限です。つまり一般の債権調査終了前に強制和議の提供があった場合は、その手続が落着するまで原則として換価が許されません。これは、強制和議の成立によって、換価を必要としなくなる場合が多いということと換価によって破産者の営業の継続が困難になると和議による利益が受けられなくなるおそれがあること等を考慮した制限ですが、この場合にも必要に応じ破産法一九六条二項の例外規定によって処理することができます。
監査委員の同意を必要とする破産管財人の行為は、必ずしも換価処分にかぎらないと同時に、破産管財人による換価のすべてについて監査委員の同意を必要とするものでもありません。不動産に関する物権、登記すぺき日本船舶およぴ外国船舶の任意売却、鉱業権、漁業権、特許権、意匠権、実用新案権、著作権および著作隣接権の任意売却、営業の譲渡、商品の一括売却については、価額のいかんにかかわらず、すべて監査委員の同意を必要としますが、動産の任意売却、債権および有価証券の譲渡については、一○万円以上の価額を有する価額にかぎって監査委員の同意を必要とし、一○万円未満の価額のものについては必要としません。換価の時期的制限に対する例外規定により換価する場合は、必ず監査委員の同意を得なければなりません。監査委員を置くかどうかは、第一回の債権者集会で議決される事項であるため、第一回債権者集会前に、監査委員の同意が必要とされている換価をしようとするときは、これについて裁判所の許可を得なければなりません。監査委員を置かない場合は、債権者集会の決議を必要とし、急迫の必要がある場合にかぎり、例外的に裁判所の許可を得れば足りるとするのが破産法上の建て前ですが、実際には、すべて裁判所の許可を得ることによって処理されており、監査委員の同意に代る債権者集会の決議を求めた例を知りません。いずれの場合も、破産管財人は、遅帯のおそれがある場合を除き、破産者の意見を聞かなければなりません。破産財団の換価に必要な監査委員の同意、債権者集会の決議、裁判所の許可等は、すべて破産管財人に対する内部関係で破産管財人の行為を制限したにすぎないものであるために、これらの制限に反して換価行為がなされた場合でも、外部関係においては、これらの制限のあることを知らない善意の第三者に対抗できません。
破産法は、不動産、船舶、鉱業権、漁業権、特許権、意匠権、実用新案権、著作権および著作隣接権の換価は、民事訴訟法によると規定しているので、これら不動産等の換価は、民事訴訟法による競売を原則としているようにみえますが、実際は、任意売却によるほうが有利な条件で換価できる場合が多いところから、ほとんど任意売却の方法によって処理されています。つまり破産財団の処分権は破産管財人に専属するので、この処分権にもとづいて、少しでも有利な条件で無分できる相手方を求め、監査委員の同意または裁判所の許可を得て売却処分しているのが現状です。しかし、どうしても任意売却ができない場合は、民事訴訟法による強制競売によって換価することになります。
破産者の営業自体に対する個別的金銭執行は、民事訴訟法上認められていませんが、現実に、営業自体が全体としてまとまることにより、個別の財産的価値の集積を上回る財産的価値を有する場合があるので、このような場合、破産管財人はこれを任意売却することによって換価できます。
民事訴訟法による競売の場合、商品の一括売却も認められていませんが、破産管財人は、一括売却が換価方法として有利であると認めたときは、任意売却の方法によって商品の一括売却をすることもできます。
動産の換価についても、任意売却が実務上の原則です。民事訴訟法によって換価することを定めた破産法二○二条に同法一九七条七号の動産に関する規定が含まれていないため、そもそも動産について民事訴訟法による競売が認められるかどうかの理論上の問題もありますが、それはともかくとして、現実に動産の競売は破産財団にとって不利益となる場合が多いので、破産管財人としては、あくまで任意売却の努力を重ね、最後に万策尽きたときは、権利の放棄によって処理しているのが実情であり、動産について競売を求めた事例を知りません。最終的に権利の放棄によって処理するのは、動産の競売に理論上の難点があるとともに、破産管財人の努力にもかかわらず最後まで任意売却できないような動産について、たとえ競売をしてみても、その手続費用すら償えない場合が多いので、無駄な費用と手続を避けるためです。
債権およぴ有価証券の換価は、破産管財人の管理処分権にもとづく債権の取立、売買の形式による譲渡等の方決によって行われます。土地、建物、商品の引渡を求める債権等金銭債権以外の債権については、債権そのものを売却するか、その目的物を取り立てたうえでこれを売却する方法によって金銭化することになります。

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