登記手続きを命じる判決確定後の強制執行

登記手続を命じる判決確定後、目的物件につき合筆または分筆登記がなされた場合、強制執行の手続はどうなるでしょうか。この場合、債権者は、目的物件につき民法四二三条の規定による債権者代位権にもとづき、分筆、合筆登記前の状態に復すべき変更登記をしたうえ、判決内容による登記手続を行ないます。登記権利者と、登記義務者の共同申請によって登記すぺき事項に、当事者の一方が登記の申請に協力しないときは、登記することができません。このような場合には、当事者の一方が相手方に対して登記申請をなすべき旨の訴えを提起し、その勝訴判決を得たうえで単独で登記を申請することができるのです。この場合は登記手続を命じる判決が確定することによって、債務者による登記申請の意思表示がなされたものとみなされるので、これによって判決の内容が実現されてしまったわけであるため、さらにその内容の実現のために強制執行をしなければならないという必要はないからです。したがって、判決には特別に強制執行のために執行力ある正本の付与をうける必要はなく、債権者は単独で不登法二七条によって判決内容の登記の申請ができるのです。

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反対給付のあった後に、登記申請の意思表示をなすべき旨を命じた判決、例えば登記権利者が代金を支払った後に登記手続をなすべしとした判決の場合には、登記権利者は反対給付があったことを裁判所に証明して、判決に執行力ある正本の付与を受けこれによって登記の申請をするのです。意思表示が反対給付と同時履行にかかる場合、または一定の条件にかかる場合にも、民訴法七三六条後段の適用があります。条件成就の事実が、実体法上債務者の挙証責任に属する場合、例えば、被告が平成○○年○月○日までに金○円を支払わないときは、被告は原告に対し○○土地につき平成○○年○月○日代物弁済を原因とする所有権移転登記手続をせよ。という判決については、債務者の債務不履行の事実は本来債権者に挙証責任はありませんが、そうすると債務不履行がないのに債権者単独で登記手続がされてしまうおそれがあり、その登記手続完了後はもはや請求異議などによって争う余地がないところから、債務者の利益を害することが大きいので、この場合は特に債権者に債務不履行の事実を証明する責を負わしめ、それによって執行力ある正本の付与をうけしめてから登記手続をすべきです。このように意思表示を命じた判決に、執行力ある正本の付与を要するとしたものについては、その執行力ある正本の付与を受けたときに債務者の意思表示があったものとみなされるのです。
土地の合筆とは、二筆の土地を合わせて一筆の土地として表示する登記であり、土地の分筆とは、一筆の土地を分けて登記簿上数筆の土地とすることをいい、分筆された土地はそれぞれ一個の物として取り扱われます。建物の合併の登記は、甲建物を乙建物の附属建物とする場合とか、甲区分建物を乙区分建物の表題部に登記する場合などに認められ、建物の分割の登記は、甲建物からその附属建物を分割して乙建物とする場合であって、これは登記簿上の手続きを意味し、建物の現状変更を必要としません。このように分筆、合筆して表示の登記をすることは、その所有者の自由です。したがって債務者は、たとえ判決確定後であろうとも、判決に表示された債務者所有名義の土地、または建物を合筆、または分筆してその登記をすることがありえます。このように分筆、合筆の登記がなされた場合には、債権者は判決内容の登記手続をしようとしても、登記原因を証する書面である判決の目的物件の表示と、登記簿上の物件の表示とが符合しないために、判決内容による登記申請は却下されることは明らかです。しかし、債務者のこのような行為によって債権者がせっかく取得した勝訴判決の内容が実現できないとすることは、裁判に不信の念を抱かせることにもなり、問題です。次にこの場合、債権者が判決内容による登記手続をするには、どのような方法があるかを検討します。
判決の更正を求め、判決正本と更正決定正本を添付して登記申請をする。判決書に違算、書き損じ、その他裁判所の意思と表示との不一致という誤りがあり、判決の内容を実質的に変更しないで、その誤りが明白な場合には、判決裁判所が決定でこれを更正することが認められています。このように更正決定は形式的な誤りがある場合に認められるのですが、しかし、実務上は当事者が最初から氏名や、目的物件の表示を過ったときにも、その誤謬はまったく当事者の責に属し、更正の対象にはなりませんが訴訟経済の立場から更正を認める取り扱いがなされています。ところが設問におけるように、判決確定後債務者の行為により分筆、合筆の登記がなされたために目的物件の表示が符合しないことになったことは、このいずれにも該当せず、判決の物件の表示にはいささかの誤りがなかったのであるため、更正の対象とはなりません。したがってこの方法は認められません。
分筆登記がなされた物件については、登記申請書に、判決における目的物件の表示と、分筆後の目的物件の表示を併記して、二個の不動産に対し判決内容の登記手続をします。登記官はこのような登記申請によって、登記原因証書である判決正本における目的物件の表示と、分筆登記後の目的物件の同一性が確認できるものと解されます。したが ってこれによって判決内容の登記手続ができると考えるのですが、登記実務上はたして認められるかどうか問題です。この方法は合筆登記のなされた物件に対してはできません。それは不動産の一部に対する登記手続ということになるからです。
債権者は、民法四二三条の規定にもとづき、債務者に代位して目的物件の表示を分筆、合筆登記前の状態に変更する登記申請をし、その登記がなされてから判決内容の登記手続を行ないます。債務者は確定判決の内容に適合した状態を実現すべき義務を負担しているところ、設問のように判決確定後にこれを分筆、合筆による変更登記をすると、前述のように判決に表示された物件と、登記簿上の物件の表示とが符合しないために判決内容による登記手続はできないことになります。この場合、債務者は分筆、合筆登記前の状態に復して債権者に対する登記手続をなすべき義務があるのであって、このことは確定判決の効力からして当然のことといえます。
この分筆、合筆登記は、そもそも権利取得者に対抗できない無効な登記といえるのであるところ、債務者が目的物件を分筆、合筆登記前の状態に復する登記をしない以上、債権者は、債務者に対する登記請求権を保全するために、債務者が申請すべき分筆、合筆登記前の状態に復すぺき変更登記を、かわって代位申請することができます。この場合は、実質的には変更登記ですが、登記実務上は、すでに分筆登記のなされた物件については、合筆の登記を、合筆登記のなされた物件については、分筆の登記をすることによって、分筆、合筆登記前の状態に復することになります。この登記申請にあたっては、判決正本を代位原因を証する書面として添付します。債権者は登記がなされた後に判決による登記手続をすることになります。債務者のなした分筆、合筆登記後に、新たに第三者の登記がなされているような場合は、どのようにすべきかが問題となります。例えば分筆された土地につき第三者のため所有権移転登記がなされていた場合には、債権者が確定判決前に、当該目的物件に対し登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分を求めていれば、債務者のなした分筆登記ならびに第三者に対する所有権移転登記は、仮処分違反の行為として無効であるため、問題はありませんが、もし、このような仮処分がなされていないときは、議論のあるところですが、債権者は第三者に対し別訴をもって当該登記の抹消登記手続を求め、勝訴判決を得て、その抹消登記手続、本件確定判決にもとづき前述の代位の登記と、判決内容の登記手続をするという複雑な問題が起こることになります。

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