不法行為成立の特殊な場合

民法では709条に定めた不法行為の一般的成立要件のほか、特殊な成立要件によって成立する不法行為の類型を認めています。責任無能力考の監督者の責任、使用者の責任、注文者の責任、土地工作物の占有者及び所有者についての責任、動物の占有者の責任、共同不法行為者の責任がこれになります。これらは、いずれも特殊な理由によってその責任を生じたり、拡張したりしたものです。つまり、故意・過失の挙証責任を転換し、あるいは全くの無過失責任を認め、あるいは連帯責任を認めているもので、それゆえに特殊な不法行為と呼ばれているのです。

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幼児、児童や精神病者などは責任無能力者として不法行為責任を負いませんが、この者が違法な侵害行為によって他人に損害を加えた場合には、この者を監督する法定の義務ある者、親権者、後見人など、または法定義務者に代わってこれを監督する者、幼椎園主や保母、小学校長や担任教師などが,賠償責任を負うぺきものとされています。この責任の根拠は、被害者の保護を厚くするとともに、監督義務者の注意をうながして責任無能力者による加害行為を滅少させようとする点にあると説かれています。
ある事業のために他人を使用する者及び使用者に代わって事業を監督する者は、被用者がその事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償する責任を負います。例えばバス会社の運転手が運転中に信号を見誤って人身事故を起こし、家事使用人が家事を行うにつき第三者に不法行為を行って損害を生じさせたような場合に、その使用者である会社および雇主が賠償責任を負うというのがこれであり、広く使用者責任と呼ばれています。これは、特に近代的企業においてその使用人の行為につき企業責任を認める根拠として重要な意義を有しますが、その適用範囲はきわめて広汎です。
民法が使用者責任を認める根拠としては、他人を使用しその労働力を利用してその活動範囲を払大する者は、自らこれをなすと同じであって、それだけ社会的勢力を拡張し利益を収める可能性を増大しているのであるために、その拡張された活動範囲内において、第三者に生じさせた損害について賠償責任を認めることは損害の公平なる分担という理想に適するということ。被用者は一般的に資力の薄弱な者であるために、加害行為をした被用者だけが賠償責任を負うとすれば、被害者は事実上損害賠償を満足にとることができなくなるであろうことを考慮し、使用者に賠償責任を認めて被害者を保護しようということを挙げることができます。
請負人は、独立の立場においてその判断に基づいて仕事の完成を図るものであるために、指図をしたような時別の場合を除いて、その不法行為について注文者は責任を負いません。これは当然のことであって、715条の通用がないことを、注意的に規定したものと理解されます。
土地の工作物の設置または保存に暇疵があることによって、他人に損害を生じさせた場合には,その占有者または所有者が責任を負います。また、竹木の栽植または支持に瑕疵があって他人に損害を生じさせた場合も同様です。ここに、所有者の責任は、占有者の責任が生じない場合にのみ負担する第二次的な責任ではありますが、いかなる免責事由も認められないために、いわゆる絶対的な無過失責任です。この責任の根拠は、危検をともなう施設を利用しまたはそれを所有する者は、その施設の設置、保存に万全の注意を払うべきであり、もしその施設のために他人に損害を与えた場合はその利用者またば所有者が賠償するのが公平に通するという考え方にあります。いわゆる危険責任の理論です。
飼犬が他人に喰いついて怪我をさせたような場合には、動物の占有者または保管者は、その動物が他人に加えた損害を培償する責任を負います。この責任の根拠は、動物は人に危害を加える可能性を有するものであるために、その占有者または保管者にその損害の発生予防の義務を負わせ、その注意努力と責任を加重しようとする点にあります。

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