仮執行宣言

登記手続を命じる判決に仮執行宣言を付することはできるでしょうか。この場合、登記手続を命じる判決に仮執行を付すことはできませんが、誤って仮執行宣言が付せられた場合には、判決は有効であり、債権者はその判決で単独で登記申請ができます。登記手続を命じる判決は、意思表示を目的とする給付判決である意思表示を目的とする請求は債務者の作為を目的とする請求の一種ではありますが、債務者に現実に意思表示をさせること自体よりも、その意思表示に付せられた法律効果が重要な意味を有するので、その執行方法として、民訴法七三六条は、意思表示をなすべきことを命じた判決の確定によって執行のあったものと擬制しています。したがって狭義の意味における執行は判決の形式的確定をもって終了します。もっとも登記手続を命じる判決は、当該意思表示の相手方として第三者である登記所になすべきことを命じているので、実際に登記手続を履行するためには、債権者が申請書に当該判決を添付して登記を申請することを要します。

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登記手続を命じる判決に仮執行宣言を付すことができるかどうかについては争いのあるところですが、判例、通説は消極に解しています。その理由として、民訴法七三六条によれば、確定を待ってはじめて判決で命じられた意思を陳述したものとみなされるので、仮執行宣言をもってかえることができないこと、仮執行宜言付の判決によって所有権移転等の登記手続をなしうるとすると、後日当該判決が上訴審で取り消された場合、登記に公信力はないので、債務者は最終的に当該不動産に関する権利を失うことはありませんが、債権者が登記を得たうえで当該不動産を第三者に処分しその旨登記がなされると、債務者は実際上多大の損害を被ることになり、また一方では原状回復により関係当事者の権利関係に混乱が生じることをあげます。これに対し積極説は、民訴法七三六条は、判決確定を陳述擬制の要件を定めたものではなく、その発生時点を原則として判決確定時としたにすぎず、意思表示を命じる判決でも、財産権上の訴えであるかぎり、仮執行宣言を否定する根拠に乏しいこと、また擬制による執行が一般の作為執行のたんなる圧縮形態にすぎない点からも、これを異別に取り扱うのは不当であることをあげています。
理論的には両説とも理由があると思われますが、民訴法七三六条は、判決確定を陳述擬制の発生要件として定めたものと解する判例、通説の見解が妥当と思われます。つまり、意思表示を命じる判決に仮執行の宣言を付することを認めると、上訴審判において仮執行判決が取り消された場合、意思の陳述にもとづく法律効果は覆滅することになり、その結果取引が混乱する等法律関係が錯綜すること、狭義の執行は判決の確定をもって同時に終了するため上訴による執行停止の余地もないこと等を考えると、同条は、意思表示を命じる判決の執行を、最も簡易かつ確実に執行するため当該判決の確定をもって陳迷したものと擬制する一方で、仮執行による仮確定の状態では狭義の執行は認めないものとしたと解するのが妥当と思われます。このように解しても、本問のように登記手続を命じる場合には、債権者は仮登記仮処分または処分禁止の仮処分によってその権利を保全することができます。
以上のように消極説を妥当と解されますが、登記手続を命じる判決に誤って仮執行の宣言が付せられた場合、債権者は当該判決にもとづいて単独で登記申請することができるかどうかが次に問題となります。前掲大決昭和一○年九月二七日は、かかる判決に仮執行宣言を付するのは違法ですが、誤って付されれば、判決に無効ということはないため仮執行宣言は有効であると解していますが登記実務は、このような単独申請は不登法四九条八号により却下すべきとする立場をとっている学説も対立しますが、受理すべきとする説は、過って裁判所が仮執行宣言を付した以上、判決の当然無効ということはないことを理由とします。一方却下すべきとする説は、判決に当然無効はないという原則は、判決がその内容上の効力を欠く場合のあることを否定するものではないこと、判決によって実際に登記することは、いわゆる広義の執行に属しますが、不登法二七条の定める広義の執行要件としては、単独の登記申請には確定判決を要すると解されるところ、登記官の審査権限は法律判断にも及ぶため、仮執行宣言付判決によっては、単独の登記申請は許されないことを理由とします。
非財産権上の権利につき仮執行宣言を付した場合と異なり、本件のような場合には、仮執行宣言を付することは違法であっても、当該判決が取り消されない以上当然にその判決は無効とはいえず、なお狭義の執行力を有すると解すべきです。一方不登法二七条は、登記義務者の登記申請をなすべき意思表示を判決による意思表示で代置することにより、共同申請の原用を貫き、もって登記の真正を担保するものであるため、仮執行宣言付判決も不登法二七条の判決に該当すると解すべきです。したがって、受理すべきとする説が正当と考えられます。

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