損害の公平分担

損害賠償は客観的に生じた損害を補填するのが本質であるために、加害者の故意、過失の内容や支払能力、被害者の状態心情や経済状態などは問題とされず,発生した損害だけが考慮の中心になるのが建前です。しかし、これらの事情を全く考慮しないということは、実際上必ずしも公平とはいえず、具体的に賠償額を決めるときにこれらを斟酌する必要があります。いわゆる賠償をどの程度に分担させるのが公平かという問題になります。これは、過失責任主義の下においても、相当因果関係論として、また過失相殺として考慮されているところではありますが、事は具体的事件について特殊具体的な公平を図ることが眼目とされねばならないために、信義誠実の原則の適用が期侍されるところです。

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現行の損害賠償制度では個人責任、個別主義の建前に立って、直接の加害者に損害を負担させるのですが、近代的企業の下においてこれに徹底することは妥当ではありません。そこで損害賠償制度では損害を誰に負担させるのが最も公平であるかについて考え直されねばなりません。この点については、前述のように、過失責任主義を補うものとして、特殊の場合につき報償責任とか危険責任とかいう理論の下に無過失責任の理論が展開され、これがかなり負担の公平に役だっています。しかし、これについてはさらに程度の進んだ立法化が要請され、また従来の個人本位の思想に執着せずに社会連帯思想による社会的、団体的責任が新たに考慮されねばなりません。このような立場から事が考えられるということは、損害の賠償というよりも損害の補償ともいうべきであって、そこに損害賠償の社会化という事態がみられます。この具体的方策として保検制度、労働者災害補償保険法、自動車損害賠償保障法、厚生年金保険法、健康保険法その他各種の損害保険法などが考えられます。損害保険の制度は、不法行為、損害賠償の観念とは一応別個のものといわねばなりません。しかし、保険制度の適切な運営は社会的な損害の補充に関する合理的制度を創造すると同時に、不法行為についても、個人の過失責任による損害の填補という基本観念に即しつつ、その観念を転回し技術化する契機となり、損害賠償制度の社会化に役だつもので、今後の不法行為の問題の焦点といえます。

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