不作為義務

工作物を設置してはならない旨の債務名義があるのに、Bがこれに違反して工作物を設置したので、Aがその徐却の授権決定にもとづき工作物を除却したところ、Bはその後再び工作物を設置しました。Aは再度その除却のための授権決定を申し立てることができるでしょうか。この場合、Aが代替執行の授権決定にもとづき違反工作物を除去すれば、それによりその債務名義に掲げられた不作為義務は消滅するので、その後Bが再び工作物を設置したときは、別途その工作物収去の債務名義を取得し、それにもとづいて、その工作物の収去を求めなければなりません。

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実体法上、広義に債務者が一定の行為をしない義務を負うべき場合としては、その内容で分類すると、債務者が債権者の態度には関係なく一定の積極的行為をしないことを内容とするものと、債務者が債権者または第三者の一定の行為を受忍すべきことを内容とするものとに分けることができます。前者の不作為義務としては、競業をしない義務、汚水を流水しない義務等があり、設問の工作物を設置してはならない旨の債務名義の実体的権利に対応する工作物を設置しない義務も、この範疇の不作為義務になります。これに対して、後者の受忍義務としては、債務者が債権者の通行を忍容する義務、債務者が土地への出入を妨害しない義務等があります。また、上記不作為義務をその態様で分類すると、特定の債権を譲渡しない義務のように一回的な不作為義務、毎夜一〇時以後は騒音を発しない義務のように反覆的ないしは回帰的な不作為義務および一定の高度以上の工作物を設置しない義務のように継続的な不作為義務があります。設問の不作為義務は、工作物を設置しないという継続的な不作為義務です。さらに、上記不作為義務をその違反結果により分類すると、設問のように工作物を設置しない義務に違反して設置された工作物のように、違反の結果が有形的に顕在する不作為義務と、悪臭を発しない義務に違反して発散された悪臭のように、その違反の結果が有形的に顕在しない不作為義務とがあります。
以上のように、実体上の義務としての不作為義務を分類することは、請求権の実現としての債務名義の内容の差異というよりも、この不作為義務違反に対する執行方法に著しい差異が生ずることに意味があるわけです。
債務者の義務の態様を執行方法と関連して考えると、現行法上は、それが代替的作為義務であるときは代替執行により、それが不代替的作為義務であるときは間接強制を認め、そして、債務者の不作為義務については、特に、その義務の不履行によって生じた違反の結果の除去についても、上記代替執行を認めているのです。しかし、不作為義務の履行を確保するための代替執行であるとか、また、不作為義務の不履行による違反結果の除去までの上記間接強制が許されるかどうかは、問題のあるところです。しかし、設問の工作物不設置の不作為義務に違反して、債務者が工作物を設置するという違法な有形的状態を作出した場合については、それは不作為義務の履行ではなくして、むしろ作為的請求によらなければならないものですが、上記のとおり、民法四一四条三項は、不作為義務の執行を代替執行によらしめています。つまり、債権者は、第一審の受訴裁判所の授権決定にもとづき、債務者の費用で、みずからまたは第三者に委任して、違反結果の除去をすることができるとしているのです。したがって、この違反結果の除去の手段としての代替執行は、執行債権たる不作為義務の履行の実体的請求権の実現方法として定められているものと解されるのです。
代替執行は、代替的作為義務の執行のみならず、不作為義務の違反の結果の除去にも認められますが、この場合の代替執行とは、裁判所の授権決定にもとづく代替行為者が債務者にかわってする除去行為、代替的実行を指します。つまり、授権決定は、債務者の費用で、債務者にかわって債権者がみずからまたは第三者をして、その違反の結果の除去をしまたはさせることができる旨を命じる裁判です。授権決定は、債権者の申立てによらなければなりませんが、第一審の受訴裁判所が執行機関として管轄するものとされています。この授権決定は、前述のように、債権者自身または第三者をして債務者にかわって一定の行為をなさしめる権能を授与する裁判です。なお、授権決定には、行為をなすべき第三者を特定してもかまいませんが、特定していない場合には、執行債権者は、みずからあるいは任意の第三者をして所要の行為をさせることができます。

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