登記手続を命じる義務の履行

登記手続を命じる確定判決に対して、債務者が判決後の和解を理由に請求異議の訴えを提起しました。債務者は、あわせで執行停止決定を申し立てることができるでしょうか。この場合、債務者は、執行停止決定を申し立てることはできません。ただし、例外として、登記手続が反対給付を条件として命じられている場合については申立てができると解されます。民訴法七三六条は、意思陳述を命じる判決が確定したときは当該意思陳述があったものとみなす旨を規定しています。これは、一定の法律効果を伴うべき意思表示を債務者にさせることを目的とする請求は、債務者に現実に意思表示をさせること自体を本来の目的とするのではなく、これによる法律効果を生じさせることに主眼があるものである点を考慮し、判決の確定によって意思表示があったものと擬制して執行手続を省略したものです。そうしてここにいう意思表示義務には債権者以外の者や官庁に対して意思表示をする義務も含まれると解されるため、登記手続を命じる判決についても、規定によって債務者が登記申請をした効果が判決確定とともに生じることになります。

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登記申請は一定の方式を必要とする行為であるため、判決によって登記申請の意思表示が擬制されただけで直ちに登記申請行為として十分な要件が備わったことにはなりません。そこで不登法二七条は、登記手続を命じる判決による登記申請につき共同申請主義、当事者出頭主義の例外を認め、当事者の一方のみの出頭による登記申請を可能ならしめています。
本来からいえば、登記手続をするとは、登記所に出頭し、一定の内容の登記の申請行為を法定の方式に従って実行することであるはずですが、不登法が前記のような規定を設けて、判決により擬制された意思陳述を第三者たる登記所に到達させる手続を法定している結果、登記手続をなすぺき旨を訴求する者としては、単に手続を命じる旨の判決を獲得すればたり、したがってまた、登記手続義務を負う者も現実に登記所に出頭して申請行為をなすぺき義務までの履行は強制されません。したがって、登記手続を命じる判決の確定によって給付は完了し、その後で債権者が判決によって登記申請をする行為は、広義の執行行為とよばれることはありますが、本来の訴訟法上の執行ではなく、判決の利用行為にすぎないとされます。
判決確定後の債権者による登記申請およびこれにもとづく登記の実行は強制執行手続ではないため、この段階で請求異議の訴えを提起しても却下を免れず、したがってまた訴え提起に伴って執行停止決定を申し立てる余地もないと解するのが通説、判例です。
この通説、判例に対し、積極的な反対説ではありませんが、検討の余地があるとする見解があります。登記申請手続が現実になされないかぎり、擬制された意思表示の効果は不確定であるため、その効果発生を阻止するための執行停止の申立てを許すべきだという見解も一応考えられるところですが、前記のような不登法の規定に照らせば、訴訟手続の目的はまさにこのような実体法上の効果の未確定な意思表示を擬制することに尽きると考えられるうえ、このような停止決定が執行機関でない登記官を拘束すると解すべき法的根拠を欠いています。
ただし、民訴法七三六条後段によれば、意思表示義務の履行が反対給付に係る場合には裁判長の命令により執行文が付与された時に意思表示があったものと擬制されることになり、意思表示が広く長訴法五一八条二項にいう条件に係る場合にも規定を類推適用すべきものと解されているので、この場合の執行文の付与を執行停止決定によって阻止できないかどうかが問題になります。一般に執行文の付与は現実の執行ではなく、その準備手続たる性格を有するため、執行停止決定があった場合に執行文付与が許されなくなるかどうかについては、これを肯定する説と否定する説とが対立していますが、この場合の執行文付与は、その効果からいって現実の執行行為と同視すべき実質を有するものであるため、執行停止決定によってこれを阻止できると考える余地はいずれにしてもあります。そのうえ、すでに債務名義が存在し、それに表示された債権が実体と符合しなくなったときに、これからなされようとする債権の実行のための手続を事前に阻止する方法がないというのはいかにも不当であるため、積極に解すぺきものと考えられます。

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